かもめ。

かもめ。

高校生、大学生のために書きました。

大学入って困ること。楽しいこと。

いっぱい覚えてね☆

第一部

episode 1

大学の合格を知ったとき、春菜は、両親と故郷にいた。
新聞に掲載されてある自分の名前を見ても、あまり喜ばなかった。
寝ぼけていたのである。
第一志望の大学だったのだが、それは高校二年生のときまでのことだった。

本当の本命の大学は、私学だった。
授業料の高さから、両親にはあきらめるように言われていたのだが、高校三年の秋を迎えたある日、両親がこう言い出した。

「春菜ちゃん、あのね、よく考えたんだけど、落ちて予備校に通わせるよりは、ずっといいかなと思って。上智、受けていいのよ。」

「えー!」

手遅れだった。
願書を郵送してもらった際、本当に行きたい学部は、TOEFLとSATを必要としており、そのデッドラインは、確実にオーバーしていた。

電話口で、春菜はどきどきしていた。いきなり、「もしもし。」ではなく、”Hello.”と言われたからである。

“Hello?”

“Hello. I… I would like to apply for your university. Please send me the application form.”

“Do you want to enter our university in spring?”

“Yes.”

“Oh, it’s too late!”

「え。」

当時を振り返ってみても、自分なりにとてもよく頑張っていたと思う。
受験そのものに悔いはなかった。

しかし。

不運だった。

そんなわけで、春菜は、国立大学に通いながら、仮面浪人を決めることにした。

上京の際、両親に見送られると涙が出そうだったので、空港行きのタクシーに乗っても、振り返らなかった。荷物は、ギターと、そのケースひとつだった。

「もう会えんのやねー。」
空港まで見送りにきてくれたお友達が、泣きそうな顔で抱きしめてくれた。
辛かったが、涙は見せなかった。

新しいアパートに到着した。
近所のコンビニで買ったお弁当と、お茶と、ジュース。

六畳一間、ロフト付きのこのお部屋、家具らしい家具はひとつもなかった。
当然である。

春菜は、ギターケースをテーブル代わりに横に置くと、温めてもらったお弁当を口にした。

夜空には、月が出ていた。
明かりをつけると外から丸見えなので、カーテンのない新居には、明かりはともさなかった。

翌朝。

思ったよりも、板間は痛いことが判明した。

「ベッド買わなくちゃ。」

まだ誰にも住所を教えていないというのに、郵便ポストをチェックした。
坂道を登って、大家さんに言われた通り、バス停へと向かう。
頂上にさしかかったところには、キャベツ畑が拡がっていた。
「横浜? ん? なんか違う。」

ぼそっと言ってみる。

東海道新幹線が、送電線に火花を散らしながら走り抜けていった。

episode 2

バスに揺られて、三ツ沢競技場の前まで来ると、故郷では見たことのないくらいの渋滞に巻き込まれた。
それもそのはず。春菜の故郷では、車が十台縦に並ぶと、渋滞あつかいなのである。

「なんで一車線なんだー。」

浅間町でため息をつく。

横浜駅に着いた頃には、家を出てから30分も経過していた。

すかさず、モアーズに入る。るるぶ横浜で下調べしていたのである。

生活雑貨店のおねえさんと仲良しになった。

こういうのは、春菜の得意分野といってもいい。ベッドカバーとカーテンを同じ柄で統一した。
そして、欠かせないのが観葉植物。
花屋さんを巡ったあげく、一本のパキラと遭遇した。

「これから、よろしくね。」

パキラは、とても嬉しそうに輝いて見えた。

「今日は横浜駅散策だ。」

と思ったのだが。

荷物があるのを忘れていた。

コインロッカーが、ひとつも空いていない。

あきらめて、お昼ごはんを何にしようかと悩む。

ビブレ21に、洋麺屋五右衛門を発見。

春菜は、天才的直感で、カルボナーラを注文した。ほとんど神と言ってもいい。
五右衛門のカルボナーラは、美味しいと評判なのである。

よく味を吟味しながら、何が入っているのかをこまめにチェックする。

「よし。いつか勝負するぞ。」

いつの日か、これを超えるパスタを作ろうと密かにもくろむ。

大学が始まるまでに、あと一週間。

しばらくは、たっぷり羽根を伸ばすつもりなのだ。

相鉄線で上星川駅から再びバスに乗って帰った。

早速、買ってきたカーテンをつけると、その留め金の位置を決めるために、メジャーで寸法を測り、五対八の黄金比率にした。こうすると、カーテンの脚が長く見える。

ベッドカバーは、マットレスが到着するまでの間、おあずけとなった。

「なんて名前にしよう。」

春菜は、パキラを手に考えた。

「パキちゃん? パキラくん?」

パキちゃんに確定した。

「ごはんですよー。いいのかな。水道水で。」

試しに水道水を口にしてみると、見事にカルキの匂いにぶち当たった。

「うえー。こんなに不味いの?」

春菜は、関東ではそれ以来、一滴も水道水を飲まなかった。
あわててコンビニに走る。

まだ蛇口にフィルターをつけることは思いつかず、買ってきた烏龍茶をパキラと一緒に飲んだ。

「よし。明日は電気屋さんだ。」

春菜は、テレビなしで育ってきたといっても過言ではない。
幼い頃は、おばあちゃんの膝の上で時代劇の再放送を見ていた記憶があり、今でも、彼女にとっては、風車の弥七がヒーローである。
そののち、おばあちゃんは難聴になり、テレビをイヤホンで見るようになった。
かくして、テレビは、おばあちゃんの独占私有物と化してしまったのである。

「テレビ、テレビ。」

これからは、好きなときにいくらでもテレビが見られる。

しかし。

いいのか、春菜ちゃん。仮面浪人はどうしたんだ。

episode 3

電話線がやってきた。

春菜は、タウンページをめくると、近所の電気屋さんに電話をかけた。

「あのー。お伺いしたいんですけど。」

「はい、何か?」

「まとめて買ったら、サービスしてくれますか?」

「まとめて? 新入生かなんかかな。」

「はい!」

「そうだねー。モノにもよるけど。とりあえず、来てみるといいよ。」

「カタログとかってありますか?」

「もちろん。」

「それじゃ、後で参ります。」

春菜は、電話を切った。

釜台商店街に差しかかる前に、きつい登り坂がある。
春菜は、スニーカーを履いていかなかったことを後悔していた。

「もしかして、これって、毎日?」

大学の第二食堂経由で経営学部に通うのは、ゴルフ場をまたぐようなものである。
経営学部棟に入るには、家から、徒歩で30分を要した。

「時間距離が横浜駅と同じか。」

ぼそり。

電気屋さんのことを思い浮かべながら、春菜は、ころっと忘れて、経営棟の前まで来ていた。

「おなかすいた。」

受験の時以来の大学構内である。
春菜は、第一食堂と生協を覗いてみることにした。

「納豆、よーし♪」「焼魚、よーし♪」

おばちゃんにスマイルすると、にっこりと微笑んでくれた。
しかしここは煙草臭い。

生協の建物に、もうひとつ学食を発見した。
春菜は、ひと目で気に入った。
シェルシュと書かれてある。

「おばちゃん、今日はごめんね。」

春菜は、ひとりごとを言うと、シェルシュでチキンに走った。

「んー。安さでは一食、おしゃれさではシェルシュかな。」

満腹感を堪能しつつ、階下の本屋さんに寄る。
学部ごとに、テキストが売ってあった。

「予習しなくっちゃ。」

春菜は、英語のテキストだけを買った。あとは、重いから、当日に買って、授業を受けて持って帰ろうと思ったのである。

コーヒー豆とセットで、春菜は支払いを済ませた。

新緑と白い校舎。そして、新入生歓迎の準備をほぼ整えた各サークルのビラ、ポスター。

「何のサークルに入ろっかな。」

そこで、春菜は我に返った。

「そうだ! 電気屋さん行くんだった。」

またてくてく歩いて、ひとしきりの電化製品をNationalの製品で統一した。
とくにNationalのファンというわけではないのだが、おじいちゃんがよく、「松下はいい。」と言っていたのを思い出したのである。

信じる者は救われる。

合わせて、定価の2割引で手に入れることとなった。

電気屋のおじさんが、ないと困るだろうから、と言って、その日のうちに配達してくれるという。
喜んでお願いした。

新生活。

さくらの花の咲き始める前に、春菜は、ぼんやりと横浜の風に吹かれていた。
どこか冷たく、どこか暖かくて、わくわくするような早春のそよ風だった。

episode 4

「バイトしなくちゃ。」

両親から手渡されていた支度金を残しておきながら、春菜はバイト大作戦に励むこととなった。

「勝負は春から始まってるって言うし。」

なんかちがうぞ。春菜ちゃん。

「スクーター、Getだぁ。ぶーん。」

スロットルを空で回してみる。

春菜には、思い描いた未来を、現在形でとにかくやってみる癖があった。

早速、趣味と実益と生活費のために、飲食店でのバイトを探してみることにした。

リクルート刊のバイト情報雑誌。

「うーん。得意なのは洋食なんだけどなぁ。」

あえて中華を攻めてみる。

「あったぁ♪」

そこそこの時給ながら、夏にはバイトにもボーナスが出るという。試算してみたところ、これなら、6月にはスクーターが買えそうなのである。

もちろん、狙いはそこだけではなかった。賄い料理が、本格中華だったのだ。

履歴書に、「志望動機」とある。

春菜は、正直にこう書いた。

「安定した食生活を得たいからです。」

すぐさま、採用された。

春菜in China服。

「春麗(Chun Li)みたい。」

トーキックの練習をしてみた。

「あれ? 作るつもりだったんだけどな。ま、いっか。」

厨房ではなく、ホールを任されることとなった。

ここには、なにげに、有名人が数多くやってくる。

先輩には、こう言われた。

「いいかい、プロの世界だからね。芸能人とかが来ても、ミーハーになっちゃ駄目だよ。」

「はーい♪」

大丈夫なのか。

春菜は、休憩時間に入った瞬間に、思わず叫ぶところだった。いや、実際に、心の中では、狂喜乱舞していた。

「わんだほー♪」

蟹の爪まである。なんでも、冷めてはいるものの、1本、\1,000はする。

春菜は、先輩の目をごまかしつつ、こっそり2本Getした。

「持って帰れないのかな。」

ダメらしい。

中華街のネオンを浴びながら、風水に詳しい先輩に習って、言われた通り、裏門から出て行く。

石川町駅の小さな改札を抜けて、横浜まで出ると、また相鉄線に揺られた。

かくして、春菜のバイト大作戦がはじまった。

こっそり、伊勢佐木長者町の有隣堂でTOEFLの問題集も買ってきた。

「眠いぞー。」

目をごしごしこすりながら、苦手な正誤問題に入った。

「いいじゃん。通じるんだから。」

そんなこと言われても。

正誤問題は、5/8の正答率だった。

「誤答ノート、誤答ノート。」

これが決め手である。英語学院のおにいちゃんから習った、誤答ノートである。

自分の間違えた問題だけを、ノートの左側のページに記載して、その解答、解説を右ページに残しておく。

こうすることで、合っていた問題をスキップしながら解いてゆくことにより、時間効率をもアップさせることができる。

あとは、復習のみ。

春菜は、眠る前に、音読しながら右ページを隠して、解き直しをした。

「よーし。寝るぞー。」

明けの明星が輝く頃には、春菜は、夢の中でアンヌ隊員になっていた。

「行かないで、ダン。」

声に出して目覚める。

はずかしー。

春菜は、またもぞもぞと春眠に耽るのであった。

episode 5

ひととおりの生活必需品が揃ったのは、6月も半ばの頃だった。

春菜は、中華料理店で精一杯働いた。同時に、味覚も肥えてきた。

たまに早く出かけては、中華街で鉄鍋を買ったりした。

「あのー。」

「どうしたの。春菜ちゃん。」

「厨房に入りたいんですけど。」

「それは、ダメ。」

「えー。」

「プロだからね。ちゃんと修行してからでないと。」

「そっかー。残念。」

かくして、中華修行は、自宅で行われることとなったのである。

え? 学校?

春菜は、一般教養課程を、結構楽しんで受けていた。元々、経済学とは無縁である。きっと、これからも。

例の仮面浪人の炎は、立ち消えることなく、静かに春菜の内でくすぶっていた。

そして、春菜は、夏ボーナスを手にする。

「バイク、バイク。」

ついにスクーターをGetした。

キーを回して、きゅるるるとセルを押す。

ぶぃーん。

かかった。

ふらふらしながら、片倉町のRed Baronを出る。

「おねえちゃん、ホントに免許、持ってるの?」

「大丈夫、大丈夫。」

「あ、そっち、一方通行!」

標識出てないじゃないかー。

帰り道、一方通行を逆送しそうになったのだが、無事に家まで帰り着くことができた。

これで、コンビニの食材だけでなく、商店街やスーパーの新鮮食材を手にすることができるようになった。

「月の明かりが~とても綺麗ね♪」

歌いながら走ってみる。

あんまり飛ばしちゃダメだぞ。春菜ちゃん。

てか。原チャって。制限速度30km/hなんだよねー。

誰かが言ってたような気がする。

これは怖い。

何が怖いって、時速30kmで走っていると、車にあおられたり、一瞬で追い抜かれたり。

「かえって怖いよー。」

できるだけ、流れの邪魔にならないように、できるだけ、スムーズに走るように心がけた。

春菜は、家に帰ると、パキちゃんにご報告を済ませ、学校の友人に電話して自慢することにした。

「えー。もうGetしたの?」

「うんうん。でね。後ろ乗せたげよっか?」

「春菜の? やだ。」

「なんでー。」

「だって、1年目って、たしか、2ケツできないんだよ。それに、原チャリじゃなかったっけ?」

「そうそう。ダメなんだっけ?」

「ダメに決まってるでしょ!」

大笑いされた。

「というわけで。明日、学校には原チャで現れるから、楽しみにしておくこと。了解(ラジャ)?」

「了解(ラジャ)。」

春菜はその頃にはすでに、クラスのアイドル的存在となっていた。

春菜が学内の駐輪場できょろきょろしていると、誰かが声をかけてきた。

「どうしたの? 捜し物?」

「んー。どっち行ったらシェルシュ?」

はて。

「はて?」

作者は、忘れてしまったのだ。かついでけ、春菜ちゃん。

しかたなく、友達にメールすることにした。

「OK。すぐに行く。」

「きたきた。」

セルモーターは、新品だけあって、かなり快調である。

「ねー。見て見て!」

「かわいー。」

Hondaのジョルノだった。シルバーメタリックの色調に、赤いバンダナが良く似合う。

「ちょっとレトロでしょ?」

「うんうん。こーゆーのが好みなんだね。」

ふたりは、写メでいろんな角度から撮った。

梅雨が来る前に。春菜は、かくして、念願のスクーターを手に入れたのであった。

行動範囲が、ぐんと拡がる。

横浜は、坂が多い。いつの日か、春菜は、その坂の上の向こうを夢見ていた。

いつか見るかもしれない異国の地が開けてくるその日まで、春菜・横浜編をもうしばらくおつきあいいただく。

episode 6

春菜は、新横浜が好きだ。

東海道新幹線が走っていることと、現チャで10分圏内であることも大きい。
帰省の際には、新幹線でぶらりと帰ろうと思っている。

ためしに春菜は、新横浜プリンスホテルの向かいにある駐車場にJornoを停め、駅内を散策してみることにした。

「サンドイッチ? なんで名物なんだ?」

カツサンドが売ってあった。

パチンコ屋、発見。おにいちゃんの言ってた通りである。

その昔、おにいちゃんも新横浜によく通ったという。
きれいなビリヤード場があったのだ。

受験旅行の際に、新横浜国際ホテルのバーラウンジで夜景を見ながら一杯飲ったらしい。
受験の前日にである。
寝過ごしたらどうするつもりなのか。

春菜は、お酒は、20歳まで我慢することにしていた。

「今帰ったらびっくりするかな。いくらだ?」

思ったよりもかなり高かった。しかしそこは春菜ちゃん。

「バイト代あるもーん。でも、お父さん、出してくれないかな。」

ヒソカに期待する。

しかし、村上春樹氏も書いていた通り、期待するから失望するのだ。

希望を持つのはいい。しかし、期待してはならない。

春菜は、未来を夢見ることはあっても、現実路線で、一切の怖れを抱かないという特性を持っていた。

未来の幸運を知ってしまえば、明日がつまらなくなるし、未来の悲劇を知ってしまえば、それまでずっと怯えていることになるのだ。

現実的に、春菜は、「現在でしかできないこと。」に全力を傾けることにしていた。

そして、最終決断権は、自分以外の誰にも渡さないことにしていた。

そうすれば、あとで振り返ったときに、後悔などする余地は存在しない。

常に、自分自身の人生に、自分で色をつけ、自分で判断してきた結果なのである。

「後悔してもね。いくらぶちぶち言ってみてもね。過去は変わんないんだよ。」

よく友達を励ますときに言った言葉が、不意に口から出てきた。

人混みの中ですれ違った観光客が、2、3人、春菜を振り返って見ていた。

「そうだ!デパ地下あるんだっけ。」

小走りになって、春菜は、新横浜プリンスホテルの別棟、Pepeに入ってみた。

あるわあるわ。

新鮮な食材が、見たこともないくらいの種類でたくさん並んでいた。

「よし。今日はパスタにしよう!」

キャベツの千切りが、1人分(☓2)サイズで置いてあった。赤キャベツまで入っている。

「サラダよーし♪」

ディチェコの0.9mmを探した。カッペリーニ発見。
鷹の爪をゲット。
悩んだ末、ドライパセリを選択。

「にんにく忘れてた。」

野菜コーナーへ向かう。
試食コーナーで、ソーセージに遭遇する。

スマイル、スマイル。

「ももハムありますか?」

もぐもぐさせながら、訊ねてみる。

「いちばん高いやつください。」

ひと通りの材料を揃え終えると、春菜は、向かいの道路まで歩道橋を経由して降りて行った。

横浜アリーナ方面という標識が出ていた。

ひとり悩む。

しかーし。

食材さんの命を優先。

春菜は、速攻で家まで戻った。

買い揃えていたフライパンとパスタ鍋。
Pure Olive Oilを弱火にかけ、にんにくをじっくりと、焦がさないように炒める。

その間に、パスタ鍋に大さじ1程度の塩を入れ、Pure Olive Oilをすこし入れる。
こうすると、沸点が上がるのだ。

パスタは、タイミングが命である。

春菜は、辛いのが比較的得意である。鷹の爪2本を用意した。1本は丸ごと。1本は輪切りにして、にんにくの上から、半量、追加投入した。あとは飾りである。

「ハムくん、投入♪」

表面に、ホワイトペッパーを施し、裏面には、ブラックペッパーを施してある。

いい香りが上がってくる。

ここで、オイルとハムの油がうまく混ざったところで、いったん、パスタのゆで汁をスプーンで入れ、乳化させる。

あとは、ハムに火が通りすぎないように、油まみれになりすぎないように調節しながら、カッペリーニの仕上げを待つ。

表示茹で時間の1分~1分30秒前が目安である。

あとは、水気を軽くざるで切ったのちに、フライパンにパスタを投入する。

パセリを散らして、トングでお皿に盛りつけて。

最後に、輪切り唐辛子と、まるまる一本、色づいた唐辛子を載せるだけである。

「完成~♪ お味は?」

かなりいい感じでピリピリが走った。

今日のは、絶妙な塩加減である。

春菜は、カプサイシン効果で、脳内がふわふわするのを感じながら、ひとりごとを言った。

「今日のパスタは、Pepeって名前にしよう。」

episode 7

おにいちゃんが言ってたような気がする。

成人式の日にである。

「あ~あ。これから、お酒飲むにしても、なんか、当たり前になっちゃうんだよね。」

スリルがなくなるとかなんとか。

春菜はいま、同じことを考えていた。

サークルに入っていなかったため、まだ、アルコールは経験していなかった。

でも、20歳になるまでお酒はやめとこうって思っていた。

「春菜、送り狼は怖いんだぞ-。」

「なんだそれ。」

「がおー。」

「ひえぇっ。」

なんてことになりかねない。

「だからねー。」

「うん。」

「今度、お酒飲みに行こうよ。女の子同士で。」

「だめ。」

「なんでー?」

「家で飲もうよ。安上がりだし。」

「んじゃ、男の子抜きで。」

「了解(ラジャ)。」

「何飲むー?」

「とりあえず、ビールは押さえとかないとね。」

「ビールかぁ。泡しか飲んだことない。」

「それ、飲んでないって。」

「そか。」

春菜は、親友のかもめと一緒に、コンビニまで走ることにした。

片倉町へ向かう。

結構、大きなコンビニエンスストアがある。

お総菜も、そこで作ってくれる。

「うずらソーセージ、Get♪」

「さざえの壺焼き、Get♪ 缶詰あったよー。」

「ポテチどうする?」

「ありでしょ。」

ふたりは、ワインコーナーに行った。

¥1,500くらいで、オーストラリア産の白ワインをチョイスした。

ちゃんぽんはやめとけ、春菜ちゃん。

いきなりだよー。

バイクに乗って、三枚町に降りる途中で、事件は起こった。

赤い棒がふたりを停める。

「はい、ちょっと息吸ってー。」

おまわりさんだった。

どういうわけだか、緊張する。

悪いことしてない、してない。

あ。

未成年だっけか。

どきどきどきどき。

大丈夫、補導はないぞ、さすがに。

「なんで?」

「吸ってね、ふぅーって吐いてね。ここに。」

言われる通りにしてみた。

「お酒飲んでないよね?」

「これからです。」

「あ、おっけー。」

難所を通り抜けた。

なんなんだ、あれ。

ふたりは、アパートに戻った。

「酒盛りターイム!」

冷え冷えにしたバドワイザーのグラスに、霜が降りている。

冷凍庫で凍らせておいたのだ。

「こうやるとね、クリーミーな泡になるんだよ。」

やるな。おにいちゃん。

さすがは、居酒屋☆まさーと。

「(*  ̄▽)o□☆□o(▽ ̄ *) カンパァーイッ♪」

ぐびぐびっとな。

春菜は、脳のヒューズが2本くらい切れたような気がした。

魂が抜けていくような感じ。

「おいしー!」

「うんうん。」

「かもめ?」

「ん?」

「髭ついてる、髭。」

ビールの泡のことらしい。

思っていたよりも、うずらソーセージが美味しいことがわかった。

とんかつソースをかけていただく。

串である。

「これ、おうちで作って揚げたてでもいいね。」

「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん。」

白ワインも開ける。

かなりフルーティーである。

春菜も、かもめも、かなり舞い上がっていた。

「なんかDVDかない? DVD。」

かもめが言った。

「ゴーストでいい?」

「なんでもOK♪」

“Oh, my love, my darling, I’ve hungered for your touch,

A long, lonely time…”

ふたりは、大号泣していた。

泣き上戸なのか?

お酒が入ると、喜怒哀楽の感情の起伏が激しくなる。

普段、押さえている感情が、川の堰を切るように流れてくる。

春菜の場合、今日は、かわいそうの感情だった。

かもめは、何も言わなかった。

「ちょっと、外見ていい?」

ベランダへと向かう。

かもめは、ベランダから、夜空を見ていた。

哀しすぎて、上を向いて歩こうが歌えなかった。

火照った頬に、夜風を浴びながら、かもめは、ガラスの向こうの春菜の涙を見ていた。

episode 8

翌朝、春菜は、かもめと新横浜に繰り出した。

サークルの飲み会の会場探しだった。

かもめは、テニスサークルに入っていた。

はくちょう座の恒星の名前のサークルだった。

春菜は、兄がDangomushiという名のソフトボールサークルでキャッチャーをしていたことを教えた。

「ははは。何それ?」

「『毛』ってチームもあったらしいよ。『サインは正弦』とか。」

「だから、まだましなほう。」

「そーかぁ?」

「おにいちゃんも、経済だったの。」

経済学部。

聞こえはいいのだが、要はお金の勘定である。春菜にも、春菜の兄にも、最も似つかわしくない学部のひとつだった。

春菜の兄は、「あいつにだけは金の計算をさせてはいけない。」という男の典型だった。

血筋なのか?

兄は、高校生の頃から「宵越しの金は持たない。」などと言う男だった。

春菜にも、似たようなところがある。

その商品に、それなりの支払われるべき価値があれば、何のためらいもなく購入してしまうのである。

近いうちに、天体望遠鏡を買おうと思っていた。

「でねでね。」

「うん。」

「今度、天体望遠鏡欲しいの。このへんにはないかなー。」

「望遠鏡って、いくらくらいするの?」

「8万くらい?」

「エエェェΣヽ(*`・ω・)ノ゙ェェエエ工 高いし。」

「ふたつ種類があるんだけどね。屈折望遠鏡と、反射望遠鏡と。」

「うん?」

「屈折は、レンズ2~3枚使うから高くてね。同じ口径だと、反射望遠鏡のほうが安いの。」

「σ◎◎¬ ホホゥ!!」

「で、反射望遠鏡で、12cmくらいのがいいんだけど、赤道儀じゃなくちゃやだから。」

「なんだそれ。赤道儀?」

「うん。北極星に座標を合わせてお星様をロックしたら、ずっとそのお星様だけを追いかけてくれるからね。縦横動かす必要ないんだな。」

「春菜、詳しいー。」

「お星様、好きだもん。」

春菜は、とりわけ、牡牛座のプレアデス星団が好きだった。

あんなに密集して若いお星様がきらきら輝いているところはない。

星は、すばる、彦星、夕筒。

大好きなお星様は、清少納言と全く同じだった。

(・・。)ん? 夕筒?

これは、宵の明星のことなのだ。

金星ね、金星。

「西の空に明けの明星が輝くことはないんだぞ。」春菜が言った。

「ふぇ? なんだいきなり。」

「ウルトラセブンしってる?」

「もー。マニアなんだから。」

「西の空に明けの明星が輝く頃、ひとつの光が宇宙へ飛んで行く。」

「『それが僕なんだよ。』でしょ?」

そうだった。前にも言ったことがあったんだった。

「たたたたー♪ セブーン♪ セブーン♪ おなかすいた。コンビニ行こ。」春菜が言った。

「ダメだよぅ。会場探し、会場探し。」

「そだった。」

ふたりは、駅からほど近くにある居酒屋さんをチェックして回った。道路から、見える限りのところは当たってみようと思っていた。

「居酒屋かぁ。うーん。」

「サラリーマン多そうだもんねー。」

「なんだここ。スピカってあるぞ。」

「どこどこ。」

「高架下の近く。行ってみよ。」

るるぶ横浜が役に立つ。

着いてみた。

それは、どちらかといえばレストランだった。居酒屋ではない。

どこかのお母さんが作ってくれる愛情料理だった。

「ハンバーグ、美味しい~♪」かもめが言った。

「いいね、ここね。」春菜が言った。

「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん。」かもめがうなずいた。

「てか、人数は?」春菜ちゃん。

「・・・・・・。」かもめちゃん。

「あらーん。」春菜ちゃん。

「ここは個人用だね。うちのサークル、すごい数だから。」かもめちゃん。

結局、ふたりは、銀行のある通りの近くの地下にある、おしゃれな学食風のレストランを探し当てた。

「セルフサービスだって。」春菜が言った。

「じゃ、再来週の土曜日に、18:00からでお願いします。」かもめが言った。

予約が取れた。

「サークルかぁ。バイト命だもんなぁ。」家に帰ると、春菜は、独り言を言った。

「パキちゃん、ごはんですよー☆」水をやる。

パキラは、すくすくと育っていた。

葉は、青々としている。外出中は、必ずベランダの外に出しておいたおかげである。

「お星様見えるかなー。」

春菜は、ベランダからいつもの夜空を見ていた。

獅子座の逆さはてなマークが、西の空に沈みはじめていた。

「望遠鏡、望遠鏡。」

かくして、春菜は、望遠鏡大作戦に乗り出すこととなったのである。

しかし。

どうなったんだ、春菜ちゃん。

仮面浪人は。

episode 9

春菜は、天体望遠鏡を買いに行く途中で、PCショップに立ち寄ってみた。

お気に入りのultrabookを発見。

「薄ーい! 赤いし。どうする?」

どうする、って、春菜ちゃん。

望遠鏡はいいのか。

じたばたしている。

んー。

「これください。」

迷わず購入した。

かなりのルンルン状態で、おうちまで走る。

Jornoを停め、リュックを開けて、早速電源ON。

預金残高は、すでに30万円を越えていた。

「でねでね。」

電話してみる。

「かもめ、見に来てー♪」

自慢するのが悪い癖である。

見てもらう。

「おしゃれだねー。ネットとか、さくさくいきそう。」

見てわかるのか。

スペックなんて、気にしていないことが判明。

こういうときに、おにいちゃんに相談すればいいのに。

「見た目、見た目。」春菜ちゃん。

「ultrabookってさぁー? 変身音だといいと思わない?」かもめちゃん。

「ウルトラマンみたく?」「採用♪」春菜ちゃん。

「なんかいいのないかな。」春菜ちゃん。

ふたりは、YouTubeでいいのを見つけた。

きゅいいいいん。

でも、どうやったらいいのかわからない。

「おにいちゃーん。」

春菜は電話してみた。

「どうしたー?」

「起動音って、どう変えるの?」

「すぴこれ。読みなさい。w」おにいちゃん。

「masato styleに書いてるから。セブンで検索してみて。」

「了解(ラジャ)。ありがとー。」春菜ちゃん。

ふたりはいろいろいじりながら、ウルトラセブンの起動音をDLするのに成功した。

きゅいいいいん。

起ち上がると、パワーが湧いてくる。

「これから、授業もノートの時代だね。」かもめちゃん。

「なんだそれ。」春菜ちゃん。

「授業でね、ペン使ってかりかり書くのもいいけど、こやって、かたかた打つのも悪くないかな、って。」

「+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆」

「そうだ。今日、なんか違うの買うとかって言ってなかったっけ?」かもめちゃん。

「(・・。)ん? これ。」春菜ちゃん。

「え。」春菜ちゃん。

「望遠鏡がぁ・・・。」春菜ちゃん。

(o_ _)oコケッ⌒☆

「まさか、望遠鏡買いに行って、ultrabook買ってきたの?」かもめちゃん。

「( ̄  ̄) (_ _)うん」春菜ちゃん。

「欲しくなっちゃったんだもん。」春菜ちゃん。

「チロルじゃないんだから。もぅ、この子は。w」かもめちゃん。

「額ってもんがあるでしょうに。」かもめちゃん。

Σ( ̄ω ̄ノ)ノハッ!!

「ねね、天文台行かない? 天文台。」春菜ちゃん。

+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆

「検索、検索。」

厚木にひとつあることが判明。磯子にも、こども宇宙科学館がある。

しかし、磯子には、「こども」の3文字がついている。

プラネタリウムはあるらしい。

「チロル女子は、こどもでよろしい。」かもめちゃん。

「近いかな? 電車か。」春菜ちゃん。

「それはしらない。」かもめちゃん。

「夜の原チャって怖いよねー。」春菜ちゃん。

「おまわりさん来るしね。」かもめちゃん。

プラネタリウムは、昼でも開いてるぞ、おふたりさん。

天体観測。

Σ( ̄ω ̄ノ)ノハッ!!

「天体写真あるかな!?」春菜ちゃん。

「動画もあるかも。」かもめちゃん。

「Go☆」

「流星群あった。キタ━━━━ヽ(〃▽〃 )ノ━━━━!!!! 」春菜ちゃん。

「なんだそれ。」かめもちゃん。

+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆

ペルセウス座流星群とある。好感度カメラで、魚眼レンズで撮ってある。

美しい流星が、一点透視のように飛び抜けてゆく。

いつか生で見たかったのだった。

「こども博物館、なし。」春菜ちゃん。

「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん」かもめちゃん。

ultrabookは、春菜に一気に視野を広げてくれたのだった。

天体望遠鏡では見えない世界まで、春菜は見てみようと思っていた。

そう。

こっそり、留学の夢を見るようになっていたのである。

episode10

留学。

現在の浪費ペースで実現するとはとても思えなかった。

しかし、学生ビザではなく、就労ビザで行けないものか。

そうすれば、現地採用という形で、学費は自分でまかなえる。

よくありがちな、姉妹校間の交換留学という手は使えない。

学部の単位も、中途半端になってしまうのだった。

「英語圏。アメリカかなぁ。それとも、イギリス?」春菜ちゃん。

「おにいちゃんはどっち行ったの?」かもめちゃん。

「おにいちゃんはね、イギリスのほう。ロンドン。」春菜ちゃん。

「お金なかったんじゃなかったっけ? あ。ごめん。」かもめちゃん。

「(・・*))((*・・)んーん。向こうで働いてたの。」春菜ちゃん。

「それで行こうよ!」

「ダメ。おにいちゃんと違って、在学中なんだもん。」

「あ、そっか。」

「お勉強は?」

「TOEFLやってるよ☆ 620点くらい取れるようになったのだ。^^v」春菜ちゃん。

+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆

「すごいすごい。ノート見せて!」

見せる春菜ちゃん。

食い入るかもめちゃん。

「どうしよっかなー。ハンバーガーの国と、フィッシュアンドチップスの国。」

「ふぇ?」

「行くのは確定なの。あとは、パパの説得。」春菜ちゃん。

「そだねー。娘はひとりだもんね。」かもめちゃん。

「・・・。なんかそれって。w ひとり残ればいいみたいじゃん。」春菜ちゃん。

「ごめん。気悪くした?」かもめちゃん。

「ううん。おかしかったから。」春菜ちゃん。

ふたりは、るるぶロンドンを見ることにした。

何しに行く気だ。

「ダブルデッカー!」

「なんだそれ。うまいのか?」かもめちゃん。

「二階建てバスのことだよぅ。」春菜ちゃん。

「これで衛兵さん見たーい☆」かもめちゃん。

紳士の国に殴りこみか。

「お行儀よくしてくんだぞ。」おにいちゃんが言ってた。

「それから、お洋服は、あんまし凝らないこと。」

海外に出た日本人は、一目でわかるそうだ。

こいつは金になる。とかって。

「アイロンは、中途半端でよろしい。」おにいちゃん。

Σ( ̄  ̄ノ)ノ エェ!?

これは半分、言い訳なんだと思う。

なんでも、カジノ帰りの背広のポケットには、£50紙幣が20枚くらい入ってたという。

「おかしいなぁ。」春菜ちゃん。

「なにが?」かもめちゃん。

「おにいちゃん、安月給だったはずなんだけどな。」春菜ちゃん。

「運が味方してくれたんだよ。」かもめちゃん。

人生は、冒険の連続である。

次の選択肢をどっちに曲がるかで、景色は全くがらりと変わる。

春菜も、かもめも、ふたりとも、今、上り坂にさしかかる時期であった。

シェルシュの窓からわずかに見える海の切れ端に、春菜は手を伸ばそうとしていた。

「ところで、バイトどうなってる?」かもめちゃん。

「中華ー♪」春菜ちゃん。

「しってるってば。」かもめちゃん。

「20万弱は持ってるぞ☆」春菜ちゃん。

「工工工工エエエエエエエエェェェェェェΣ(・ω・ノ)ノェェエエエエ工なんで?」

「ボーナスが出るのだ。^^v」春菜ちゃん。

「そっか。それでJornoをgetしたんだもんね。」かもめちゃん。

「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん。」春菜ちゃん。「そうだ!」

「(・・。)ん?」

「今度、食べに来ない? 中華街。」春菜ちゃん。

+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆

「カニ、ごまかしたげるから。」春菜ちゃん。

こら。w

「冷めててよければ。」春菜ちゃん。

「まかないかよっ。w」かもめちゃん。「行くー☆ 予約、お願いね。」

「いつにする? いついつ?」春菜ちゃん。

「非番でないとダメなんでしょ?」かもめちゃん。

「そっか。」春菜ちゃん。

「んとねー。土日は混んでるから、火曜日の夜!」

「(( ̄^ ̄ )ゞラジャ。」

かくして、春菜のバイト訪問が確定した。

春菜は、非番の日だというのに、チャイナ服で現れるつもりでいた。

かもめの頭の中を、北京ダックが駆け抜けていった。

episode11

かもめは、バイトで、横浜スタジアムでビールを売っていた。

背中にジョッキをかついでる、あれである。

なかなか評判はよかった。

アメリカみたいに、ポップコーンを投げることはなかったものの、球場の持つ一体感が好きだった。

7回裏の攻撃がはじまる前のキーボードのサウンドも大好きだった。

これは、横浜ならではである。

今日は非番。

球場入りする前に、春菜はかもめと一悶着していた。

かもめは、ベイスターズファンである。

春菜はといえば、おにいちゃんのせいで、生粋のカープファンだった。

「3塁側-!」春菜ちゃん。

「何言ってんの!もう。」かもめちゃん。「今日は私がゲストなんだから。」

「ひえぇぇ。まるで踏み絵だよぅ。」春菜ちゃん。

春菜は、青一色のスタンドに跳ねる、まな板の上の鯉だった。

「1回の表。カープの攻撃は。1番、センター。」

どっこどっこどっこどっこ。(メガホン。)

周りの観客の目が一斉に集まる。

「こらー! ここ、1塁側!」かもめちゃん。

「ふえーん。」春菜ちゃん。「身体が動くんだよー。」

スクワットをこらえるのに必死である。

「ねーねー。」春菜ちゃん。

「何?」かもめちゃん。

「バックネット裏に移ろ。お金出すから。」春菜ちゃん。

「やだ。」かもめちゃん。「すみませーん。ビールふたつ。」

おねえちゃんがやってくる。

「はい、どーぞ。」おねえちゃん。

「どうもー♪」かもめちゃん。

春菜は、応援歌に合わせて、指をメガホン代わりに使っていた。

カキーン♪

「+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆」 春菜ちゃん、

じとーっとした眼で見られる。

三三七拍子が終わったところで、ふと我に返る。

「Σ( ̄ω ̄ノ)ノハッ!!」

「座りなさい。春菜。」かもめちゃん。

「ふえーん。」

1回表は、ノーアウトから2塁打は出たものの、カープの攻撃は0に終わった。

「シウマイ食べたい。」春菜ちゃん。

かもめ、ダッシュ。

「おっ。わかってきたねぇ。」隣のおじちゃんが言う。

「なんだこれ。崎陽軒?」

「シウマイの会社ね。ほら、あそこ。」かもめちゃん。

ちゃんと球場の看板に書いてあった。

「なんて読むの?」春菜ちゃん。

「あんた、横浜来て何年経つと思ってんのよー!」

「いちねんめ。」

「きようけんよ、きようけん。w」

「この子、異教徒なんだけど、いい子だから。」かもめちゃん。

「異教徒?」おじちゃん。

「3塁側の子なの。」

おじちゃんの眼が険しくなった。

試合は、2-0で、横浜ベイスターズが勝利した。

かもめ、ごきげん。

春菜、半べそ。

どんなに仲良しこよしでも、違うチームのファンで観戦に行ってはならない。

時として、それは遺恨を残すことになりかねない。

「中華ー♪」ゲスト。

「中華ぁ。」春菜。

ふたりは、中華まんを頬張りながら、ココナッツにストローを差して飲んでいた。

「綺麗な月だね☆」かもめちゃん。

「揺らいでる。」春菜ちゃん。

完封はないだろぉ。

「そだ。月餅ってしってる?」春菜ちゃん。

「知らないでか。」かもめちゃん。

「うちにもね、月餅あるの。お土産、頼んどこっか?」春菜ちゃん。

「てか。あんたね、中華街でバイトしてるんでしょ?」かもめちゃん。

「うん。」

「なんで崎陽軒読めないのよ。^^;」

「しらないんだもん。」春菜ちゃん。

意外と傷つきやすいのが春菜であった。

とにもかくにも、春菜は、オーダーストップぎりぎりでかもめとバイト先に入った。

+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆

カニのはさみ。

青椒肉絲。(チンジャオロースー)

油淋鶏。(ユーリンヂー)

八宝菜。(パーポーゼイ)

並んでごきげん。

あるわ、あるわ。

「老酒ください。あと、青島ビールも。」春菜ちゃん。

息を吹き返した。

「それから、お土産で、月餅いくつか。」春菜ちゃん。

「了解。(ラジャ。)」バイト仲間。

かもめは、至福の表情を浮かべていた。

春菜は、青椒肉絲のねぎ油にしびれていた。

「こんなに美味しかったんだねー。ぬくいと。」春菜ちゃん。

「(・・。)ん?」

「まかない、冷めてるから。」春菜ちゃん。

「そっかー。」

かもめはただ夢中だった。

お会計、9,000-強。

「ひえぇぇぇ。」春菜ちゃん。

「足りる?それ。」かもめちゃん。「見せて。」

「うん。」

「割り勘で行こ。」かもめちゃん。

「いーの? ゲストだよ。」春菜ちゃん。

「いーの。おねえたまに任せておきなさい。」かもめちゃん。

結局、ゲストもホステスも関係なかった。

関内の長い駅を歩いている間、ふたりの仲は回復していた。

「やっぱ、あれね。」かもめちゃん。

「(・・。)ん?」春菜ちゃん。

「横浜って。」かもめちゃん。

「これだよね。」かもめちゃん。

「(・_・o)ン? (o・_・)ン? (o・_・o)ン?」春菜ちゃん。

いつか、チャーミングセールに行く約束をして、ふたりは別れた。

「チャーミングセールかぁ。」

「しらないことだらけだよー。」春菜ちゃん。

かくして、チャイナ・ムーンの夜は更けていった。

春菜は、完投した敗戦投手に、心からの讃辞を贈っていた。

episode12

春菜は、そのとき、学食にいた。

「面子足りないんだよなー。あとひとり。」

ぴぴん♪

「麻雀?」

「うん。てか、春菜ちゃん、できる?」

「強いぞなもし。」

「エエェェΣヽ(*`・ω・)ノ゙ェェエエ工 きてきて!」

クラスの男子が舞い上がっていた。

(ΦωΦ)ふふふ

「昼ならOK。」

「よーし! んじゃ、雀荘行こう!」

風速0.5とある。

口元がゆるむ春菜。

「超ひさしぶり☆」

嘘である。

インターネット麻雀では、R1758を持っている春菜。

学生に負ける腕ではない。

「ローン!^^」春菜ちゃん。

「Σ(・ω・|||)え!」

「リーチ、三色、タンヤオ、ドラ2。ろくさんさんぜん。」

「ひえぇぇぇ。」

ひそかにパパに感謝する。

春菜は、物心ついたときから、パパのおひざの上で牌の切り方を研究していた。

「なんでこっち切るの?」

「それはね、こっちがこう入ったら、3面待ちになるからだよ。」

「ふーん。」

おそるべし、春菜。w

春菜は、突然、めだかの兄妹を歌い始めた。

♪めだかーの兄妹が、川の中ー♪

♪大きくなったーら 何になる?♪

「げげ。春菜ちゃん、口元にやついてるよ。」

「リーチ♪」

「Σ( ̄  ̄ノ)ノ エェ!?」

焦る残り3人。

「何待ってんだよー。。。えいっ。」東を切る。

「通ーし。」春菜ちゃん。

「あたるとでかい?」四萬。

「そこそこ。」春菜ちゃん。

「中。」中。

「中キタ━━━━ヽ(〃▽〃 )ノ━━━━!!!! ローン♪」春菜ちゃん。

「(/||| ̄▽)/ゲッ!!!」

「ずらり。中単騎待ちだったのだ。」

「リーチ一発、二杯口(リャンペーコー)。よんせん、にせん。一本場だから、ひゃくてんずつね☆」

「この歌、2番しってる?」春菜ちゃん。

「なんだっけ? 鯨?」

「ぴしっ。一番だろーが。雀だよ、雀。」

「チュンチュン♪」春菜ちゃん。

「わー。。。」

「あ。裏ドラわすれてた。」春菜ちゃん。

ぎくっ。

「2コのってる。( ̄ω ̄;( ̄ω ̄|( ̄ω ̄||( ̄ω||||」

「ていせい。跳ねるから、ろくせんさんぜん。^^ 超ラッキー♪」春菜ちゃん。

怖すぎる。w

結局、ほとんど振り込むことのないまま、春菜はでっかい手を狙っていた。

字牌だけで8枚もある。

どきどきどきどき。

7巡目までには、10枚になっていた。

「北。」

「それポン。」春菜ちゃん。

「ポン? 春菜ちゃん、親でしょ?」

「いーの?」

「くふくふ。」

11枚。

アドレナリンがぁ。。。

「おにいちゃんみたいに盲牌できればいいのにな。」

「それは時間かかるよねー。」

指先、つるり。

白キタ━━━━ヽ(〃▽〃 )ノ━━━━!!!!

どっきどっきどっきどっき。

「うちのおにいちゃん、張ったらね、必ずお茶か煙草吸うの。」春菜ちゃん。

対面が、自分の役に夢中で、捨て牌のケアをしていないのがわかる。

目がきらり☆

いかんっ。張られたか?

_( -“-)_セーフ!

「そーんなとーき♪ ウルトラマンが欲しい♪」

指先、つるり。

「キタ━━━━ヽ(〃▽〃 )ノ━━━━!!!!  キタ━━━━ヽ(〃▽〃 )ノ━━━━!!!!  キタ━━━━ヽ(〃▽〃 )ノ━━━━!!!! 」

狂喜乱舞する春菜。

(・・。)ん?

親だったっけ?

「ツモ。」

「工工工工エエエエエエエエェェェェェェΣ(・ω・ノ)ノェェエエエエ工」

ぱた、ぱた、ぱた、ぱた。

手が震えている春菜。

「これね、すごいんだよ。」

「東東北北北白白中中中發發發」で、これ。「白」

字一色大三元。W役満である。

「ごめん、俺、帰る。」

「田舎の母親が。」

「まてー!」春菜ちゃん。

春菜は、一生分の運気が押し寄せてくるのを感じていた。

でも。

授業料高いのよ、これ。

episode13

春菜の兄の話である。

「春菜ちゃん、むかしね。」おにいちゃん。

「(・・。)ん?」春菜ちゃん。

「クリスマス前にバイトしてたんだけど。」

「うん。」

「雑草いじり。仕事残しちゃってさ。」

「うん。w」

「クリスマスイブにひとりで雑草抜いてたの。」おにいちゃん。

「(* ̄m ̄) ププッ」春菜ちゃん。

「そしたらね。通りを歩いてる、おそらく同じ大学の連中がね。」

「うん。」春菜ちゃん。

「『おい、見ろよ! あいつも一緒だぜ。』とかって。」

「あはははは。w」

「指さされた。( ノΩ`)シクシク…」おにいちゃん。

酒屋の近くのアパートの庭であった。

「だから、春菜ちゃんは。」

「うん。」

「イブに寂しい思いしなくていいように、しっかり彼氏Getしときなさい。」

「はーい。^^ サンキュ。おにいちゃん。」

春菜は電話を切った。

Getしようにも、いないものはいない。

しかし、言われてみると、なんとなく自分は寂しいのかもしれないなんて気がしてきた。

「かもめー?」春菜ちゃん。

「(・・。)ん?」かもめちゃん。

「彼氏できた? 彼氏?」春菜ちゃん。

「(//∇//(//∇//(//∇//) テレテレ」かもめちゃん。

「おおっ?」春菜ちゃん。

「憧れの人はいるんだな。」かもめちゃん。

「アターック! 力貸そうか。」春菜ちゃん。

「いい。」かもめちゃん。

「なんでー?」春菜ちゃん。

「こういうのは自力だし。それに、あんた、自分のかわいさわかってないでしょ?」かもめちゃん。

「はじめて言われた。」春菜ちゃん。「ω//)ゝテレテレテレ」

「なにげに、引く手あまたなのよ。」かもめちゃん。

「+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆」春菜ちゃん。「でも、いい。」

「Σ( ̄  ̄ノ)ノ エェ!? なんで?」かもめちゃん。

「だって留学したら、遠距離になっちゃうんだもん。」春菜ちゃん。

「そだねぇ。」かもめちゃん。

「ドラマみたいにさ。空港まで追っかけてこられてもねぇ。」春菜ちゃん。

「そこまで考えるか。^^;」かもめちゃん。

「なんか進展あったら教えて☆」春菜ちゃん。

「もっちろーん♪」かもめちゃん。

「どんな人? どんな人?」春菜ちゃん。

「(* ̄  ̄)b ヒ・ミ・ツ。かぶってもやだし。」かもめちゃん。

「かぶる?」春菜ちゃん。

「キミが惚れたら大変なことになっちゃうでしょ。」かもめちゃん。

「なるほど。」春菜ちゃん。「んで、イブ、どうするの?」

クリスマスかぁ。

クリスマスってと、あれだよ。

雪が降ってて、イルミネーションが綺麗で。

コートのポケットの中でこっそり手をつなぎあったりして。

もう大学生だし。

。・:*:・( ̄∀ ̄ )。・:*:・ポワァァァン・・・

「かもめ?」春菜ちゃん。

No Answer。

「あら? 起きてるー?」春菜ちゃん。

「Σ( ̄ω ̄ノ)ノハッ!! いけません。子供が、こんな夜中に。」かもめちゃん。

「どうしたー?w」春菜ちゃん。

「ごめん。妄想入ってた。」かもめちゃん。

「そろそろ寝るね。」春菜ちゃん。

「うん。おやすみー。」かもめちゃん。

ガチャッ。

師走の風が、南国育ちの春菜の首筋を吹き抜けていく頃。

春菜は寒さで、ほとんど死にそうになっていた。

「うーん。うーん。うーん。」春菜ちゃん。

38.4℃。

見事に風邪を引いてしまった。

しかも、ひとりぼっちである。

「おかーさーん。お茶ー。」春菜ちゃん。

うわごとを言ってみる。

「あれ? そっかー。」春菜ちゃん。

薬すらない。

どうする? 春菜ちゃん。

「かもめはバイトか彼氏だし。」春菜ちゃん。

「うーん。うーん。うーん。」春菜ちゃん。

翌朝、熱は引くどころか、むしろ上昇していた。

39.2℃。

「これじゃ薬局行けないよー。。。コホコホ。」春菜ちゃん。

ピンポーン♪

「留守でーす。コホコホ。」春菜ちゃん。

「はーい。」春菜ちゃん。

ふらふらしながら、玄関のスコープを見る。

かもめだった。

「あら。」かもめちゃん。「いるじゃん。」

「かぼべー。風邪うつるから来ちゃだべー。」春菜ちゃん。

「熱は?」かもめちゃん。

「死ぬー。」春菜ちゃん。

かもめは、薬局に行って、熱さましと喉がよくなる透明カプセル、あったかいお茶を買ってきた。

「よく寝てなくちゃだめだよー。」かもめちゃん。

「うん。ありがと。」春菜ちゃん。

冬眠するクマのように、春菜はお布団に丸まって眠っていた。

「おにーちゃーん。タップしてー。。。」春菜ちゃん。

「自分でやりなさい。w」おにいちゃん。

「いじわるー。。。」春菜ちゃん。

春菜は悪夢にうなされていた。

かもめは、メールで約束にキャンセルを入れていた。

ひとりぼっちで都会で生活すると、こんなこともあるのだ。

保険証と、いざというときのお薬だけは、ちゃんと持ってなくちゃね。

(・・。)ん? 春菜ちゃん?

そうねぇ。

大丈夫・・・? かい。

episode14

薬の効果は、思ったほど早かった。

37℃台まで回復。

春菜は、かもめが泊まり込んでくれたことを心から感謝していた。

「お雑炊、いる?」かもめちゃん。

「いるー☆」春菜ちゃん。

かもめは、炊飯器の中のごはんを一度ざるに揚げてぬめりを落とし、小鍋にミネラルウォーターを張った。

そして、コトコト。

「具はー?」春菜ちゃん。

「じっと待つのことよ。いいから寝てなさい。^^;」かもめちゃん。

「はーい。」春菜ちゃん。

昆布と鶏がらスープがだしである。

中身は・・・。

卵、おかゆ、小ねぎ、そして、刻みのり少々。

ぽん酢をちびっと垂らして、できあがり。

「よくふーふーして食べるのよ。」かもめちゃん。

「はーい。」春菜ちゃん。

+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆

絶品であった。

これなら、弱った身体にもすーっとしみこむ。

「ね、かもめ。」春菜ちゃん。

「(・・。)ん?」かもめちゃん。

「絶対、いいお母さんになると思うよ。」春菜ちゃん。

「いえーい♪^^」かもめちゃん。

「ふっ、かーつ♪」春菜ちゃん。

春菜は、玄関まで歩いて行こうとして、壁に頭をぶつけた。

「いたた。あれ?」春菜ちゃん。

「まっすぐ歩いてないってば。w」かもめちゃん。「今日までおとなしく寝てなさい。」

「うにゅー。」春菜ちゃん。「バイト。」

「ダメに決まってるでしょ。うつしたらどうすんのよ。」かもめちゃん。

「あ。そーね。」春菜ちゃん。

病み上がりで、なぜかテンションの上がっている春菜。

脳くんは大丈夫か。

「あんた、高熱でラリってない?」かもめちゃん。

「そかも。いたた。」春菜ちゃん。

とにもかくにも、春菜の病は峠を越えた。

かもめは、こんなの当然よ、という風に、何も言わずに看病をしてくれたのだった。

ベランダの先に、小鳥が遊びにきていた。

二羽の彼らは、ひとしきりさえずった後で、同じ方向に向けて飛び立っていった。

風は、まだ、耳がちぎれるくらいに寒かった。

春菜は、よく思い出すことがある。

あの晩、ひとりで死んでいてもおかしくはなかったのだ。

エアメールを出す際に、必ず速達で出す宛先があった。

かもめの住所だった。

“By express to Japan, please.” 春菜ちゃん。

「(・・。)ん?」かもめちゃん。

「こーゆーのか。」春菜ちゃん。「最後に国名書くんだって。しってた?」

「しらなんだ。」かもめちゃん。

「国際電話って高いよね。」春菜ちゃん。

「| ̄_ ̄||―_―|| ̄_ ̄||―_―|ウンウン」かもめちゃん。

「Skypeしてみてもいいかも。」春菜ちゃん。

「なにそれ。Skype?」かもめちゃん。

「この前まではメッセがあったけど。なくなっちゃったんだよー。」春菜ちゃん。

「でも。」春菜ちゃん。

「エアメールもいいよね。」春菜ちゃん。

おにいちゃんが、国際電話をかけてきた晩のことを思い出す。

「これね、いつ切れるかわかんないんだけど。」おにいちゃん。

「元気ー?」春菜ちゃん。

「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん」おにいちゃん。

「ごはんおいしい?」春菜ちゃん。

「お米の国がよかったよー。」おにいちゃん。

「まだ一か月経ってないじゃん。」春菜ちゃん。

「あ。そうそう。こんどね。」おにいちゃん。

「うん?」

「手紙書くから。」

「(・・。)ん?」

「もう£5くらい使っちゃった。w」おにいちゃん。

「ちびっと時差あるよね。」春菜ちゃん。

ワンテンポ遅れて会話が伝わるのだ。

「エアメール♪」春案ちゃん。

「いいねー。」春菜ちゃん。

「英語、大丈夫?」春菜ちゃん。

「思ったより伝わらない。w てか、英語って、米語とぜんぜん違うよー。」おにいちゃん。

「アとエの中間の音ないからね、ここ。」おにいちゃん。

「何言ってるかわかんないこともしばしば。」おにいちゃん。

「うける。^^ あんなに成績良かったのに?」春菜ちゃん。

「うん。^^; ほとんど直感で生きてるよ。」おにいちゃん。

「あーやばい。」おにいちゃん。

「あと4秒くらい。切れるよー。父さんと母さんに、」

ガチャッ。

ツーツーツーツー。

「ありゃ。切れちゃったよ。」春菜ちゃん。

そうなのかー。

ほうほう。

よろしくね、よろしく。

性格上、かけなおしてくることはないことを確信している春菜。

貧乏だって言ってたし。

でも、人生、攻めてかなくちゃ面白くないよね☆

よーし。いっちょ。

いってみよー♪

春菜は、郵便局まで、TOEFLの受験料を振込みに行った。

試験は、8週間後に迫っていた。

どきどき。

目指せ! ロンドン。

てか。

どうしようね、どこの学校にしようね。

episode15

「春菜ー?」かもめちゃん。

「(・・。)ん?」春菜ちゃん。

「TOEFLとTOEICって、どう違うのかしってる?」

「じゃーん。TOEFLは、”Test Of English as a Foreign Language”の略で、英語を母国語とする人以外の人たちのための英語のテストのこと。^^」

「+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆ じゃ、TOEICは?」

「最後がね、”International Communications”だったと思う。ちがったかな?」

「んーと。春菜が受けたの、TOEFLのほうだよね?」

「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん もうすぐ650くらい行くのだ☆」

「すごーい! のか? それ。」

「(o_ _)oコケッ⌒☆ おにいちゃんが最初に受けたのより140点くらい上なんだぞ。」

「+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆ そりゃすごいわ。」

「TOEICの点数はね、TOEFLの点数を0.7で割ったくらいで出せるぞなもし。^^」

「ということは・・・。650/0.7だから。んーと? 春菜、計算して。」

「930点くらいだね。」

「ひぇぇぇぇ。」

「好きこそもののなんとやら。^^」

「てか。あんた、最近、おにいちゃんのしゃべり方に似てきてない?w」

「兄妹だもん。^^」

春菜は、ロンドンの大学についていろいろ調べてみた。

名門くらいしかしらない。

「語学留学だけはやめとき。」おにいちゃん。「行ったその日にがっかりするよ。」

留学先の単科大学は、なんとお店の二階にあって、過去進行形についての授業だったんだとか。

かわいそうなおにいちゃん。

あんなにお勉強したがってたのにね。

でも、まぁ、働けるからいっか。

春菜は、学生として乗り込むつもりでいた。

そして、まだお国を決めかねていたのである。

「がーん。」春菜ちゃん。「イギリス、TOEFLいらない・・・。」

( ̄ω ̄;( ̄ω ̄|( ̄ω ̄||( ̄ω||||ガガガーン!!

こんなに頑張ったのに-!

さて。

目指すは、米国か。w

「でも、衛兵さん、見たーい。」

「二階建てバスも乗りたーい。( ノΩ`)シクシク…」

どうすんだ、春菜ちゃん。w

即決は得意なくせに、割と優柔不断な春菜なのであった。

「こんなとーき♪」

預金通帳を持ってくる。ごそごそ。

「大丈夫。80万円くらいあるぞ。^^」

(・・。)ん? 何が?

「旅費ー♪ そうだ。イギリスには観光に行けばいいんだ。^^」

早速、春菜はかもめに相談してみることにした。

「がちゃっ。かもめちゃんです。」かもめちゃん。

「春菜。今大丈夫?」春菜ちゃん。

「うんうん。」かもめちゃん。

「今度ね。一緒にロンドン行かない? ロンドン。」

「キタ━━━━ヽ(〃▽〃 )ノ━━━━!!!! いついつ?」かもめちゃん。

「一年生終わってから。休み取れるかな?」

「だって、バイトは球場だよ?」

「あ。そっか。^^」

「万難を排して、行く!」かもめちゃん。

「おっけー☆ 今度チケット取りに行こうね♪」

「イエーイ。」

かもめは、Jornoに乗って、近所の有隣堂まで走った。

るるぶロンドンをGetする。

楽しみ、楽しみ。^^

んー。なんか忘れてるような気がするんだよな。

なんだろ? ま、いっか。

パスポートを申請していない春菜ちゃん。

写真、撮りにいかなくちゃね。^^

うーん?

episode16

「春菜、パスポート、持った?」かもめちゃん。

「ばっちり☆」春菜ちゃん。

「あとは搭乗券だねー。」ふたり。

春菜とかもめは、すでに成田空港まで来ていた。

アナウンスがサラウンドで聞こえてくる。

各航空会社の案内口には、地上職のおねえさんたちが、時計を気にしながらにこやかに応対していた。

「そっか。時間との勝負だもんね。あれ。春菜?」かもめちゃん。

どっか行ったな。w

春菜は、成田の案内板を探しに行ってきたのだった。

「ねー。春菜ぁ。」かもめちゃん。「海外でこれやったら、超さみしくて超危険だよ。」

「ちゃんとどっか行くときは伝えなさい。」

「了解。(ラジャ)ごめんね。」春菜ちゃん。

( ̄▽ ̄;A アセアセ

「右ウイングってあったらおもしろいのにね。」春菜ちゃん。

「北ウイングじゃなくって?」かもめちゃん。

「漢字にすればわかる。w」

過激派なのか。

幸いにして、右ウイングのおじさんたちはいなさそうであった。

搭乗手続を済ませ、ゲートに入る。

「あれ? かもめ?」春菜ちゃん。

「つっかかったー。」かもめちゃん。

ぴーぴーぴーぴー。

もー。w

どっちもどっちであった。

しょうがないよね。初めてだもんね。

でも焦るふたり。

大丈夫。あと40分くらいあるから。

空港に入ると、おにいちゃんは、煙草の禁断症状に苦しんだそうな。

ふと手が煙草に行く。

こっからは禁煙ゾーンなのだ。

ロンドン直行便で12時間くらい昔はかかった。

「け、煙をくれ・・・。」

ふたりはノンスモーカーだった。

ルフトハンザ機内に入る。

ルフトハンザは、フランクフルト直行便のドイツの航空会社である。

これは、おにいちゃんのおすすめであった。

びっくりしたことに、搭乗アナウンスで、窓際の席から呼ばれる。

そして真ん中。最後に通路側。

こうすることで、機内での渋滞よっこらしょがないのである。

「かしこーい。」ふたり。

お行儀いい国だもんね、ドイツ。

「やっぱ、ハンバーグかな? 機内食。」かもめちゃん。

「ワクo( ̄▽ ̄o)(o ̄▽ ̄)oワク」春菜ちゃん。

んー。w

離陸を迎える。

春菜は、飛行機は上京の際に経験がある。

かもめは、ジェットコースターよりも速い乗り物に乗ったことはなかった。

青い顔を見られてはならない。w

心の中で冷や汗をかいているのであった。

ジェット音が加速して、首が座席に吸い込まれてゆく。

角度が仰角になったところで、車輪の振動が止まった。

「キタ━━━━ヽ(〃▽〃 )ノ━━━━!!!! 」はしゃぐ春菜ちゃん。

「飛んだー!」ほっとする、かもめちゃん。

「あとで窓側、代わって。^^」春菜ちゃん。

「えー。」かもめちゃん。

「雲が真っ白だよー。」春菜ちゃん。

とにもかくにも、ルフトハンザ機は、定刻通りにフランクフルトへ向けて飛んだ。

あとはトランジットでロンドンを目指せばよいのだ。

(・・。)ん?

こうするとね、直行便よりも安いのよ。

ホントは。

海外からチケット送ってもらうのが一番だったりもするんだけど。

ま、いいとして。

おっと作者も忘れてた。

トラベラーズチェック持たせたっけ?^^;

( ̄▽ ̄;A アセアセ

「もー。」ふたり。

episode17

フランクフルト空港に到着した。

ふたりが真っ先に向かったのは、免税店だった。

エルメスのスカーフ発見。

「日本では10万円くらいするよねー。」かもめちゃん。

「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん」春菜ちゃん。

「えっと? これを計算すると?」かもめちゃん。

「2万5千円!」ふたり。

「キタ━━━━ヽ(〃▽〃 )ノ━━━━!!!! 」

“We want this one!” ふたり。

“How many?”

「ママの分合わせてふたつ。」春菜ちゃん。

「あたしひとつ。」かもめちゃん。

“Three, three!” ふたり。

なぜかカタコトになるふたり。

実践会話は慣れていないのだ。^^;

ちーん。

計7万5千円。

ひとつをスーツケースに入れて、洗面台の前で気取ってみる。

しかし綺麗な空港である。

「スッチー結びって、どうやるんだろう?」春菜ちゃん。

「今度訊いてみよっか。」かもめちゃん。

「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん」春菜ちゃん。

長い通路を経て、トランジットへ向かう。

ぎくっ。

次の便、何時だっけ?

てか。

現地時間でいま何時?

「大丈夫だよ。2時間ゆとりあるから。」かもめちゃん。

ほっ。

慣れない海外では、「安全」「安心」は禁物である。

おにいちゃんですら、かばんは必ず両足に挟んでいた。

ふたりは、フランクフルト空港の長い通路を抜けて、無事に次の便の機内にたどり着いた。

「もっかい寝るー。」春菜ちゃん。

「寝るー。」かもめちゃん。

機内のコーヒーに首を振って、ふたりは目指すロンドンヒースロー空港に到着した。

税関、さらっとパス。^^

“Sight seeing!” ふたり。

事実、事実。

おにいちゃんはここで40分も足止めを喰らった。^^;

中途半端に米国英語ができて、2年間のvisaを持っていたため、怪しまれたのである。

春菜は、荷物を探す。

コンベアーから出てきた瞬間にわかる。

かなり派手目なのである。

そして、そこにペンギンのマスコット。^^

NRTのタグが目に入る。

(・・。)ん?

成田ね、成田。

帰りにはLHRになっていることだろう。

背中と腰が痛かったが、そんなことは言ってられないふたり。

おにいちゃんのフラットを目指す。

UNDERGROUNDと書かれてある。

あれ? Tubeじゃないの?

Tubeなんだけど、地下鉄の駅は、UNDERGROUNDって書いてるのよ。

Piccadilly Lineに乗って、ガタンゴトン。

そして到達したのは、Acton Town。

おにいちゃんとの待ち合わせ場所なのだ。

春菜は、おにいちゃんと顔を合わせるのは実に2年振りのことだった。

ふたりは、駅を降りて、きょろきょろしてみる。

「いないぞー。」春菜ちゃん。

「えー。」かもめちゃん。

「てか、今何時?」春菜ちゃん。

「あそこに時計ある。」かもめちゃん。

「あと30分あるのか。」春菜ちゃん。

おいしいカフェが近くにあるという。

駅降りて、左。

空港チケット屋さんの手前。

オープンカフェがあるからね。

「いたー!!!!」春菜ちゃん。

再会を喜ぶふたり。

「はじめまして♪」かもめちゃん。

「親友のかもめ。」春菜ちゃん。

「ようこそ。^^」おにいちゃん。

「てか、ここ、待ち合わせ場所と違ーう!」春菜ちゃん。

「| ̄_ ̄||―_―|| ̄_ ̄||―_―|ウンウン」おにいちゃん。

エスプレッソカップを口元に運ぶおにいちゃん。

「聞いてないし。」春菜ちゃん。

「ちょっと待っててね。」おにいちゃん。

「(・・。)ん?」

運ばれてきたのは、チョコパンとクロワッサン、そしてパスタとサンドイッチだった。

+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆

なんかしゃべってる。

お店のおねえちゃんと目が合った。スマイルしてもらう。

思わずにっこりと微笑むふたりだった。

それにしても。

おなかすいたね。

episode18

「食べたー?」おにいちゃん。

「うん。まだ入るけど。」春菜ちゃん。

「これから軍資金稼ぎにいくぞ。」おにいちゃん。

「軍資金?」ふたり。

3人は、店のおねえちゃんに手を振って、駅の白タク乗り場へ向かった。

“How much for Green Park?” おにいちゃん。

“About £10, sir.” 運転手さん。

“OK. Take us to The Palm Beach (Casino Club,) please.” おにいちゃん。

「公園にビーチがあるの?」春菜ちゃん。

「ノンノン。」おにいちゃん。「着けばわかる。」

「ぴぴん☆」かもめちゃん。

「あれ見てごらん。」おにいちゃんが指さす。

「2階建てバスだー!^^ 赤ーい。」春菜ちゃん。

「降りるー。」春菜ちゃん。

ひっぱるかもめちゃん。

「あれ、あれ-!」春菜ちゃん。

こら。ばたばたしない。w

“Your sisters?” 運転手さん。

“Yes. It’s been three years since we saw each other last.” おにいちゃん。

「おおっ。」かもめちゃん。

「(・・。)ん?」春菜ちゃん。

“One sister, and her friend.” かもめちゃんが訂正する。

「死んじゃった構文だぁ。」かもめちゃん。

「耳はいいんだけど、慣れてないんです。」かもめちゃん。

「ふえーん。」春菜ちゃん。

夜景に照らされて、春菜の瞳はきらきら輝いていた。

かもめは、初の海外で舞い上がっていた。

着いてみた。

“Thank you very much.” おにいちゃん。

“Thank you.” ふたり。

運転手さんにお礼を言って、街中に出てみる。

「(・・。)ん? ここ、公園じゃないよ?」春菜ちゃん。

「公園はもうすこし向こう。^^ 地下鉄のGreen Parkって駅のそばね。」

「ほうほう。で?」春菜ちゃん。

「ここなのだ。」おにいちゃん。

“Welcome to the beach!” お店のおにいさん。

“Thank you?” 春菜ちゃん。

「そこに名前書いといて。」おにいちゃん。

来店名簿である。

スーツ着てたのはそのためだったのか。

(・・。)ん? 店名?

The Palm Beach Casino Clubとある。カジノである。

「とりあえず、ポンドにしないとね。」おにいちゃん。

5万円分を、ポンドに替える。

「5万円で足りるかな?」おにいちゃん。

さて。

「さて?」春菜ちゃん。

「増やすぞー!!!」おにいちゃん。

「(o _ _)oコケッ⌒☆

おにいちゃんの目論見は、①まず日本円をポンドに替えて、②勝って遊ぶ。

以上のようなものだった。

どうなることやら。

「すごーい!すごーい!」はしゃぐふたり。

スタッドポーカーに、ブラックジャック、そしてルーレットにバカラまである。

「なんだこれ。」春菜ちゃん。

「ルーレット表とペン。覚えるべし。」おにいちゃん。

「えー。^^」春菜ちゃん。

喜んでいる。

あ。そうそう。

ここはね、会員権がいるのよ。

現地に住んでる人で、会員権持ってる人に連れてってもらうしかないのね。

会員費、無料。

「かもめちゃん、春菜ちゃん。おいで。」おにいちゃん。

ルーレットへと急ぐ。

「これがね、いちまい、£2。トークンにもなるからね。」

「トークン?」ふたり。

「あとで、おねえちゃんにサンドイッチとか持ってきてもらったら、これをチップにするの。」おにいちゃん。

+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆

“I see.” ふたり。

「よく見ててね。」

「( ̄  ̄) (_ _)うん」ふたり。

ディーラーのおねえちゃんが小さな白い球を投げいれる。

「おにいちゃん!^^;」春菜ちゃん。

おにいちゃんは、自分の賭け金を黄色のメダルに替えると、早速、盤上にずらりと並べた。

「この中のひとつしか当たらないんでしょ?」かもめちゃん。

“No more bet, please. Thank you?”

計40枚。壮観である。^^

てことは・・・?

「もう£80も使ったのー!?」ふたり。

「ぜったい、右上にくる。」おにいちゃん。

おにいちゃんは、ディーラーのおねえちゃんがどこをめがけて投げたのか、目で測っていたのだ。

おにいちゃんは、4月17日生まれ。

17は、0から数えて、ルーレットの盤面の右上にあるのだ。

2, 25, 17, 34, 6・・・とある。

ここに来てほしい。w

どきどきどきどき。

からーん、からーん、からーん。

どこだ?

(・・。)ん?

「17の隣ぃぃ。。。」春菜ちゃん。

「がーん。」かもめちゃん。

おねえちゃんが、当たった数字のところに、ガラスでできたものを置く。

その下には・・・。

黄色、3枚と横に2枚ずつ。

「あれ?」春菜ちゃん。

「キタ━━━━ヽ(〃▽〃 )ノ━━━━!!!! 」おにいちゃん。

「え。当たったの?」

ひそかにガッツポーズをするおにいちゃん。

「保険、保険。」

黄色3枚が35倍で、横2枚ずつがそれぞれ17倍。

36から、一枚引いた数と、横ボックスだから、18から一枚引いた数なのだ。

ということは。

105枚+68枚 = 173枚。40枚ばらまいてたから・・・。

差し引き、約140枚GET。ほほほ。

この時点で、£280の儲けである。

「すごーい!!!」ふたり。

「よしこれは山分けだ。£50ずつあげるね。」おにいちゃん。

「わーい。」ふたり。

「かわいく賭けよっと。」春菜ちゃん。

「これ、上から置いてもいいんですか?」かもめちゃん。

「| ̄_ ̄||―_―|| ̄_ ̄||―_―|ウンウン」目を合わさないおにいちゃん。

すでにバトルモードである。

春菜は、黒の£10玉に替えてもらうと、赤にひとつ賭けた。

「かもめもー。」かもめちゃん。

ワクo( ̄▽ ̄o)(o ̄▽ ̄)oワク

くるくるくるくる。

“Two, six, and the neighbours, please.”

からーん、からーん、からーん。

赤の25番に止まった。

キタ━━━━ヽ(〃▽〃 )ノ━━━━!!!!

春菜、かもめ、£10GET。

「いい前兆だ。^^ ここいらでやめとく?」春菜ちゃん。

「ねぇ、おにいちゃーん。」春菜ちゃん。

(・・。)ん?

25番の赤ってったら。^^;

“Thank you.” おにいちゃん。

「また当たったのー!?」ふたり。

「惜しかった。( ノΩ`)シクシク…」おにいちゃん。

かくして、豪勢なシャンデリアの下、ルーレットの夜は更けてゆくのであった。

episode19

「おもしろかったねー。」ふたり。

「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん。」おにいちゃん。

「で、いくら勝ったの?」春菜ちゃん。

「£750くらい。^^v」おにいちゃん。

「ひえぇっ。それって?」かもめちゃん。

「軽く10万円以上。イエーイ☆ でも、あのピンク玉のおじさん、すごかったね。」おにいちゃん。

「あれ一枚いくらなの?」春菜ちゃん。

「あれはねー。£200玉。」おにいちゃん。

「Σ(・ω・|||)え!」ふたり。

「£1,000もあるんだよ。メロンちゃん。(緑色なのだ。)」

「盤面ぎっしり流されたあと。」春菜ちゃん。

「顔色一つ変えずにまた賭けてたよね。w」おにいちゃん。^^;

「すごい富豪がいたもんだ。」ふたり。

「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん」おにいちゃん。

帰り道、3人は、黒いタクシーに乗った。これは、ロンドンでは国家認定を受けたタクシーなのだ。

運転席と後部座席がセパレートになっている。

対面の状態で、3人はプチ裕福な気分でいた。

とりあえず、目指すはおにいちゃんのフラット。

「今いくらのところ借りてるの? 給料上がった?」春菜ちゃん。

「今ね、£585/Mのところ。お給料は据え置き。^^;」おにいちゃん。

「払えるのー!?」春菜ちゃん。

「くるくるくるくる。」おにいちゃん。

「もー。^^」春菜ちゃん。

+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆

到着したフラットは、新築物件らしく、とても綺麗な一軒家の1階だった。

イギリスのおうちの特徴として、家具がそのままついてくる。

小綺麗で、なんか古めかしい伝統を感じるつもりでいた春菜は、すこし肩すかしをくらった気分だった。

「このフラットね。」おにいちゃん。

「探してるときに、別の物件当たってたんだけど。」おにいちゃん。

「築20年で、New, around here.って言われた。^^; 伝統があるからねー。」

「そなのかー。」感心するふたり。

「さて。お夜食でも作るかい?」おにいちゃん。

「うん♪」ふたり。

「そこのバゲット、適当にかじってて。」おにいちゃん。

「カチカチだよー。」春菜ちゃん。

「ハムとパセリのペペロンチーノでいい?」おにいちゃん。

+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆

そうだった。おにいちゃんに教わったんだった。

前の道路は幹線道路。82番の赤いバスが往来していた。

明日は、あれに乗って、いろんなところ行こう。

春菜は、かもめとるるぶロンドンに見入るのだった。

さて作者も思い出すことがある。

日本人は、どうしても活字に飢えてしまう。

とくに、育ち盛りの子たちにとって、日本語で書かれた小説など、とても高価なのである。

今度もし行く機会があるならば、単行本を寄贈してあげてもらいたい。

現地にも、日本人学校がある。

せめてもの恩返しである。

場合によっては、漢字ドリルでもいいかもしれない。

きっと、コピーして一所懸命練習することだろう。^^

「ねーかもめー?」春菜ちゃん。

「(・・。)ん?」かもめちゃん。

「フィッシュアンドチップスってパブにあると思う?」

「店によりけり。」おにいちゃん。

「高いぞなもし。」おにいちゃん。

「フィッシュアンドチップスだったら、専用のお店行って、塩振ってビネガーで食べる。」おにいちゃん。

「あら?」かもめちゃん。

「タルタルソースではないのね。」かもめちゃん。

「あ。」おにいちゃん。

「思い出した。いいとこ連れてったげる。^^」おにいちゃん。

とりあえずできた。

+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆

「超おいしそう。^^」

(ΦωΦ)ふふふ

「かっらーい!^^;」春菜ちゃん。

「おにいちゃんの味ぞなもし。」おにいちゃん。「かもめちゃん、大丈夫?」

「ふぁい。なんとか。」汗まみれのかもめちゃん。

容赦のないおにいちゃん。

鷹の爪は、日本食の食材店とか、チャイナタウンに行かないとないのね。

これは、もろにRed Chille Hot Pepperだったのだ。

生々しい、赤。

しかしそこはおにいちゃん。

美味しいのね。^^ よかったね。

「あ”ーーーーー。。。」春菜ちゃん。

翌朝、春菜たちが目覚めたとき、おにいちゃんは床の隅っこにいた。

丸まって寝ている。

思えば、生まれたときから、同じ部屋で寝たことなどほとんどなかったことに今更のように気づく。

「おはよー。」春菜ちゃん。

「んー。」おにいちゃん。

「なんでこんなに丸まって寝てるの?」春菜ちゃん。

「キングサイズでもこうだよ?」おにいちゃん。

「省スペースなのね。」春菜ちゃん。

「どこ行くか決めた?」寝ぼけまなこのおにいちゃん。

「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん」春菜ちゃん。

「ショッピングー♪」ふたり。

「おにいちゃん、今日は仕事だから。」おにいちゃん。

「えー。」ふたり。

「しっかり遊んできたまえ。」おにいちゃん。

「了解(ラジャ)。」春菜ちゃん。

「それから、これ。」おにいちゃん。

「昨日の勝った分。^^」おにいちゃん。

なんと、£500もある。

「それで遊んでおいで。ふたりでは心もとないかもだけど。」おにいちゃん。

「わぁいヽ(∇⌒ヽ)(ノ⌒∇)ノわぁい♪」春菜ちゃん。

「あ。それから。」おにいちゃん。「父さんと母さんには、あんまり羽振りがいいことはナイショで。」

「ん?^^」春菜ちゃん。

「こら、言うなー!w」おにいちゃん。

かなり見栄張ってるような気がするよな。

いいのかな。

でも。

ここぞとばかりの勝負運は、相変わらずらしい。

春菜は、日本土産を差し出すことを忘れていた。

あれ?

なんか忘れてたんだけどな。

ま、いっか。

うーん?

episode20

春菜のスーツケースには、アイスノンで包まれた食材が眠っていた。

こてっちゃんである。

おにいちゃんの大好物。^^

あとは、なし。

エエェェΣヽ(*`・ω・)ノ゙ェェエエ工

だって、リクエストだったんだもん。

でも、£500もおこづかいくれるなんて思ってなかったから。

春菜は、かもめと共に、tubeに揺られ、繁華街の紳士服を目指した。

「ねねね、お礼、何にする?」かもめちゃん。

「うーん。」春菜ちゃん。「こてっちゃんしかお土産持ってこなかったからなぁ。」

「えー。w」

「こてっちゃん?^^;」かもめちゃん。

「リクエストなのだ。おにいちゃんの。」春菜ちゃん。

渡していないことに気づく。^^;

「忘れてたーーー!」春菜ちゃん。

「まいっか。スーツケースのアイスノンの中だし。」春菜ちゃん。

「腐らない?」かもめちゃん。

「大丈夫だよ。おにいちゃん、おなか強いもん。」春菜ちゃん。

牛ホルモンの焼肉なんて、ロンドンにはないからねー。

あったりして。w

すくなくとも、そこはおにいちゃんの生活圏外だった。

外食なんて、take awayしかしらない。

ん?

これはね。

take outと一緒。イギリスでは、take awayになるのよ。

ふむふむ。

それでそれで。

春菜とかもめは、バーバリーに到着した。

外観がきわめて美しい。

ここは、ビルが曲線で建っているところの一部なのだ。

ピカデリー・サーカスの一部である。

あちゃー。

体型合わないし。w

「昔ね。生徒にね。」春菜ちゃん。

「うん。」かもめちゃん。

「『£600貯めて、あったかいコートを買ってください。』って言われたんだって。」

「ぷぷ。春菜のおにいちゃんって、先生だったっけ?」かもめちゃん。

「うんうん。相変わらずだよね。^^」春菜ちゃん。

「ということで?」かもめちゃん。

「コート!」ふたり。

1. 裏地はチェックでなくてはならない。

2, ひきずる長さであってはならない。

この2点を満たしていてなおかつ、みんなが着てないやつを探せばよいのだ。

春菜、早くも発見。

おー♪

値札には・・・。

ひえぇぇぇ。

「いいと思ったんだけどなー。。。」

妥協して、£650少し足の出るやつに落ち着く。

「ゆうべ楽しかったもんね。おにいちゃん、ありがとー♪」ふたり。

さて今度は自分たちのお買い物だ。^^

Go☆

BODY SHOP発見。コスメちっくなやつを選ぶ。

Hermesもあった。しかし、フランクフルトの記憶で後悔したくないため、パス。w

Harrodsに行く。

「わー。」ふたり。

「手提げかばん、欲しいよー♪」ふたり。

「いくらなんだろうね?」

でもこれはよく考えたら。

伊勢丹でもいいわけで。w

横文字に弱い部分がちびっとあるのかもね。うちら。w

ふたりは、おにいちゃんのフラットに戻ると、大切そうに折り目をつけないようにしまった。

女の子だねぇ。

その点、おにいちゃんは、非常に大雑把である。

「だってさ。死ぬとき、なーんにも持ってけないんだよ? 現世に未練残してどうする?」

基本的に、悲観主義者らしい。

今日は、3人で中華に出かけた。

近所の、高架下にあるお店である。

なぜかロンドンでチャーハンとチャーシューメン。w

「ごはんだー!!!」ふたり。

「今日はおにいちゃんのおごりね。」おにいちゃん。

「わー。」ふたり。

「お米のごはん、いつ以来?」おにいちゃん。

「出た日以来かなー。もぐもぐ。^^」春菜ちゃん。

青島(ちんたお)ビール、ちびり。

「いつか春菜とラーメン食べたかったんだよな。」おにいちゃん。

「なんでー? どきっとするようなこと言わないでよ。」春菜ちゃん。

「昔みたいにさ。サンポー焼豚ラーメンとかさ。」おにいちゃん。

「あー。」ふたり。

わかるわかる。

レタスチャーハンとある。

当然知ってる春菜ちゃん。

はじめて食べるかもめちゃん。

「レタスってこんなに美味しいんだね☆チャーハンと混ぜても。」かもめちゃん。

「ねー。」

お米の国に育った3人は、どういうわけだか同じ席にたどりついた運命の偶然を感じていた。

人生。

どこでどうなるかわかんないもんね☆

というわけで。

明日は、タワーブリッジと、ろう人形館だー!

「ゆっくり休むといいよ。」おにいちゃん。

「疲れてないもーん。」春菜ちゃん。

「いいなぁ。若いって。」おにいちゃん。

「年取るとね、一日置いてくるのよ。」おにいちゃん。

「うにゅ?」ふたり。

「疲れがね、あさってくらいにやってくるんだわ。」おにいちゃん。

明日過ぎたら、あさってはまた・・・。(o_ _)oパタッ

そうだった!

「おにいちゃん、こてっちゃん持ってきたよ!」春菜ちゃん。

“Thanx, a loooooooooooooooooooooooooooooooooooooooot!”おにいちゃん。

「しらないふり、しらないふり。w」春菜ちゃん。「紳士はでっかい声出さないんだぞ。」

“Oh, sorry, I apologize. Shall we?” おにいちゃん。

“Go home!” 春菜ちゃん。

さすがに息の合ったふたり。

兄妹だねぇ。

3人は、チップを置いて店をあとにした。

夜のとばりには、少し霧がかかっていた。

遠くで、地下鉄が枕木を鳴らしていた。

episode21

翌朝。

春菜とかもめとおにいちゃんは、マダム・タッソーのろう人形館を訪れた。

いきなり千代の富士関。w

「でっかーい!^^;」春菜ちゃん。

「超リアルー。」かもめちゃん。

表情まで活き活きしている。

英国を訪れてはじめて出逢った日本人がおにいちゃん。

次に出逢ったのが千代の富士関であった。w

いろいろ見て回る。

「(「・・)ン? なんだこれ。」春菜ちゃん。

「惑星の運行って書いてるよ。」かもめちゃん。

石臼みたいなのがある。

真ん中のくぼみが、太陽らしい。

中心ほどにくるくる廻っている。

そして、遠くの球ほどにゆっくり廻っている。

「真ん中の太陽を一角に、始点と終点を結んだおうぎ形は。」

「(・・。)ん?」

「一定時間で常に同じ面積なんだよ。」

理科の先生もやっているおにいちゃん。

+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆

ということは。

地球が太陽の周りを一周する間に。

水星なんて、超くるくる廻ってて、冥王星なんてほんの少ししか動かないんだね。

そして地球は太陽の周りを廻っている。

「超わかりやすいよ、これ。」おにいちゃん。「持って帰れないかな?」

「重いでしょ!^^;」春菜ちゃん。

るるぶロンドンのページに折り目がついていた。

ピーターラビットの故郷と、ストーン・ヘンジだった。

「どっちにするー?」かもめちゃん。

「いっぺんには無理だよねぇ。それに車ないし。」おにいちゃん。

「えー、両方ー。」春菜ちゃん。

さらりと却下される春菜ちゃん。w

「いっそこの際。」おにいちゃん。「パリにでも行ってみるかい?」

「え!^^」ふたり。

「何時間くらいかかるの?」春菜ちゃん。

「3時間くらい。ユーロスターで。^^」おにいちゃん。

「キタ━━━━ヽ(〃▽〃 )ノ━━━━!!!! 」

というわけで。

駅でお見送りをするおにいちゃん。

「ちゃんと帰ってくるんだよ。」おにいちゃん。

「Σ( ̄  ̄ノ)ノ エェ!? 一緒に来てくれるんじゃないの?」春菜ちゃん。

「このまんまだと、家賃払えないから。^^;」おにいちゃん。

「えー。」ふたり。

がたんごとん。

「ターミナル(終着駅)って、なんかいいよね。」春菜ちゃん。

「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん」かもめちゃん。

だんだん遠くなるおにいちゃん。

手を振るのをやめて、ふたりはパリへ向けて発った。

「ヨーロッパかぁ。いいなぁ。」かもめちゃん。

「クロワッサン食べようね☆」春菜ちゃん。

「なんてったって。」かもめちゃん。

「本場だもんね。」ふたり。

結局、ふたりは、パリで一泊して帰ってきた。

モンマルトルの丘と、ルーブル美術館が忘れられない。

ルーブル美術館で、目を惹いたものといえば、サモトラケのニケ像だった。

首から上がない。

でも、あんなに強い女神はいなかっただろう。

ニケ?

ってね。

Nikeって書くのよ。ナイキと一緒。

勝利の女神の翼をモチーフに、ナイキシューズには翼が描かれている。

いつかわかる日がくるだろう。

(・・。)ん?

読んでくれている、君にもね。^^

帰りの飛行機の中で、ぽろっと出てきたものがあった。

「あ。」春菜ちゃん。

「どうした?」かもめちゃん。

「こてっちゃん、落ちた。」春菜ちゃん。

「渡してなかったのー!?^^;」かもめちゃん。

「乗務員の人、いらないかな。」春菜ちゃん。

「たぶん、いらないと思う。」かもめちゃん。

忘れっぽいのは、兄妹ともに同様であった。

NRTのタグをつけて、ふたりは横浜に帰り着いた。

足腰が疲れてる。

春菜は、里帰りもまだなのに、ホームタウンに戻ってきた気持ちでいた。

「日本だね☆」春菜ちゃん。

「うんうん。^^ お米の国だもんね。^^」かもめちゃん。

「Hungry Tiger行かない? ステーキ、ステーキ♪」春菜ちゃん。

「行くー!!!」かもめちゃん。

お腹いっぱいごはんを食べるふたり。

「お米って。」春菜ちゃん。

「わんだほー!」ふたり。

かくしてふたりのヨーロッパ旅行は終わった。

一緒懸命、英語をお勉強していったふたり。

あれ?

「(・・。)ん?」ふたり。

いつ使ったんだっけ?^^;

episode22

春菜とかもめは例によって深夜の電話メイトだった。

お互いの電話番号は、050ではじまっている。

(・・。)ん?

横浜だから、045じゃないの?

違うんだな、これが。

IP電話同士だと、電話代なんて無料に等しいのだ。^^

もちろん、故郷のお母さんとも。

しらなんだ?

遠距離電話かけてる場合じゃないんだぞ。

あ。もちろん。

常時接続が可能なインターネットが開通していることが前提。

ADSLでもいいわけね。

というわけで。

春菜とかもめは、いつもの深夜電話に夢中だったが。

「かもめー?」春菜ちゃん。

「(・・。)ん?」かもめちゃん。

「今度ね、田舎に帰るんだけど。」

「帰省かぁ。」かもめちゃん。

「なんかお土産いる? こてっちゃんとか。w」春菜ちゃん。

「ぴしっ。w」かもめちゃん。

「あんた、九州でしょうが。」かもめちゃん。

「あれ? こてっちゃんってどこ?」春菜ちゃん。

「関西よ、関西。w」かもめちゃん。

「なんでー?」春菜ちゃん。

「昔からあったよ?」春菜ちゃん。

「そういう問題じゃなくって。」かもめちゃん。

「いついつ?」かもめちゃん。

「今度の週末から、2~3週間くらい。」春菜ちゃん。

「何で帰るの?」かもめちゃん。

「んー。たぶん、新幹線?」春菜ちゃん。

「飛行機でもいいんだけど、どうしよっかな。」春菜ちゃん。

「往復のが安いよ。」かもめちゃん。

「そうなんだ。」春菜ちゃん。

「んー。」春菜ちゃん。

相変わらずこういうときは優柔なのだった。

牌は見事な切り方なのにね。w

「んじゃ、この前飛行機乗ったばっかりだから、新幹線!」春菜ちゃん。

「We will soon make a stop at Hakata. ちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃー♪」かもめちゃん。

「ちゃちゃちゃっ、ちゃーん♪」ふたり。

「かもめ、似てる。」春菜ちゃん。

「お土産、よろしくね。^^」かもめちゃん。

「(-ω-ゞラジャ⌒☆」春菜ちゃん。

かくして、春菜は新横浜駅のコンコースの中にいた。

kioskで、ぷっちょをgetする。

「なんだこれ。エイリアン味?」

しゅわしゅわくるらしい。w

怪しすぎる。

おにいちゃんはパスをお勧めする。

ついでに、カツサンドもGet。

日本の新幹線は、定刻通りに運行されていることで有名である。

その誤差、30秒。

待たせちゃかわいそうなお国柄なのだ。

「待って、待って。」春菜ちゃん。

あわてて2号車に向かう。

滑り込み、セーフ。^^

のぞみ号だった。

「そいえば富士山見てないぞ。」春菜ちゃん。

どっちだっけ?

東海道新幹線の下りだから、向かって右ぞなもし。

「わーん。」春菜ちゃん。

反対側の席だった。

そうそう。のぞみ号はね、全席指定なのよ。

席は基本的に固定されてるのね。

がらがらのときは移動可なんだけど。

「しくしく。富士山、まだ見たことなーい。」春菜ちゃん。

おにいちゃんの言ってた通り、足元のコンセントを探す。

Ultrabook、しゃきーん。^^

「充電じゃ持たないから。電源持ってくといいよ。」おにいちゃん。

「きたきた。^^」

「きゅいいいん。」軌道音。

振り向いた乗客が約一名。

メールチェック。^^

かもめからだった。

春菜へ。

福岡帰ったら、親孝行するんだよ。

なにげに、最恵国待遇だと思うし。^^

親元離れて一人暮らししてる春菜を尊敬します。

お土産は、おすすめブランドの明太子かたらこで♪

できれば、ラーメンも持って帰ってください。

くれぐれも、ナンパされないように。

ゆっくり羽根伸ばしておいでね。^^

かもめちゃん。

春菜、返信。

へーん、しん。

とおっ。

了解したのだ。

今ね、新幹線の中だよ。

また名古屋あたりでメールするね。

以上。

リポートは、春菜でした。

ちゃん♪

さっそくカツサンドをパクつく。^^

この辺は、スーツ姿のサラリーマンのおじさんが多いことに気づく。

なにげに緊張しやすいのだが。

いたってのんびりの春菜であった。

「We will soon make a brief stop at Nagoya♪」アナウンス。

「ちゃちゃちゃっ、ちゃーん♪」春菜ちゃん。(心の中。)

きゅいーん。きゅいーん。きゅいーん。

名古屋駅を出る新幹線。

味噌煮込みうどんを発見した春菜。

「あ”----。」春菜。

味噌煮込みうどんが加速度的に遠ざかってゆく。

「車内販売、ないかなぁ?」春菜ちゃん。(心の中。)

ないでしょ。w

どうやって食うねん。w

かもめへ。

ところでさ。桃鉄ってさ。

結構役に立つよね。

今ね、味噌にこみうどんが逃げてった。^^;

きしめんとか食べたいよー。

次は・・・?

奈良? 京都? 大阪?

何あったっけ?

車内販売が楽しみだよぅ。

春菜。

(・・。)ん? 春菜ちゃん? 食いしん坊だって?

春菜ちゃんは、18歳まで九州を出たことがないのだ。

そして、いきなりの中華と海外。

日本各地の食べ物は、未体験ゾーンだったのね。

しかも、上京は飛行機だったし。

桃太郎電鉄ってゲームで遊ぶのが好きだった春菜ちゃん。

「そだ。今度、パパと遊ぼう。」春菜ちゃん。

「沖縄の件は、ナイショで。^^」

「くふくふ。」

物件を買って、利益を上げて決算するゲームね。

日本全国に物件があるのだ。

岡山には、ももたろうランドがある。

200億円するのね、ゲーム上。^^

そしてモモスラの卵がよく孵化するのが博多駅。^^

そこが春菜の終点だった。

春菜は、下関を超えたあたりで、眠りそうになったが。

トンネルを抜け、小倉のアナウンスが鳴る頃には、すでに九州モード全開だった。

「帰ってきたねぇ。」なぜか突然、九州訛りになる。^^;

「なつかしー。」

わずか1年足らずなのだが、生まれ故郷に帰ってくる感慨というものには、格別なものがある。

「何しよっとかねー。パパ。おにいちゃんの羽振りのことは内緒って言いよったけどねー。」春菜ちゃん。

「まもなく、博多駅です。お降り口は、xxホームでございます。扉の左側が開きます。」

着いたぁ。^^

ぷしゅーっ。

懐かしい香り。

雑踏を抜けながら、自分の足がかなり速くなっていることに気づく。

横浜って、速足だもんね。

タクシー!

Σ( ̄ω ̄ノ)ノハッ!!

「パパのお土産忘れてたぁ。。。」

相変わらずの春菜であった。

episode23

「ただいまぁ。」春菜ちゃん。

近所のコンビニでGetしたいいちこを片手に、春菜は玄関のドアを開けた。

「おかえりー☆」ママ。

「さささ、待ってたわよ。」ママ。

夕食のいい香りからするに、今夜はステーキだった。

「あれ? パパはー?」春菜ちゃん。

「今、取り込み中。」ママ。

「(・・。)ん?」

居間を抜けて、パパの部屋へ向かう。

「ただいまぁ?」春菜ちゃん。

「入っていい?」春菜ちゃん。

「おー。春菜かぁ。ノックしたら入ってよし。」パパ。

「なんだそれ。w」「こんこん。」春菜ちゃん。

「はーい。」パパ。

PCを前に、エキサイトしているパパ。

+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆

TERAだった。

画面の中で、ずいぶん男前になってるパパ。

「部長、覚悟ー!!!」パパ。

敵キャラらしい。w

しかし。

さくさく動くのであった。春菜のノートとはわけが違う。

部長が倒れると、経験値とマネーが手に入った。

そこでひとやすみするパパ。

「おかえりー、春菜。^^」パパ。

「ママー? ごはんできたー?」春菜ちゃん。

「もうすぐよー。」ママ。

「(-ω-ゞラジャ⌒☆」春菜ちゃん。

「あのね。お土産忘れちゃったの。」春菜ちゃん。

「え。」パパ。

「代わりにと思って、これ。いいちこ。^^;」春菜ちゃん。

「さんちう。」パパ。

「台所行こっか。」春菜ちゃん。「注いだげる。」

「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん」パパ。

ふたりは、ダイニングに向かった。

そうだった。

ママに、エルメスのスカーフあるんだった。

「じゃーん。」春菜ちゃん。

「これね、フランクフルトで買ってきたの。」春菜ちゃん。

「きゃーーーーーー。」ママ。

「あ。火、大丈夫?」春菜ちゃん。

「ここ持ってきちゃダメ。」ママ。

「なんでー?」春菜ちゃん。

「お肉のにおい、ついちゃうでしょ?」ママ。

「そっか。じゃ、あっち置いとくね。」春菜ちゃん。

「(*・▽・)*。_。)*・▽・)*。_。)ゥンゥン」ママ。

台所のテーブルの定位置に春菜は座った。

となりのおにいちゃんの席は空いている。

そして対面にパパとママ。

「ステーキだよー☆」パパ。

「+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆」春菜ちゃん。

一口で、伊万里牛とわかる。

なんと、ステーキソースは、ママのオリジナルだった。

「激おいしい☆」春菜ちゃん。

「よかった、よかった。」パパ。

「春菜ちゃん、向こうでちゃんと食べてる? カップ麺とかじゃなくて。」ママ。

「ばっちり。カニのはさみまであるから。中華。」春菜ちゃん。

「それはありがたいわね。^^」ママ。

「ところで。」春菜ちゃん。

「(・_・o)ン? (o・_・)ン? (o・_・o)ン?」両親。

「部長って、だれ?^^;」春菜ちゃん。

「さっき見たろ。」パパ。

「もしかして、あの瀕死の人?」春菜ちゃん。

「| ̄_ ̄||―_―|| ̄_ ̄||―_―|ウンウン」パパ。

「だいぶ経験値稼いだよ。」パパ。

そういう問題じゃなくて。w

「ねー、ねー。^^」春菜ちゃん。

「もっとゲームして。」春菜ちゃん。

「もっと? せがた三四郎じゃあるまいし。」パパ。

「セガサターンしろってか?」パパ。

ウケる春菜ちゃん。

「同じ意味だろ?」パパ。

「ははは☆」春菜ちゃん。

「あとで桃鉄やりたい。^^」春菜ちゃん。

「10年モードでいくか。」パパ。

「うん☆」春菜ちゃん。

なにげに仲良しこよしの家族。^^

おにいちゃんが聞いたら、さぞかしホームシックを感じたに違いない。

「そーだった。」春菜ちゃん。

「(・・。)ん?」

「ロンドン行ってきたよ。おにいちゃんとこ。」春菜ちゃん。

「+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆ 元気にしてたか?」パパ。

「羽振り悪いくせに、かなりいいとこ住んでた。」春菜ちゃん。

「まさかカジノで大儲けとかしてないだろうな。」パパ。

「え。」春菜ちゃん。

やたらと勘の鋭い一家である。^^;

固まる春菜ちゃん。w

「ま、おごってもらった分際だし。よくは知らないけど、ノーコメントで。^^;」

嘘のへたくそな春菜であった。

「小さい頃から、おにいちゃんってそうだったよね。」春菜ちゃん。

「(・・。)ん?」

「言ったら、その通りにしか行動しないんだから。」ママ。

「そうそう!^^」春菜ちゃん。

「あいつな、ロンドン行く前から、お金に困ったら、人生は冒険だとかなんとか言ってただろ。」パパ。

「これ、渡しといたんだ。」パパ。

台所の壁に、ルーレット表があった。^^;

「よく覚えていかないと、ただのカモだから。」パパ。

「パパ!^^;」春菜ちゃん。

そういうことだった。w

賭け方まで教えたんだろうか。

いずれにしても、家族円満、なかよしこよしの一家であった。

サザエさんというよりは、ムーミン一家に近い。

そうだ。明日は、同窓会なんだった。

何着て行こっかなー?^^

そうだ。メールしなくちゃ。

かもめへ。

無事に到着しました。お土産は、明太子だったよね?

早いほうがいいだろうから、明日、クール便で送る。^^

同じ住所でいいんだよね?

うちの一家は、無事平穏に夕食を終えました。

あとで桃鉄やる予定。

ちっこい弟くんに、どうぞよろしく。^^

以上。

春菜ちゃん。

P.S. あしたは同窓会です。いっぱい飲むぞー☆

てか。

春菜ちゃん。

キミ、まだ未成年、未成年。^^;

あんまし羽目外さないようにね。

気を付けるんだぞぉ。

がおおっ。

episode24

春菜は、居酒屋にいた。

一年ぶりの同窓会。

空港まで見送りに来てくれた子が隣に座っていた。

「春菜ちゃん、(*  ̄▽)o□☆□o(▽ ̄ *) カンパァーイッ♪」

「(*  ̄▽)o□☆□o(▽ ̄ *) カンパァーイッ♪」

霜が降りたグラスを片手に、春菜は悦に入っていた。

かもめと飲んだときのことを思い出す。

「ねーねー、これトレードしない?」

「ダメー。から揚げは渡さない。w」

「そんなぁぁ。( ノΩ`)シクシク…」

「春菜ちゃんの酒だぞー。ひっく。」

「それはいただく。」

「ひっく。」

「なんでしゃっくりって出るんだろうね。」春菜ちゃん。

「横隔膜の痙攣かも。」

「それはしってる。」春菜ちゃん。

対面の男の子たちが、わっと湧く。

「そそうだー! ほれ、飲めぇー!」

「一気、一気。」

これはいけない。

お酒は、自分のペースで、体調管理に気を付けながら飲まなくてはならない。

下手をすれば、周りに一気に迷惑をかけてしまうことだってあるのだ。

救急車とか、ね。

「あれはいかんよね。」春菜ちゃん。

「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん ささっ。」

「あー。。。春菜のお刺身取ったぁー!」

「(ΦωΦ)ふふふ 」

「もー。」

「生中、追加で。えっと?」

「ふたつー!」

春菜ちゃん、くるくる。(@@)/

グラスの数を数えていないことに気付く。

かなり回ってるみたい。^^;

おにいちゃんの鉄の肝臓とは裏腹に、どういうわけだか弱っちい春菜ちゃん。

どうすんだ。

2次会大丈夫か。(そうじゃないって。w)

そこで青ざめる春菜。

いかんっ。(/||| ̄▽)/

「やばっ。お財布。」春菜ちゃん。

「えー。」

「ないぞ。」春菜ちゃん。「(・・。)ん?」

暑くなって、上着を脱いでいたことが判明。w

「ここだ。あったぁー!」春菜ちゃん。

「わーい。ぱちぱちぱちぱち。^^」お友達。

「お財布、討ち取ったりぃー♪」春菜ちゃん。

「意志を貫けば・・・。(・・。)ん?」春菜ちゃん。

「座って、座って。」お友達。

仁王立ちしている春菜。

かなりウケている客席。w

気が付けば、二次会の会場で座っている春菜。

「あれ?」春菜。

「どした?」お友達。

「記憶ないよ? うにゅ?」春菜。

「最後の記憶は?」お友達。

「討ち取った瞬間。」

「もしかして、おんぶされたの覚えてないの?」お友達。

「エエェェΣヽ(*`・ω・)ノ゙ェェエエ工」春菜。

危険すぎる。w

この子は、酔うと正体と記憶を失くす子らしい。

キラーン☆

すり寄ってくる男たち。

「春菜ちゃん、歌わない?」クラスの男子。

「いくぞー☆」春菜ちゃん。

「マイク、マイク。」男子。

「春菜、Kyon×2、いきまーす☆」

「+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆」

「なんてったって。」

「あーいどーーーーーーる♪」

「なんてったって。(・・。)ん?」

「あーいどーーーーーーる♪」

かなり歌の上手な春菜ちゃん。

「春菜ちゃーーーーーん♪」舞い上がる男子。w

次の記憶は、トイレ前だった。

「お客さん、大丈夫?」

「ふに?」春菜ちゃん。

片手にビールを持っている。

「そのビール、どうするんですか。」

「飲むーーー♪^^」

そこで電話。

「誰だぁ?」

「あ。おにーーーーーいいちゃんだ。^^」

「元気ーーーー?^^」

「これこれ。」おにいちゃん。

「んー。。。」

「飲んでるな。さては。」素面のおにいちゃん。

「今どこかわかる?」おにいちゃん。

「トイレー! あ。そだった。あとでかけるー!」

プチッ。

えええええ。

切っちゃったよ。

トイレから出て、その場に座り込む春菜。

「春菜ちゃんはね、春菜ちゃんはね。」

「どうした?」お友達。

「超幸せなんだよーーー♪」春菜。

涙声になる春菜。

「まてー。泣くなー!!」

「どうする? この子。」お友達。

キラーン☆

「俺が送って・・・。」男子。

「あんたも飲んどるばい。」ほかの女子。

「いや、ちびっとしか飲んでないし、覚めてるし。」男子。

「タクシーでしょうが。」

「そやね。」

くるくるくるくる。(@@)

春菜、これわかる? 何本?

「全部で、ごほーん。^^ そうなんよー。幸せなんよー。」

にこにこしている春菜。

「わかった、わかった。」

「これ、建て替えておいたげるからね。」お友達。

「いえーい☆」

ぷるるるるる。

「がちゃっ。春菜ちゃんです。」

電話の音には反応するらしい。

「かもめー!!! キタ━━━━ヽ(〃▽〃 )ノ━━━━!!!! 」

「酔ってるでしょ。^^;」かもめ。

「でねでね。」

「まだ何も話してなーい!^^;」かもめ。

「今から帰るー。鍵よろしくね。」春菜。

「鍵? って。ここ横浜。あんた、福岡。」

「工工工工エエエエエエエエェェェェェェΣ(・ω・ノ)ノェェエエエエ工 そうなん?」

「たらーん。(汗)」

「大丈夫、大丈夫。お兄ちゃんいるもん。」春菜。

「ロンドンでしょうが!^^;」

「どうしよー。。。」お友達。

「誰か、連れて帰ってあげなさい。」担任。

「しょうがないなぁ。もう。」

帰宅したのは、25:00すぎのことであった。

緊迫する我が家。

ただならぬ気配が漂っている。

はっと我に返る春菜。

午前様だよーーー。。。

どうする?

しゅん。(涙。)

そこへ、タクシーがききーっ。

「ありゃ? 春菜、何やってんのこんなところで?」

(・・。)ん?

「パパー!^^」

「鍵持ってる?」

「あるあるー♪」

「ただいまぁー。。。」春菜とパパ。

「もーーーーーっ!」鬼の形相のママ。

ひえええええっ。

以来、二度と春菜は同窓会の席に行かないことにした。

お酒って、怖いねぇ。

君たちも、気を付けるのことよ。

episode25

そうだった。

「ラーメン買いにいかなくちゃ。」春菜ちゃん。

駅か空港にあるぞなもし。

「おかーさーん?」春菜ちゃん。

「なーに?」ママ。

「お土産置いてるとこなかったっけ? このへん。」春菜ちゃん。

「ネットで調べてみれば?」ママ。

「あ。おっけー。」春菜ちゃん。

しかしチャリしかない。

うー。バスか。

そこでぴぴんとくる春菜。

「辛子高菜持って帰ったげよう。^^」春菜ちゃん。

春菜は、博多駅の中へ入っていった。

お土産コーナーを発見。

あるある♪

「とびきり辛いのください。」春菜ちゃん。

「はーい。ひとつでいいのかな。」おじさん。

「ふたつー♪」春菜ちゃん。

辛子高菜はね、とんこつラーメンに載せていただくのだ。

そして目指すは、細玉ストレート。

「どこかな?」春菜ちゃん。

(・ω・。)キョロキョロ(。・ω・)

駅内に、こっそりラーメン屋さんを発見する。

お土産は・・・あった。^^

シャキーン☆

有名どころもいいけど、ここのも美味しい。^^

春菜は、忘れないように、帰省用のリュックにお土産を入れた。

むかし、春菜は、辛子明太子もラーメンに載せようとしたことがあった。

「だって、おいしいよ?」春菜ちゃん。

「それは違う。^^;」おにいちゃん。「ぜったい、別物だと思う。」

そうそう。

明太子リクエストもあったのだ。

辛子明太子は、ごはんに。

たらこは、スパゲティに。^^

+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆

帆立入りなんてある。

近所で、春菜はパパのおつまみ用に400円でひとつゲットした。

「ただいまぁ。」春菜ちゃん。

「おかえりー。」パパ。「どこ行ってたの?」

「かもめのお土産。」春菜ちゃん。

「置物かなんかか?」パパ。

「あ。おかしー。友達の名前だよ、名前。」春菜ちゃん。

「そなんだ。」パパ。

不思議なものである。故郷にいるのに、かもめの話になると標準語になるのだ。

逆現象もよく見られる。

「春菜ちゃーん? どこ出身?」

「福岡だよ?」春菜ちゃん。

「福岡のどこどこ?」

「せからしかねー。」春菜ちゃん。

「なんだそれ?」

「教えんばい。」春菜ちゃん。

福岡の話になると、訛りが出る。

というわけで。

お土産、よーし。

置物、よーし。(違)

さてそれでは遊ぶか。

「いつまでいる気? ゆっくりしてってね。」パパ。

「それがねー。中華のバイトもあるし。海外旅行でだいぶ飛んだし。」春菜ちゃん。

「すぐに帰っちゃうの? 足りなかったらお小遣いあげるよ?」パパ。

キタ━━━━ヽ(〃▽〃 )ノ━━━━!!!!

「ホントホント?」春菜ちゃん。

「ちびっと待ってね。」パパ。「それから。ママにはナイショで。」

「ナイショで。^^」春菜ちゃん。

「そうだった! おつまみ買ってきたよ。」春菜ちゃん。

春菜は帆立入りの明太子を差し出した。

「こんなんあるんだね、最近。」パパ。「よーし。お小遣いアップ!」

狂喜乱舞する春菜。

「なんだこれ? お年玉?」春菜ちゃん。

「ほかになかったのねん。」パパ。「茶封筒だと月給みたいだし。」

「中見ていい?」春菜ちゃん。

「海外ではすぐにプレゼントの包みは開けるけど、日本ではダメだよ。」パパ。

「とくに目の前で開けちゃダメなのだ。」パパ。

「σ◎◎¬ ホホゥ!! そうなんだ。しらなかった。ありがとう♪」春菜ちゃん。

「さささ、隠して、隠して。」パパ。

「(( ̄^ ̄ )ゞラジャ」春菜ちゃん。

「ところで、パパ、なんでそんなこと知ってるの?」春菜ちゃん。

「テレビで見た。」パパ。

「あはは。^^」春菜ちゃん。

Σ( ̄ω ̄ノ)ノハッ!! とするパパ。

「(・・。)ん? どうしたの?」

「春菜はパチンコとかしちゃダメだぞ。」パパ。

「リーチ♪」春菜ちゃん。

もう19は超えているのだ。学生だし。いいじゃん、たまには。

っても、まだ行ったことないんだけど。

「7の揃うやつでしょ?」春菜ちゃん。

「だから、ダメ。」パパ。

「なんでー?」春菜ちゃん。

「うちの家系はね、熱くなるの知ってるから。」パパ。

「熱い血なのか。うーん?」春菜ちゃん。

「というわけで。お酌して。」パパ。

「おっけー。ちびっと待っててね。」春菜ちゃん。

とくとくとくとく。

「春菜も飲みなさい。」パパ。

「うに? これはいいの?」春菜ちゃん。「だってまだ19だよ?」

「おうちで肝トレしとかないと、すぐに潰れちゃうぞ。」パパ。「パパも見てるし。」

「それでは、お言葉に甘えて。」春菜ちゃん。

とくとくとくとく。

「春菜、いきまーす♪」春菜ちゃん。

ぐびっ、ぐびっ、ぐびっ。

ぷはー。^^

「いい飲みっぷりだねぇ。」パパ。

「こらー! 何二人で飲んでるの!」ママ。

ぎくり。

「私も入れなさい!」ママ。

三人、一家団欒で明太子をつまみにビール。

「ありえないなぁ。」パパ。

「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん」ママ。

「ちびっと前まで哺乳瓶だと思ってたけどなぁ。」パパ。

「早いわねぇ。」ママ。

なんだかしみじみと嬉しくなる春菜。

「お前が結婚したら・・・。」パパ。

「ストーーーップ!」春菜ちゃん。

「ダメなの。そういう話。泣き上戸だから。」春菜ちゃん。

すでに涙目である。^^;

「まだ一杯目だぞ?」パパ。

「パパ?」春菜ちゃん。

「(・・。)ん?」パパ。

「あとで肩叩いてあげるからね。」春菜ちゃん。

狂喜乱舞するパパ。

嬉しそうなママ。

反抗期こそなかったものの、受験時はろくに会話もできなかったのが嘘のようである。

ベランダで煙草を吸うパパ。

お片付けをするママ。

春菜は、帰省の意味をひとつ知ったばかりであった。

episode26

福岡は、鶏の消費量日本一である。

なにげに、鶏料理がおいしい。

水炊き、焼鳥、がめ煮等。

「なんだそれ。がめ煮?」かもめちゃん。

「いろんなのぶっこんで煮るんだよ。」春菜ちゃん。

「ガメラのがめ煮。^^」かもめちゃん。

「(* ̄m ̄) ププッ」春菜ちゃん。「それいらない。w かもめ、うちのパパみたい。」

「モスラ屋モスラだっけ?」かもめちゃん。

「そうそう。^^ モスラーや、モスラー♪」春菜ちゃん。「あれは宣伝だったのだ。w」

ゴリラとクジラでゴジラ。

蛾だからmoth。だから、モスラ。たぶん、怪獣にはラがつくんだろう。

おにいちゃんも言っていた。

「モスラが店の名前で、モスラ売ってたの。」おにいちゃん。

「で?^^;」春菜ちゃん。

「モスラ屋モスラ。」おにいちゃん。「歌になってるでしょ?」

「ははははは。^^ Good♪」春菜ちゃん。

「モスラー屋、モスラー♪」ふたり。

「で。いつ帰ってくるの?」かもめちゃん。

「あと2、3日いるつもり。」春菜ちゃん。「おこづかいゲットしたのだ。^^」

「いいなぁー。」かもめちゃん。

「送っといたからね。ゆうパックで届くと思う。^^」春菜ちゃん。

「お土産?」かもめちゃん。

「うんうん。」春菜ちゃん。

「ありがとー♪ 今度なんかおごるからね。」かもめちゃん。

「わーい。^^」春菜ちゃん。

「そうだ。帰りのチケット買ってるでしょ?」かもめちゃん。

買ってない春菜ちゃん。

「あ。忘れてた。w」春菜ちゃん。「この前、腰痛くなっちゃったよぅ。」

「4時間半だっけ?」かもめちゃん。

「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん 帰り、ヒコーキにしたい。」

「いまの時期、予約は苦しいよね。」かもめちゃん。

「ずがーん。」春菜ちゃん。

「スカイメイトにする?」かもめちゃん。

「なにそれ。」春菜ちゃん。

「スカイメイトの会員になって、朝から空港で張ってれば、いつか帰れるよ。」かもめちゃん。

+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆

「だからそれなーに?^^;」春菜ちゃん。

「詳しくは、ネットで見るのだ。」かもめちゃん。

「了解。(ラジャ)」春菜ちゃん。

「んじゃ、近いうち帰るからねー。」春菜ちゃん。

「気を付けてね。」かもめちゃん。

「ばいばーい。」春菜ちゃん。

「ばいばーい。」かもめちゃん。

がちゃっ。

スカイメイトってなんだー?

満12歳以上22歳未満の方で、ご搭乗日当日、出発空港にて空席がある場合にご利用いただけます。
(空席が少ない場合は、最終的に空席が見込まれる場合にご搭乗手続きを承ります。)

って書いてるぞ。

+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆

「毎便、来れない人もいるからね。」おにいちゃん。

「しらなんだ?」おにいちゃん。

「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん」春菜ちゃん。

「これで帰るー。」春菜ちゃん。

というわけで。

涙目の両親を残して、春菜は再び空港へと旅立ったのだった。

横浜へ、いざ。

羽田空港行の便は。。。

結構飛んでいることが判明。

(・ω・。)キョロキョロ(。・ω・)

カウンターで、地上職のおねえさんとお話する。

「スカイメイトですね。番号札は10番になります。」おねえさん。

「乗れそうですか?」春菜ちゃん。

「10人以上の空席がございましたら、お呼びいたしますので。」おねえさん。

「ありがとうございます。((_ _〃)」春菜ちゃん。

列に並んで、春菜は朝一の便をゲットした。

なんとか座れる。(当たり前である。w)

それにしても。

おねえさん、かっこいい♪

春菜は、航空関係のお仕事に興味を持ち始めていた。

語学堪能。容姿OK。

おにいちゃんはなんて言うかな?

「パイロットとかと結婚するのかなー?」春菜ちゃん。

「ぽわーん。」春菜ちゃん。

そこで再び。

ぴーーーーー。

「中身開けますよー。」検査官のおじさん。

つっかかったー。

かなり先の思いやられる春菜であった。

羽田に着いた。

おにいちゃんの言ってた通り、横浜行のバスを探す。

行きとは違って、精神的なゆとりがある。

半分眠っている春菜。

( >▽)ゞ ふぁ~~

見慣れた都会が再び開けてきた。

窓の向こうを眺めながら、春菜は、一回目の上京のときとは全然違う目でこの街を眺めていた。

「成長したかな。私も。」春菜ちゃん。

「経験値upしたもんね♪」

「よーし。これからは。」

「その場の楽しみにとらわれずに、前を見ながら歩くぞー☆」

目指すは、スッチーか?

「待ってろ、将来の私!」

真っ青な空に、ひとすじの雲が流れていた。

ひこうき雲を見ながら、春菜は将来の夢を固めようとしていた。

てか。

どうなったんだ? 仮面浪人は。

かもめ第一部、完。

第二部

episode 1

かもめは、サークル仲間とともにいた。
スタジアムのビール担ぎに慣れてきたため、体重が普段はものすごく軽く感じる。

「かもめ、最近、スリムじゃない?」おともだち。
「まーね☆」かもめちゃん。

山下公園に、愛犬のペスを連れてお散歩するのが日課だった。
なにげに健康マニアなのである。^^;

ペスは、ゴールデンリトリーバーだった。
毛並みがいい。
ブラシで洗ってやると、決まってかもめの顔に水しぶきがかかった。
小さい頃からの日課である。

「こらー。^^; はい、じっとして。」

バスタオルで全身を拭いてやる。
足の裏を念入りに洗って、お部屋の中でごろん。^^

定位置である。

ペスはひなたぼっこが大好きだった。

かもめは、小さい頃から、犬を飼うときは、立派な一人前扱いをすることを心がけていた。

「『お手』って言っちゃいけないの。『握手。』でしょー。」
「よしよし。おりこうさん。」
「でもこれはダメー!」
「いけません。ぴしぴし。」

たいていのことは、言えば伝わる。
小さい頃のしつけが何よりも肝心なのである。

というわけで、かもめは。

どちらかといえば犬派だった。^^

「でね。今度学祭の焼きそばだけど。」先輩。
「今回は後輩のキミたちに託す!」先輩。
「工工工工エエエエエエエエェェェェェェΣ(・ω・ノ)ノェェエエエエ工 いいんですか?」かもめちゃんたち。
「しっかり頑張りたまえ。^^」先輩。
「はーい。^^」みんな。

おうち。

「どうしようねー。」かもめちゃん。
「焼きそば食べたいんだワン。」ペス。(ワンとしか聞こえない。)
「おなかすいたなー。」かもめちゃん。
「同感なんだワン。」ペス。
「ねーねー、ペス。」かもめちゃん。
「焼きそばって、技術いるのかな?」かもめちゃん。
「お湯切るだけなんだワン。」ペス。

小さい頃から、焼きそばUFOをペスにあげてきたかもめちゃん。
本格派は、初めてだったのだ。

春菜に相談することにした。

「がちゃっ。春菜ちゃんです。」春菜ちゃん。
「春菜ー。ヘルプー。^^;」かもめちゃん。
「焼きそばのテクニックしってる?」かもめちゃん。
「しらないよー。てか、学祭?」春菜ちゃん。
「| ̄_ ̄||―_―|| ̄_ ̄||―_―|ウンウン」かもめちゃん。
「焼く係なの?」春菜ちゃん。
「あ。そっか。」かもめちゃん。「でもいつ来るかわかんないし。練習したいよー。」
「つきあえって?^^ もちろんOK♪」春菜ちゃん。

かくして二人は、焼きそば修行に入ることにした。
まずは見学からである。

「プロから学ぶことは大きいぞ☆」かもめちゃんパパ。「なんでも、プロから学ぶこと。」
「目で見て覚えるのは、タダだろう?」かもめちゃんパパ。

焼きそばハウスのカウンター。

ヘラを使って、上手に鉄板の上で焼きそばが踊っている。
ソースの焼ける匂いがたまらない。^^

ここでオーダーする春菜ちゃん。

むむ。

ふたりの番である。

油敷いて、豚肉を切ってたの炒めて、キャベツ投入して。
塩こしょうか? 何入ってんだ?
そこでイカと海老が登場。

海老?

「こらー。春菜ー!」かもめちゃん。
「あんた、海鮮焼きそば頼んだでしょ?」かもめちゃん。
「だめー?^^;」春菜ちゃん。
「しかも二人前。」かもめちゃん。
「もー。w」かもめちゃん。

プロ修業二日目。

おうち。

「ホットプレート、よーし。」
「油、よーし。」
「ヘラ(プラスチック)よーし。」
「いくぞー。」

じゅーーーー。

まとわりついてくるペス。

「はいそこでじっとするー。」かもめちゃん。

真剣モードである。

「中華では一回焼き目をつけるとかなんとか。」かもめちゃん。
「そこで蓋して蒸す!」かもめちゃん。
「ソースくん、投入!」かもめちゃん。

完成である。^^

一口、味見してみる。

おっけー♪^^

ちっこい弟とペスにあげて、かもめは表情を伺った。

「おいしい。^^」弟。
「うまいんだワン!」ペス。

キラーン☆

充分にお客さんに出せる味になった。^^

「あとはマネジメントだな。」かもめちゃん。
「なんてったって、経営だもんね。」かもめちゃん。

仮称「とらたぬシート」を拡げて、経営戦略を考えるかもめちゃん。

(・・。)ん? これ?

取らぬ狸の皮算用、ってしってる? まだ利益になってないことを期待することね。

スプレッドシートを拡げて、関数を組む。
ひとつのセルに単価を入力しただけで、見込み利益が一気に変わるのだった。

「これだとめっちゃ黒字なんだけど、売れるかなー?」かもめちゃん。
「でも原価安いからなー。気がひけるなー。」かもめちゃん。
「そっか。おこちゃんたちも来るしなー。」かもめちゃん。
「うーん。」かもめちゃん。

「というわけで、薄利多売?」先輩。
「はい。」かもめちゃん。
「全部お任せだから、しっかり合宿費用稼ぐこと!」先輩。
「了解でーす!^^」かもめちゃん。

かもめは夜の更けるのも忘れて、経営戦略に取り組むのだった。

episode 2

学園祭の朝がきた。
そわそわしているかもめちゃん。

「かもめ。なんかどうした?」春菜ちゃん。
「遠足以来だよー。^^;」かもめちゃん。
「なんかわくわくしちゃって。」かもめちゃん。
「今日は別行動だね。」春菜ちゃん。
「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん」かもめちゃん。
「春菜はどっかでお店とかやんないの?」かもめちゃん。
「クラスのやつがあるのだ。^^ 焼き鳥屋さん。」春菜ちゃん。
「+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆ あとでねぎまよろしく☆」かもめちゃん。
「(-ω-ゞラジャ⌒☆」春菜ちゃん。

テントの設営にかかる。
思っていたほど難儀ではない。
そこに鉄板と、ガスと、ヒーターをつけて。
あちこちでテントが張られてゆく。

「にしても。いい場所取ったねー。^^」先輩。
「(*・▽・)*。_。)*・▽・)*。_。)ゥンゥン」後輩。
「正門からすぐだし。経営棟の前だし。」先輩。
「お客さん、いっぱい来るかな?^^」先輩。
「とらたぬシート、入りまーす。」かもめちゃん。
「先輩、先輩。」かもめちゃん。
「なーに?」先輩。
「単価、これでいきます。今、200円なんですけど。」かもめちゃん。
「見ててくださいね。」かもめちゃん。

かもめは、スプレッドシートの[単価]枠のところに250と入力した。
すると。

「+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆ 見込み収益がー!!!^^」先輩。
「一気に加速しましたよね?」かもめちゃん。
「キタ━━━━ヽ(〃▽〃 )ノ━━━━!!!! 」先輩。
「そこで。」かもめちゃん。
「もやしを入れると。」かもめちゃん。
「ふむふむ。」先輩。
「Σ( ̄  ̄ノ)ノ エェ!? 減っちゃったじゃない。」先輩。
「だけどですね。さ、いくよ。^^」かもめちゃん。
「(( ̄^ ̄ )ゞラジャ」おともだち。

完成した焼きそばは、もやしでかさが増えているのだった。
ボリューム感、満点。^^

「しかしこれは伝統の味ではないぞ。」先輩。
「えー。。。^^;」後輩。
「それに、いい? よく考えて。」先輩。
「はい?」後輩。
「リピーター作るのに、ボリューミーで50円もプラスしてどうするの。」先輩。
「うに?」後輩。
「『おいしー☆ もっかい食べたーい☆ だったら、おいしくて安かったあそこだよね。』って。」
「学園祭は1回きりじゃないぞー。」先輩。
「はい。^^;」後輩。
「こういうのを信頼と呼ぶ。どこの会社行っても同じだぞ。」先輩。
「はーい。^^;」後輩。
「下方修正入りまーす。^^;」かもめちゃん。

さすがは先輩。心得たものである。
目先の利益に振り回されていると、顧客の信頼という大切なものを失ってしまうことを教えたのだった。

「というわけで。」先輩。
「はい。」後輩。
「さっきのは、賄いということで。」先輩。
「(o_ _)oコケッ⌒☆」後輩。
「賄いは無料である。技を競って作るべし。^^」先輩。
「はーい。^^;」後輩。

勝負は、朝から始まっているかと思えば。
かもめたちは、夕方のラッシュ要員となった。

「それまで遊べる♪」かもめちゃん。

図書館の前に、リングがあった。

「なにこれー?^^; プロレス部? そんなんあったんだ。」かもめちゃん。

解説者が絶叫している。
ひとりだけ、臥体のいいのがいた。
あとは、モスキート級。
ばちんばちんいってる。^^;

「死んじゃうよー。^^; ガチンコは見たくないって。」かもめちゃん。
「でもなんか、恰好いいよね。」おともだち。
「それは認める。」かもめちゃん。
「いけー!!」ふたり。

少林寺拳法部が、べっこう飴を売っていた。

「少林寺? がなんでべっこう飴?」かもめちゃん。
「さて?」販売員のおにいさん。
「先祖代々からそうなんです。」おにいさん。
「(* ̄m ̄) ププッ」かもめちゃん。

おお。ビール発見。

「ここのがいちばん安いって聞いたから。」かもめちゃん。
「ありがとー♪」おにいさん。
「2本くださーい。」かもめちゃん。
「あいよっ。」おにいさん。

ビールも持ったし。おつまみは・・・。

「そうだ! 春菜の焼き鳥食べよう。^^」かもめちゃん。

(・ω・。)キョロキョロ(。・ω・)

「どこだー?^^; わかんないよー。」かもめちゃん。

どこでやってるか伝え忘れた春菜ちゃん。

「もー。。。しょうがないなぁ。w」かもめちゃん。

携帯で居場所をつきとめて、結構近所だったことが判明。

「おいしーい!」かもめちゃん。
「でしょでしょ?」春菜ちゃん。
「これ、差し入れね。」かもめちゃん。
「ありがとー。^^ ビールだぁ。」春菜ちゃん。

早速酔いの回るふたり。

「ぜんぶで、ごほーん!」春菜ちゃん。
「後ろに隠してる指は、2本。」春菜ちゃん。
「なんでわかるのー!?^^;」みんな。

ここで読者のみなさんは、春菜ちゃんの酒癖を思い出されたし。^^;

あちゃー。^^;

「ねねね。私ってね。」春菜ちゃん。
「うんうん?」みんな。
「酔っ払うと、エスパーになるのらー。^^」春菜ちゃん。
「げげっ。w」みんな。

初めて知った春菜ちゃんの隠れた能力。

「わかった。じゃ、今日の夕方の天気を教えたまえ。」おともだち。
「うーん? そうね。お星様が見えてるから、晴れだね。」春菜ちゃん。

工工工工エエエエエエエエェェェェェェΣ(・ω・ノ)ノェェエエエエ工

「こ、この子は・・・。」ビビるかもめちゃん。
「見えるんだー。。。」みんな。

「よっしゃ、んじゃ、俺のパンツの色当ててみ。」男子。
「どれどれ?」春菜ちゃん。
「赤と青のチェックー♪ それね、実家のお母さんが送ってくれたやつ。」春菜ちゃん。

ムンクの叫び状態の男子。

「ひっく。お酒追加でお願いしまーす。」春菜ちゃん。

「この子、酔わせといて占いの館やったほうがお客さん呼べたんじゃない?」おともだち。
「来季は、それでいくか?」仲間うち。

あちこちで提灯のようにぶら下がっている電球。
人影が、テントの中で大きくなったり小さくなったり。

お祭りだねぇ。^^

楽しい想い出になりますように。

「こら作者ぁ。^^;」春菜ちゃん。

「(/||| ̄▽)/ ゲゲッ」僕。

「いっぱい売れるんだから、早く出版すること!」春菜ちゃん。

はぁーい。^^;

episode 3

シェルシュでかもめは肩を叩かれた。

どきっとするかもめ。

振り返ると。

「なんだ、春菜か。w」かもめちゃん。

「なんだって何よー。プンプン。」春菜ちゃん。

「どした?」かもめちゃん。

「あのねー。最近さぁ。」春菜ちゃん。「隣、いい?」

「もちろん。」かもめちゃん。

「学校、飽きちゃって。」春菜ちゃん。

「えー。」かもめちゃん。

「Wスクールやろっかな。」春菜ちゃん。

「Wスクール?」かもめちゃん。

「なんかやりたいの。」春菜ちゃん。

「MBAとかなんか?」かもめちゃん。

「それはかもめ。w 経営は。」春菜ちゃん。

「お料理はできるようになってきたから。」春菜ちゃん。

「なんかね、始めたいんだ。」春菜ちゃん。

「えらい、春菜。^^ 公認会計士ならなれるよ。独立できるの。」かもめちゃん。

「んー。パス。」春菜ちゃん。

「(o__ __)oコケッ⌒☆」かもめちゃん。

「海をまたぐお仕事したい。おにいちゃんみたいに。」春菜ちゃん。

「それはもしかして。」かもめちゃん。

「(ΦωΦ)ふふふ 」春菜ちゃん。

「貿易だったり、ジャーナリストだったり、お空の仕事とか?」かもめちゃん。

「ビンゴ!」春菜ちゃん。

「どれ?^^;」かもめちゃん。

「スチュワーデスさんになりたいのだ。^^」春菜ちゃん。

「+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆ 似合う似合う。」かもめちゃん。

「えー。右手に見えますのが・・・。」春菜ちゃん。

「それちがうぞ。w」かもめちゃん。

「いろんな国に行ってみたい。おにいちゃんより、はるかにたくさんの。」春菜ちゃん。

「そして?」かもめちゃん。

「そして?^^; んー。お嫁さんになるのだ。」春菜ちゃん。

「もしかして、海外在住とか?^^」かもめちゃん。

「((-ω-。)(。-ω-))フルフル」春菜ちゃん。

「お米の国じゃなくちゃやだ。^^」春菜ちゃん。

「でも。」かもめちゃん。

「国際線のスッチーになるには、相当な鍛錬が必要だよ?」かもめちゃん。

「そこをなんとか。^^;」春菜ちゃん。

「ぶー。w」かもめちゃん。

「元々港町を選んだのって、海外のためだったし。」春菜ちゃん。

「でね。英語好きでしょー?^^ これも練習だったの。」春菜ちゃん。

「そっかー。」かもめちゃん。

かもめは、山手のお嬢様育ちであったため、横浜から出ようなどとは一度たりとも思ったことがなかった。

そうねー。

いろんな世界があるもんね。

「おにいちゃん?」春菜ちゃん。

「電話きたよー!」おにいちゃん。

「お金あるの?」春菜ちゃん。

「当たって砕けろだ!」おにいちゃん。

「砕けるんだ。w」春菜ちゃん。

バーストしたおにいちゃん。w

海外の渡英資金は、なぜか連荘したパチンコの勝ち金だけだった。w

そして、そのあと、カジノ。^^;

よく生きてこれたねぇ。w

「でもね、春菜。」かもめちゃん。

「無理しちゃダメだよ?」かもめちゃん。

「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん ありがとう。^^」

「かもめには当座のところ、まだ将来の夢とかないんだ。」かもめちゃん。

「今できることに精一杯。後悔しない人生を。」かもめちゃん。

「わー。一緒ー♪」春菜ちゃん。

「そのときそのときを精一杯一緒懸命に頑張って生きてたら。」かもめちゃん。

「あとで後悔する余地なしだよね。^^」春菜ちゃん。

「それそれー!^^」春菜ちゃん。

「あのね、地元の予備校に。」春菜ちゃん。

「『悔いる余地なき青春であれ。』『努力は実る!』って書いてるの。」春菜ちゃん。

「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん?」かもめちゃん。

「そしたらね。おにいちゃんが。」かもめちゃん。

「『努力は実る。しかし、無駄な努力は実らない。』って言ってた。^^;」

「向き不向き以前の問題として。」おにいちゃん。

「眠らなくちゃ集中できるわけない。」おにいちゃん。

「そうねー。(* ̄m ̄) ププッ」かもめちゃん。

「なんぼ眠い目をこすって勉強してもね。涙ぐましい努力だけどね。」おにいちゃん。

「やってることはアホだぞ。」おにいちゃん。

「ひどーい。^^;」春菜ちゃん。

「よく考えてみよう。」おにいちゃん。

「授業中に眠ってて、どうやって復習するのか。」おにいちゃん。

「睡眠不足は天敵ぞなもし。」おにいちゃん。

「だから春菜。宵っ張りはやめて、眠りなさい。」おにいちゃん。

「えー!^^;」春菜ちゃん。

「あなたはだんだん、眠くなる・・・。(o_ _)oハ゜タッ ...zzzZZZ」おにいちゃん。

「こらー!寝るなー。^^;」春菜ちゃん。

「おにいちゃんは、あっちの部屋!」春菜ちゃん。

中間、期末で授業をそっちのけにするなかれ。

「おっけー。」春菜ちゃん。

というわけで。

「で?^^」春菜ちゃん。

どうやったらスッチーになれるんだろうね。^^

おにいちゃんは、しらない。

いっぱいいろんな下調べが必要なのだ。

夢に向かって羽ばたくとき、いろんな障壁が出てくるかもだからね。

言葉の壁とか、ガラスの天井とか。

「うーん?」春菜ちゃん。

Σ( ̄ω ̄ノ)ノハッ!!

くふくふ。^^

にやついている春菜ちゃん。

現地採用って手もあるのか。^^

episode 4

スッチーを目指している春菜ちゃん。

ルフトハンザが相当お気に召したらしい。

「今度どこ行こっかなー。^^」春菜ちゃん。

「Σ( ̄ω ̄ノ)ノハッ!! アメリカ未踏だ。」春菜ちゃん。

(・・。)ん? 電話の予感。

じーこ。じーこ。じーこ。

プルルルルルル。

「がちゃっ。春菜ちゃんです。」春菜ちゃん。

「春菜ー? 元気?^^」おにいちゃん。

「わー。この前はありがとう♪」春菜ちゃん。

「コート、ありがとうね。」おにいちゃん。

「で?^^」春菜ちゃん。

「胸騒ぎがしてね。^^;」おにいちゃん。

「春菜、どっか別の国に行こうとしてない?^^;」おにいちゃん。

やたらと勘の鋭い兄妹。

「ぎくっ。^^; 読心術でもやってるのか、おにいちゃん?^^;」春菜ちゃん。

「独身だけど、それはやってない。」おにいちゃん。

「お金、充分気を付けるんだぞ。カードはできる限りなしで。」おにいちゃん。

「はーい。でもなんで?」春菜ちゃん。

「さっきね、春菜がお財布落とす夢見た。^^;」おにいちゃん。

「ちょっとー! それはなしだよー。」春菜ちゃん。

「夢のお告げってこともあるから。」おにいちゃん。

「トラベラーズチェックにしなさい。裏書きしなければ大丈夫なんだから。」おにいちゃん。

「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん そーするー。」春菜ちゃん。

「まて春菜。w」おにいちゃん。

「何を忘れちゃいけないんだっけ?」おにいちゃん。

「んとね。財布落としちゃいそうだから、カードは持たずに、トラベラーズチェックにすること。」春菜ちゃん。

「よくできました。^^」おにいちゃん。

「鞄も気を付けられたし。」おにいちゃん。

「(( ̄^ ̄ )ゞラジャ ってか。」春菜ちゃん。

「(・・。)ん?」おにいちゃん。

「どこで落としてた?」春菜ちゃん。

「アメリカかスペインだと思う。」おにいちゃん。

「ぐげっ。w」春菜ちゃん。

「すごい勘だよね。相変わらずだね。^^」春菜ちゃん。

「お金あるかい?」おにいちゃん。

「また勝ったのー!?」春菜ちゃん。

「メロンちゃん3つ。くふくふ。^^」おにいちゃん。

「£3,000ポンドもー!?」春菜ちゃん。

「困ったときは、イギリスに来なさい。」おにいちゃん。

「はーい。^^ あと何かある?」春菜ちゃん。

「父さんと母さんに・・・。」おにいちゃん。

「(( ̄^ ̄ )ゞラジャ わかった。」春菜ちゃん。

「ちょっと待って。」おにいちゃん。

「んじゃーねぇ。」春菜ちゃん。

「おーい。」おにいちゃん。

プチッ。

(・・。)ん?

なんかあるのかな。「よろしくね。」だよね。「よろしく。」

ふむふむ。

電話の向こうのおにいちゃん。

「また切っちゃったよー。。。^^;」おにいちゃん。

「まいっか。寝よっと。」おにいちゃん。

「酒酒酒ー♪」おにいちゃん。

というわけで。

春菜のアメリカ行きが確定した。^^

どっち側なんだろう。

「春菜ー?」かもめちゃん。

「留学するってホント? 寂しくなるよぅ。」かもめちゃん。

「(・・*))((*・・)んーん ホームステイ。」春菜ちゃん。

「ホームステイかぁ。^^ なーんだ。てっきりいなくなるのかと。」かもめちゃん。

「夏から5週間。^^v シアトルなのだ。」春菜ちゃん。

「憧れの西海岸!^^ いいなぁぁ。」かもめちゃん。

「英語ばっちり使えるようにしてくる。」春菜ちゃん、宣言。^^

「もう大丈夫でしょー?」かもめちゃん。

「ううん。この前、立ち読みしてたら、即単のBasicで打ちのめされた。^^;」春菜ちゃん。

「しらないのがあったんだよぅ。」春菜ちゃん。

「そーなんだ。^^;」かもめちゃん。

「やるからには、攻めなくちゃ。^^」春菜ちゃん。

「そして。」春菜ちゃん。

「おいしいロブスター食べてくる。^^」春菜ちゃん。

「いいなぁー☆」かもめちゃん。

「でね。おにいちゃんが見た夢によると。」春菜ちゃん。

「私がお財布落としそうになっちゃうんだって。」春菜ちゃん。

話が微妙に違うぞ、春菜ちゃん。^^;

「気を付けてね☆」かもめちゃん。

「チェーンつけてくから大丈夫。^^ ベルトに。」春菜ちゃん。

「で、出発はいつ?」かもめちゃん。

「7月くらい。もうすぐなのだ。」春菜ちゃん。

「(( ̄^ ̄ )ゞラジャ 頑張ってこられたし。^^」かもめちゃん。

「はーい。^^ 行ってくるね☆」春菜ちゃん。

かくして米国入りを果たした春菜ちゃん。

道路の広さに感動する。

「アメ車ってなんだっけ?」

(o_ _)oコケッ⌒☆

おいおい。

「通れるくらい広いよねー。」

カタカナで覚えてるとぴんとこない春菜ちゃん。

アメリカ車だから、アメ車だよー!

ホストファミリーの顔はわからない。

すると。

Welcome to Seattle!! Haruna!⇒

こんな標識に出くわした。

「(・・。)ん?」

矢印の先をたどってみると、もうひとつ看板が。

Turn around, and you’ll see us in the car!

+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆

“Nice to meet you!”

“Nice to meet you, Haruna!”

ホストファミリーの娘、Jonathanがそこにいた。

episode 5

どうしよう。w

え。いや、作者の話である。

英語で書くべきか。それとも日本語でいくか。^^;

みんなに読んでもらうために、日本語にすることにした。

「春菜、おなかすいてない?」ジョナサン。

「うーん。どっちでもない。」春菜ちゃん。

「どっちよー!」ジョナサン。

「おなかすいてる? って訊かれたら、YesかNoなの。」ジョナサン。

「んー。じゃ、Yes。^^」

車は、港に向かっていた。

「ここね、おいしい海産物で有名なの。」ジョナサン。

+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆

「何食べる?」ジョナサン。

「ロブスター!!! って、海老の一種だよね?」春菜ちゃん。

「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん」ジョナサン。

「すごーい。^^」春菜ちゃん。

わずか$15で、ものすごい量。w

食べきれるのか。

食べた瞬間にわかる、磯の香り。

ひえええええ。

「今までの海老さんは何だったのー? って言いたくなる。」春菜ちゃん。

「おいしいでしょ? ふむ。」ジョナサン。

「最高ーーー!」春菜ちゃん。

「ねね、日本って、お魚全部お寿司で食べるの?」ジョナサン。

「(・・*))((*・・)んーん お刺身とかある。Sashimi. Do you understand?」春菜ちゃん。

「要はね、お寿司のネタだけをお醤油とわさびで食べるの。」春菜ちゃん。

「Oh, I see.」ジョナサン。

あれ? 混ざってきた。w

あとは、煮魚とか焼き魚ね。

ジョナサンは、シアトルっ子だった。

セーフコ・フィールド(マリナーズスタジアム)に行ってみたい。^^

野球。

「春菜、好きなチームとかある?」ジョナサン。

「カープ♪」春菜ちゃん。

「カープ? なにそれ。」ジョナサン。

日本野球のことでないことに今更のように気づく。

「よかったら、マリナーズ応援して。^^」ジョナサン。

「もちろんー!」春菜ちゃん。

カキーン!

ウォー (丿 ̄ο ̄)丿

走ってる。(当然だろ。w)

みんなで、球場と一体感。^^

楽しい。^^

イチローはもういないけど。

観たかったな。

レーザービーム、しゅーっ。

サードまでお手の物なのだ。

神業だよね、あれ。

春菜は、白と青のコントラストに酔っていた。

日本でいうと、大洋ホエールズ?

いや。横浜ベイスターズ。

「横浜ベイスターズ・・・。」春菜ちゃん。

「( ノΩ`)シクシク…」春菜ちゃん。

「どうしたの、春菜?」ジョナサン。

「古傷が。。。」春菜ちゃん。

「完封はないだろぉ。」春菜ちゃん。

しかし。

こっちのホームゲームは、大量得点だった。

7-2。シアトルマリナーズの勝利だった。

「楽しかった?」ジョナサン。

「それはもう。ポップコーンもおいしかったし。」春菜ちゃん。

(*・▽・)*。_。)*・▽・)*。_。)ゥンゥン

ジョナサンは、車のキーをイグニッションにかけた。

きゅるきゅるきゅるきゅる。ぶおーん。

一回、間を置いてからエンジンがかかる。

「これね、パパの愛車なの。」ジョナサン。

「ほうほう。」春菜ちゃん。

「新婚旅行のときに買ったんだって。」ジョナサン。

「そなんだー。^^ 愛着あるのね。」春菜ちゃん。

「(*・▽・)*。_。)*・▽・)*。_。)ゥンゥン」ジョナサン。

「新車にしようよ、って言ってるのに。」ジョナサン。

「『まだまだ走る!』って。」ジョナサン。

「せめて私の乗るやつだけ買ってくれてもいいのにね。」ジョナサン。

「そーね。^^」春菜ちゃん。

借りてきた猫の春菜ちゃん。

おうちへ急ぐ。

シアトルの、何て街かはナイショである。

でっかい二車線。

左ハンドル。

家の前に車停めても、でっかいスペース。

+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆

広-い。^^

なんか、スケールがでっかいんですけど。w

作者も思い出すことがある。

「こっちでハンバーガー頼むとね。」先輩。

「『ケチャップいる?』とかって訊かれるでしょ?」先輩。

「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん」僕。

「わしづかみよ、わしづかみ。」先輩。

どかーんと来た想い出がある。w

大ざっぱで、愛情に溢れた国。

それが、アメリカなのだった。

春菜は、すっかり打ちのめされていた。

胃袋のサイズがこっちでアジャストされちゃ困るよぅ。^^;

「でも、まだ入る。^^」春菜ちゃん。

ジョナサンは、どちらかというと細身だった。

きっと、同じものをオーダーしてれば大丈夫、大丈夫。^^;

帰ると、ホストファミリーが出迎えてくれた。

玄関のアプローチに着くと。

香りからするに、今夜の夕食はやはりステーキだった。

ウォー (丿 ̄ο ̄)丿

おにいちゃんなら飛び上がって喜んだだろう。

今日もカジノでサンドイッチ食べてるのかな。

春菜ちゃん、ステーキの巻。

“Hi! I’m Haruna, from Japan.” 春菜ちゃん。

“Hi, welcome to our town.” パパさん。

“Come in. Don’t take off your shoes here.” パパさん。

「ふに? いーの?」ジョナサンを見る春菜ちゃん。

「It’s Okay. いいんだよ、脱がなくて。」ジョナサン。

「えー。」春菜ちゃん。

そういえば靴下だったおにいちゃん。

あれは日本風だったのか。

カルチャーショックが大きいね。そーね。^^

でっかい大地に、夕陽が架かろうとしていた。

でっかいおうち。

さぞかしリッチなのに違いない。

日本のおうち、窓開けたらすぐ隣。w

窓の向こうの景色を、一生焼き付けておこうと誓った春菜なのだった。

episode 6

事件はお部屋に戻ったときに起きた。

「あれ!」真っ青になる春菜ちゃん。

チェーンついてたはずのお財布がない。^^;

「どうしたの?」ジョナサン。

「んーんーんー。」うまく言葉の出てこない春菜ちゃん。

心配かけたくないのと、パニくってるのと。

「お財布、落としちゃったみたい。。。」春菜ちゃん。

「えー!」ジョナサン。

「てか、どこでー?^^」ジョナサン。

「よく考えようよ、春菜。」ジョナサン。

「今日一日、車でしか移動してないよ?」ジョナサン。

「だから、あるとしたら車の中だよ。」ジョナサン。

「あるかなぁ。。。」春菜ちゃん。

この子は記憶をよく飛ばす子なので。w

「どうしよぉー。。。(涙)」春菜ちゃん。

じーこ、じーこ、じーこ。

ぷるるるる。

結局、なかった。

「もしもーし? おにいちゃん?」春菜ちゃん。

「はーい。^^;」おにいちゃん。

「もしかして、やっぱり?」おにいちゃん。

「ごめーん!(涙)」春菜ちゃん。

「泣くでない。」おにいちゃん。

「チェーンつけてたのにね、なくなってた。」春菜ちゃん。

「ずがーん。^^;」おにいちゃん。

「こういうこともあろうかと。」おにいちゃん。

「え?」

「思ってたんだよなぁ。」おにいちゃん。

「しゅーん。」春菜ちゃん。

「ホストファミリーには、ちゃんと振り込んでるの? お金。」おにいちゃん。

「それはあるの。」春菜ちゃん。

「お小遣いがぁーーー!」春菜ちゃん。

「しくしく、なのね。」おにいちゃん。

「よしわかった。」おにいちゃん。

「ん?(涙目)」春菜ちゃん。

「明日から、働きなさい。w」おにいちゃん。

「え。」春菜ちゃん。

「なんでもできるもんだよ。^^」おにいちゃん。

「そんなぁー。」春菜ちゃん。

「ベビーシッターとかさ。春菜、赤ちゃん好きでしょ?」おにいちゃん。

「日本語教えます。とかさ。」おにいちゃん。

そういう手もあるのだ。

あとは、近所の新聞社なり広告店なりに行けばよろしい。

というわけで。

春菜は、さっそく新聞社を訪れに行くつもりでいた。

しかし。

最近、やたらと羽振りのいいおにいちゃん。

「2000ポンドもあればいいかな?」おにいちゃん。

えええええ。^^

「今、振り込んどくね。」おにいちゃん。

「口座でいいよね。」おにいちゃん。

「うん。^^ ん?」春菜ちゃん。

「だからそのカードがお財布の中ー!」春菜ちゃん。

「あらーん。^^;」おにいちゃん。

「ということは。」春菜ちゃん。

「明日から、バイトか。」ふたり。

「はぁー。。。」春菜ちゃん。

「これこれ、めげるな。」おにいちゃん。

「たくましく育つんだよ。」おにいちゃん。

「はぁーい。」春菜ちゃん。

プチッ。

ここでおにいちゃんは、ひとつ動くことになる。

春菜ちゃんを救うわけではない。w

「父さんも母さんも、元気にしてるかな?」おにいちゃん。

ん? 電話?

ノンノン。

一時帰国なのだった。

「父さんと母さんに。もうすぐ帰るって伝えといて。」おにいちゃん。

って言いたかったのね。w

そして降り立った成田空港。

「ひゅー。」おにいちゃん。

「煙草ぉ。どこだぁ?」おにいちゃん。

「セヴンスター、ひとつください。」

横文字と日本語が混ざりそうになる。

いかんいかん。嫌われる、嫌われる。w

どうしようかな。

とりあえず、横浜あたりで一泊? でも春菜いないしな。

福岡国際空港ですな。

きゅいーん。

お土産も持ってるし。

背広の胸ポケットには、すごい入ってるし。

なぜかズボンのポケットに黒い£25玉。(カジノのね。^^;)

プチリッチになって凱旋帰国なのだ。

「ぴん、ぽーん。」おにいちゃん。

「おおおおお。」誰かと思えば。

「あれ? 母さんは?」おにいちゃん。

「いまお風呂。」パパ。

「ただいまぁー。」おにいちゃん。

「よく帰ったね。」パパ。

「おーい! ママー? お兄ちゃん帰ってきたぞ。」パパ。

「えええええー!」どこどこ?

「慌てるなかれ。」パパ。

「もぉー、入れ違いなんだから。。。」ママ。

「この前、春菜が帰ってきたばかり。」パパ。

「あちゃー。w」おにいちゃん。

「4人で揃いたかったねぇ。」おにいちゃん。

「ほんとに。」ふたり。

「ま、お茶でも。^^」ママ。

「うん。ありがと。」おにいちゃん。

「ずいぶん羽振りがいいんだって?」パパ。

軽く吹くおにいちゃん。

「なんでわかったの?」おにいちゃん。

「だってそれ、英国製。」パパ。

「見てわかるんだ。」おにいちゃん。

「これね、春菜に買ってもらったんだ。」おにいちゃん。

「そうなのかー。いいねぇ。」パパ。

「土産話は、たっぷりと。」おにいちゃん。

「うんうん。」パパ。

じーちゃんの仏壇にお線香をあげる。

「帰ったぞー。じーちゃん。」おにいちゃん。

「おおおおお。」じーちゃん。

「2本あげるね。」おにいちゃん。

「あとでビールあげるからね。」おにいちゃん。

「うんうん。」おじいちゃん。

さてと。

風呂ですな。w

春菜、大丈夫かな。

夜空を見上げにベランダに立つ。

先客は、パパだった。

「あれ? 煙草?」おにいちゃん。

「ぴんぽーん。ねね、洋モクとかある?」パパ。

「マルボロしか持ってない。」おにいちゃん。

「あ。セブンスター買ってきたんだった。」おにいちゃん。

「ごめんね。お土産は、紅茶なんだ。」おにいちゃん。

「そっか。いいよ。^^」パパ。

「どっかで、春菜もおんなじお星様見てるんかな。」パパ。

「そーねぇ。しっかり働いてる頃かも?」おにいちゃん。

「・・・・・・。」ふたり。

ぷはー。

episode 7

春菜は途方に暮れていた。

見知らぬ土地で財布を失くしたのだ。当然である。

「ジョナサーン? どうしよう。」春菜ちゃん。

「ぴぴん♪」ジョナサン。

「ちょっと待ってて、春菜。」ジョナサン。「名案が。^^」

階下へ降りてゆくジョナサン。

なんだ?

すると。

ホストファミリーが、満面の笑みで登ってきた。

「春菜ちゃん、お料理できる?」ジョナサンパパ。

「日本食とか。」

“Yes, yes, yes!” 勘のいい春菜ちゃん。

「よかったら、うちで専業主婦みたくしてアルバイトしない?」ジョナサンパパ。

「日本食って作ったことないのよね。教えてくださる?」ジョナサンママ。

「わーい。^^」春菜ちゃん。

よかったねぇ。

かくして、春菜は、ジョナサンの家の家事炊事全般を任されたのだった。

さっそく、明日から。

買い出しだぁ!

「んーと? 生魚はダメ。生卵もダメ。了解。^^」春菜ちゃん。

いそいそ。

春菜が用意したのは、焼き魚だった。

大根もちゃんと日本食のお店に置いてある。

「なんだこれ。春菜。」ジョナサン。

「これはねー。大根おろし。ground radishね。お醤油かけていただくの。」春菜ちゃん。

お味噌汁も昆布からしっかりとだしを取る。

(・・。)ん?

grind-ground-groundよ。地面じゃない。

p.p.ね。

ぱんぱかぱーん♪

朝ごはんたっぷり。^^

「すごーい、春菜! これ全部ひとりで作ったの?」ホストファミリー。

「うん♪」春菜ちゃん。

「それでは、さっそく。」春菜ちゃん。

「いただきまーす。」春菜ちゃん。

あれ?

声が揃わなかった。w

「ねね、ジョナサン。」春菜ちゃん。

「ごはん食べる前に何も言わないの?」春菜ちゃん。

「(・・。)ん? お祈りとかしたかった?」ジョナサン。

「あ。お祈りなのね。ほー。」春菜ちゃん。

「日本ではどうするの?」ジョナサン。

「『いただきます。』ってね。ごはんさんに感謝していただくのだ。」春菜ちゃん。

「そうすると。」春菜ちゃん。

「ふむふむ。」ジョナサン。

「美味しくいただけるんだよ。^^ 鯖さん、ありがとう。」春菜ちゃん。

「え! お魚さんに感謝するんだー!」ジョナサン。

「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん」春菜ちゃん。

「まず、何にも言わずに食べてみて。」春菜ちゃん。

「うん。」ジョナサン。

「美味しい!!」ジョナサン。

「でしょでしょ? んじゃ、今度は、”Thank you, Mr.fish.”って。」春菜ちゃん。

「お味が変わった-! すごいすごい。^^」ジョナサン。

そーなのよ。

お魚さんが本気出してくれるから、一気にごはんが美味しくなるのだ。

「ジョナサン、春菜にお料理教わりなさい。」パパ。

「うん! 超おいしいー。^^」ジョナサン。

「それから。」パパ。

「(・・。)ん?」みんな。

「ママもね。^^;」パパ。

「あはははは。」みんな。

ウィンクするママ。

肩の力が一気に抜けた春菜ちゃん。

楽しい。^^

来てよかったねぇ。

そのころ、日本のおうちでは。

「父さん、これ、なんだかわかる?」おにいちゃん。

「なんだこれ。はて?」春菜ちゃんパパ。

「こてっちゃーん。」おにいちゃん。

「これがどうかしたの?」パパ。

「お土産にと思って。」おにいちゃん。

(o_ _)oコケッ⌒☆

「んなもん、スーパーにあるだろうが。w」パパ。

「あとで飲も。これ焼いて。」おにいちゃん。

「いいねぇ。」パパ。

「するめも買ってきた。」おにいちゃん。

「至れり尽くせりだねぇ。」パパ。

久しぶりの帰郷で、やたらと口数の多いおにいちゃん。

気を遣うなかれ。

おうちで飲むと。

酔っ払った後、こてーって眠れるんだよね。

(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん

ふたりは、おなかを出してこてーっと眠っていた。

そこへママ現る。

「もーぅ。風邪引くわよー!」ママ。

タオルケットを、何も言わずにかけてくれる。

これを当たり前だと思っていた幼少時。

これができる女の子は、ポイント高いんだぞ。^^

優しさ、気配りという言葉がある。

思いやりといってもいい。

これは、環境にもよるかもしれないが、すべては心がけ次第である。

いろんなものに感謝して生きていこう。

そしたらね。

不思議なところから恩恵が降ってくるものなんだよ。

なんでそんなこと知ってるのかって?

そういうものなの。

「おねーちゃーん!」弟くん。

「どしたー?」かもめちゃん。

「ペス、いなくなっちゃった。」弟くん。

「工工工工エエエエエエエエェェェェェェΣ(・ω・ノ)ノェェエエエエ工」かもめちゃん。

首輪が外れている。

パニック、パニック。

かもめの家では、別の一悶着が起ころうとしていた。

episode 8

ペスがいない。

かもめは、少し青くなって、弟くんと一緒に近所を探して回っていた。

「いた?」弟くん。

「いないよー。」かもめちゃん。

そのころ、ペスは。

「久しぶりのお出かけなんだワン。」ペス。

「今日は予防接種の日だからね。ちびっとちくっとするけど、泣いちゃダメだぞ。」かもめちゃんパパ。

車に載っけて、首を出すペス。

しっぽを元気に左右に振っている。

ききーっ。

「危ないなぁ。轢いちゃうかと思った。」かもめちゃんパパ。

一匹のワンちゃんが歩いていた。

「危ないんだワン。」ペス。

「こらこら。よそ見しちゃダメだぞー。」かもめちゃんパパ。

「気をつけるんだワン。」ペス。

きゅーん。

そのときだった。ペスが恋に落ちたのは。^^

「かわゆいんだワン。」ペス。

いつものコンビニの近く。

かもめちゃんパパは、ペスが思わず車内でマーキングしそうになって焦っていた。

何も知らないかもめちゃん。

お風呂に入れてあげたあと、身体を拭いてあげて、定位置についていたと思っていたのに。

「もー。どこ行っちゃったんだよー。」かもめちゃん。

「晩ご飯までには帰ってきてー。てか。心配だよー。」かもめちゃん。

ペスは獣医さんのところで、きわめておりこうさんだった。

「痛くないんだワン。」ペス。

「よしよし、おりこうさん。はい、もうおっけーですよー。」獣医さん。

「娘がちいさい頃から一緒に育ててるんですけど、まだ大丈夫ですかね。」かもめちゃんパパ。

「うんうん。この調子だと、あと10年は生きるよ。」獣医さん。

「そうですか。安心しました。」かもめちゃんパパ。

「よし、じゃ、帰るぞ、ペス。」かもめちゃんパパ。

「どうもありがとうございました。失礼します。」かもめちゃんパパ。

「お大事にー。」獣医さん。

ペスがやたらときゅーんきゅーん言ってる。

どうやら、首輪が嫌らしいということだけはわかる。

かもめちゃんパパは、首輪をつけずに連れて帰ることにした。

「恋は瞬発力なんだワン。」ペス。

「さ、着いたぞー。」かもめちゃんパパ。

車のドアを開けるやいなや、ダッシュするペス。

「えっ。」かもめちゃんパパ。

気がついたときには、ペスはもう見えなくなっていた。

パニックのおうち。^^;

かもめはただ不安でいっぱいだったが、ママは悲嘆に暮れていた。

パパは狼狽していた。

弟くんは、まだうろうろしていた。

「でね。車のドア開けたとたんにダッシュして行っちゃったんだよ。」パパ。

「あなたが首輪忘れたからじゃない。( ノΩ`)シクシク…」ママ。

「大丈夫、戻ってくるよ。おなかすいたら大変なんだし。」かもめちゃん。

「そうかしら・・・。(涙)」ママ。

「もっかい行ってくる。」かもめ。

「よく探してきてね。」ふたり。

「はーい。」かもめ。

2時間経っても、かもめと弟くんはペスを発見できずにいた。

うろうろ。

携帯が鳴る。

「もしもし? あ。パパ? えーっ!?」かもめ。

「うんわかった。んじゃ、今から帰るね。」かもめ。

「戻ってきたの?」弟くん。

「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん キミには、細かいことはナイショ。^^」

「なんでー。」弟くん。

「でも帰ってきたんでしょ?」弟くん。「わーい。^^」

玄関を開けると、犬の数が増えていた。^^

「おかえりー。^^ ペス、戻ってきたわよ。」ママ。

「予防接種の行きがけに見た犬なんだけど、この子もかわいいだろ?」パパ。

「わー。」ふたり。

「居候するんだワン。」ペス。

「はじめまして。よろしくお願いします♪」ペスの彼女。

「おなかすいてるかな。」かもめちゃん。

すごい勢いでごはんにありつく彼女。

おそらく、身寄りがないんだろう。

「でね。」ママ。

「この子も飼うことにしたんだ。」パパ。

「わーい。わーい。^^」はしゃぐふたり。

「命名権は、私!」かもめちゃん。

「だめー。僕がつける!」弟くん。

「んじゃ、ふたりで考えよっか?」かもめちゃん。

「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん」弟くん。

あかね色の空。陽が落ちようとしていた。

何にせよ、戻ってきてよかった。^^

かもめは、ほっと胸をなで下ろすのであった。

episode 9

「ねー、春菜ー?」ジョナサン。

「なーに?」春菜ちゃん。

「いいとこ連れてったげる。ドライブしよ?」ジョナサン。

「えー。夜だよ-!」春菜ちゃん。

「だからこそ。」ジョナサン。

車のキーをイグニッションにかける。

きゅるきゅるきゅるきゅる。

(「・・)ン?

ぶおーん。

かかった。^^;

「一瞬、間が空くよね、これね。^^;」春菜ちゃん。

「うんうん。いくぞー☆」ジョナサン。

ふたりが向かった先は、シアトルタワーだった。

「これを上まで行くとね。」ジョナサン。

「ふえーん。なんで目隠しー?」春菜ちゃん。

「着いたよ。はずしてもOK♪」ジョナサン。

パノラマのように広がる夜景。

地上にお星様がたくさんきらきら輝いている。

「すごーい!」春菜ちゃん。

「ここは夜景のスポットなのだ。」ジョナサン。

「超きれーい☆」春菜ちゃん。

「わーい。^^」春菜ちゃん。

うっとりと見惚れてしまう。

春菜は、高台に住んだことがなかったため、日本でも夜景らしい夜景とはご縁がなかった。

いきなりの洗礼である。

「こんなとこでお酒飲みたい。^^」春菜ちゃん。

「捕まっちゃうよぉ。」ジョナサン。

「21歳になるまでは飲めないって知ってるか?」ジョナサン。

「えっ。そうなんだ。^^;」春菜ちゃん。

「ところ変われば、だねぇ。イギリスでは、18歳のお誕生日から飲めるってしってた?」春菜ちゃん。

「工工工工エエエエエエエエェェェェェェΣ(・ω・ノ)ノェェエエエエ工 そうなの?」ジョナサン。

「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん」春菜ちゃん。

「んで、日本は?」ジョナサン。

「Σ( ̄ω ̄ノ)ノぎくっ。・・・20歳から。」春菜ちゃん。

「じゃ、駄目じゃーん。」ジョナサン。

「法に触れることしちゃダメ。春菜はいい子なんだから。」ジョナサン。

「じゃないと。」ジョナサン。

「投獄よ、投獄。」ジョナサン。

「ひえー。」春菜ちゃん。

おうちの規制がかなり緩めだったことに気づく春菜。

大学の規制も甘いよね。

そこは暗黙の了解? でもいーのか。

「アメリカではかなりstrictなんだから。」ジョナサン。

「そーなのねー。」春菜ちゃん。

事実上、大学入ったらお酒がほぼ解禁であることを説明する春菜。

納得がいかないジョナサン。

「だったらさぁー?」ジョナサン。

「憲法改正すればいいのに。」ジョナサン。

「+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆ それって名案。」春菜ちゃん。

「もしくは、みんなでイギリスに移住するとか。」ジョナサン。

「それはなし。」春菜ちゃん。

「なんで?」ジョナサン。

「お米ないもん。」春菜ちゃん。

「よっぽどお米が好きなんだね、春菜。」ジョナサン。

「そろそろお米が恋しくなってきた?」ジョナサン。

滞在期間は、残りわずか5日になっていた。

「恋しい。それは事実。でもここも大好きになっちゃった。」春菜ちゃん。

シアトル。春菜の青春の想い出だった。

お財布なくして、主婦業やって、ジョナサンとドライブして。

はっと我に返る春菜。

「忘れてたー。かもめにエアメール送ってなーい。」春菜ちゃん。

「かもめ?」ぴくんとくるジョナサン。

「親友なの。かもめ。超なかよし。」春菜ちゃん。

「そいえば。」春菜ちゃん。

「なんか他人とは思えないんだよなー。かもめとジョナサン。」ジョナサン。

「かもめって、Seagullのことよね? でしょ?」ジョナサン。

“How’d you know?” 春菜ちゃん。

「知らないの? Johnathan Livingston Seagullのこと。」ジョナサン。

「うに? なんだそれ。」春菜ちゃん。

「日本での題名は知らないけど。結構有名な小説よ。」ジョナサン。

「かもめくらい知ってるのだ。」ジョナサン。

小さい頃から図書館で本の虫だったジョナサン。

たいていの有名どころは読破している。そして、日本語もお勉強中なのだった。

Johnathan Livingston Seagullは、邦題で、「かもめのジョナサン」である。

主人公は男の子である。

「えっ。」春菜ちゃん。

「ジョナサンって、男の子の名前なの?」春菜ちゃん。

「私は特別なの。」ジョナサン。

「特別?」春菜ちゃん。

夜景を360°見終わる直前にジョナサンが言って、足を止めた。

「飾らずに生きること。ありのままの自分でいること。」ジョナサン。

「自分で改名したんだから。^^」ジョナサン。

「それに、なんかかっこいいでしょ?」ジョナサン。

「(・・。)ん? 本当の名前は何だったの?」春菜。

「クリスティ。」ジョナサン。

「かわいい名前だね。」春菜。

「でもジョナサンはジョナサンだよ。^^」春菜。

「これからも、ジョナサンって呼んでいい?」春菜。

「もちろん。私は、ジョナサン。春菜の親友のひとりよ。」ジョナサン。

嬉しくてうるうるくる春菜。

「私は、春菜。ジョナサンの親友のひとり。」春菜ちゃん。

夜景でジョナサンに口説かれた気分の春菜ちゃん。

シアトルの街は、春菜にwelcome modeでいてくれた。

第二の故郷だね。^^

これは。

空港がつらいぞ。^^;

春菜は、ホームシックと帰りたくない気持ちとの間で揺れていた。

でも。

いくら揺られても、あと5日間。

親友、ジョナサンに対して、どれだけ自分が何かしてあげられるかを一緒懸命になって考える春菜なのだった。

episode10

実家でくつろぐおにいちゃん。

部屋の中には、PCのパーツがところ狭しと並んでいた。

「片付けるわよー。」ママ。

「ダメ!」おにいちゃん。

「こんなに散らかしてどうするの!」ママ。

「僕的には、どこに何があるのかはすべて把握してる。」おにいちゃん。

「んじゃ、Windows 7のDVDは?」ママ。

「あそこに積んであるDVDの上から3枚目。」おにいちゃん。

え。

「ほとんど廃墟じゃなーい。」ママ。

「ホントかしら?」ママ。

めくると、ちゃんとそこにはWindows 7のDVDが。^^;

「小さい頃から、神経衰弱は得意だったわよね。」ママ。

「まーね。^^;」おにいちゃん。

「今ね、動画編集の準備してるとこ。」おにいちゃん。

「動画編集? ビデオカメラ持ってるの?」ママ。

「じゃーん。」おにいちゃん。

「+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆ いいやつあるじゃない!」ママ。

「中古でGetしたのだ。^^v 30,000円くらい。」おにいちゃん。

「新品で買ったら、80,000円くらいするよ。」おにいちゃん。

「最近はいいのが出てるわねー。」ママ。

「母さん、今度、父さんと一緒にポーズ決めてみない?」おにいちゃん。

「えー。」ママ。

「何着ようかしら。^^ いいわね♪」ママ。

「春菜にメッセージ残しておこうと思って。」おにいちゃん。

「なにそれ。からくりビデオレターみたいなやつ?」ママ。

「(* ̄m ̄) ププッ まさにそれ。」おにいちゃん。

「おーい、春菜!」ふたり。

くしゅっ。

「何だ? 誰かうわさしてるのかな。」春菜ちゃん。

「うわさしたらくしゃみが出るの?」ジョナサン。

「日本では、そう。」ジョナサン。

「でもここアメリカだよ?」春菜ちゃん。

「そうそう。」ジョナサン。

「春菜、帰りのチケット持ってるの?」ジョナサン。

どきっ。^^; ^^; ^^;

「あ・・・。大丈夫! お財布の中には入ってなかったから。」春菜ちゃん。

「今日がラストだもんね。」ジョナサン。

「寂しくなるよぅ。(涙)」春菜ちゃん。

「ねーねージョナサン?」春菜ちゃん。

「今度、日本に遊びにおいでよー。」春菜ちゃん。

「わ。いいの? 行く行く!」ジョナサン。

「かもめとジョナサンと私で、鎌倉かどっか行こうよ。」春菜ちゃん。

「鎌倉?」ジョナサン。

「うん!」春菜ちゃん。

Σ( ̄ω ̄ノ)ノハッ!!

「いつがいい?」春菜ちゃん。

「もしよかったら、一緒に帰ろ?」春菜ちゃん。

「日帰りできる距離じゃないからねぇ。」ジョナサン。

「ちびっと、考えさせて。気持ちは前向きなんだけど。」ジョナサン。

「でも、行きたい。」ジョナサン。

「鎌倉?」PCに手を伸ばすジョナサン。

「きっと気に入るよ。」春菜ちゃん。

「おいしいお団子屋さんがあるのだ。茶屋があってね。」春菜ちゃん。

「江ノ電乗って、お団子食べて。そして、お参りに行こう。」春菜ちゃん。

「お参りってなーに?」ジョナサン。

「お参り。うーん。」ちびっと悩む春菜ちゃん。

「神社とお寺の違いわかる?」春菜ちゃん。

「shrineとtemple?」ジョナサン。

「よく考えたら、私もしらない。」春菜ちゃん。

あははははは。^^;

「日本文化をわかってるつもりで、なにげに説明がつけられない。」春菜ちゃん。

「こてっちゃんも福岡土産だと思ってたし。」春菜ちゃん。

「意外と、盲点は。」おにいちゃん。

「国内にあるのだ。」おにいちゃん。

「国際線もいいけど、国内のこともっと知らなくちゃダメだよ。」おにいちゃん。

いつか言ってたなぁ。

「童話を書いて世界中の人々に読んでもらうのが夢なんだ。」おにいちゃん。

「σ◎◎¬ ホホゥ!!」春菜ちゃん。

「いいね。^^ そのために部屋がこーなってるわけ?」春菜ちゃん。

「サーバーとサーバーとサーバー。w」春菜ちゃん。

おにいちゃんも夢に向かって歩いてるし。

「私の夢は・・・。」春菜ちゃん。

(・・。)ん?

「ジョナサン、どうしたの?」春菜ちゃん。

「泣いてるのー。すごく久しぶりに寂しい。」ジョナサン。

「帰らないでー、春菜。」ジョナサン。

「延長しようよ。」ジョナサン。

「うちなら大丈夫だよ?」ジョナサン。

でもいつか帰る日が来るわけで。

「また会おうね。」ジョナサン。

「うん、ぜったい。(涙)^^」春菜ちゃん。

ばたん。

きゅるきゅるきゅるきゅる。

・・・・・。

ぶぉーん。

このエンジン音とももうすぐお別れか。

大きな道路。

左車線。

綺麗だった夜景。

でっかいおうち。

ひとつひとつをまぶたの裏に焼きつけながら、涙目で春菜はジョナサンの横顔を眺めていた。

episode11

横浜駅集合。^^

「鎌倉ー♪」春菜ちゃん。

「鎌倉ー♪」かもめちゃん。

「鎌倉ー♪」ジョナサン。

3人は、東海道線に乗って、横浜から藤沢までがたんごとん。

そこから、江ノ電に乗り換えて、がたんごとん。

ホントは横須賀線直通で30分で着くのだが、

江ノ電は、路面電車である。

家屋のかなりぎりぎりのところをすりぬけてゆく。

「あーこの電車見たことあるー。」春菜ちゃん。

「ホント? どこで?」ジョナサン。

「おにいちゃんがね、サザンファンなの。この前聴かせたでしょ? TSUNAMI。」

「うんうん。」ジョナサン。

「あれのね。なんだったっけかな。んー。」春菜ちゃん。

「忘れた。PVになってるのって何だっけ? かもめ。」春菜ちゃん。

「それは、素敵なバーディーだね。」かもめちゃん。

「あの中でギター弾いてるのだ。桑田さんとか。」春菜ちゃん。

「+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆ ここだったか。」ジョナサン。

鎌倉高校前で、感動する。

「ねねね、これって。」かもめちゃん。

「燃焼系アミノ式んとこじゃない?」かもめちゃん。

「女の子がくるくる回るやつ。」かもめちゃん。

「やれって? よっ。」春菜ちゃん。

「無理無理。w」かもめちゃん。

「てかここ電車の中ー。お行儀よくしなさい。」ジョナサン。

「なんか江ノ電って。」春菜ちゃん。

「ちっこい頃みたく、お靴脱いで、窓にしがみついてみたくなんない?」春菜ちゃん。

「わかるわかる。^^ でしょ?」春菜ちゃん。

「あれ?」春菜ちゃん。

「ひとりでしゃべらないこと。」かもめちゃん。

「てかジョナサン、日本語上手だね☆」かもめちゃん。

「相当勉強したよー。」ジョナサン。

「春菜が帰ったあと、めっちゃ寂しくなって。」ジョナサン。

「そして追いかけてきたのだ☆」ジョナサン。

「初の海外? 日本って。」かもめちゃん。

「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん そーだよ。初。^^」ジョナサン。

「日本情緒に触れたい。^^」ジョナサン。

「んじゃ、ぴったりだよ。^^」かもめちゃん。

「いざ、鎌倉。」かもめ。

「いざ☆」春菜&ジョナサン。

なんでも、おにいちゃんは、鎌倉までバイクで来たそうな。

そして、駅前でバイク降りた瞬間に、ブーツでガムを踏んだそうである。

「べったんべったんしてね。」おにいちゃん。

「超ブルーだった。^^;」おにいちゃん。

「駅前で。鳩サブレ買うの忘れないようにね。」おにいちゃん。

「あれは、おいしいから。」

「はーい。^^」春菜ちゃん。

そして江ノ電が鎌倉に到着した。

時計台♪

パシャッ。

鳩サブレ本舗を探す。

おーあるある。

お土産ね、お土産。

春菜とかもめは、観光客にカメラを預けて撮ってもらうターゲットを探していた。

いた。^^

きらん☆

時計台をバックに縦に撮ってもらう。^^

かもめは、銀縁カメラをパパから借りてきていた。

フィルムのやつね、あれね。^^

なんか風情があるのだ。

3人がお手々をつないで写る写真は、これが初めてだった。

パシャッ。

「ありがとうございましたー☆」かもめちゃん。

「さて目指すは。」かもめちゃん。

「お団子ー♪」春菜ちゃん。

茶屋へいそぐ。

あわてる必要ないのに。^^;

結構、この辺は茶屋がある。

お団子発見。^^

みたらし団子である。

3人は、腰かけてお茶をすすった。

「どう? Japanese Green Tea?」春菜ちゃん。

「超おいしーい。お団子、お団子。」ジョナサン。

「なんか似てきてるし。」かもめ。

「そよ風がたまらないね。」春菜ちゃん。

「秋晴れっていいなぁ。」ジョナサン。

鎌倉っていうと。

1192(イイクニ)作ろう、鎌倉幕府、だよね?^^

ところが。

最近の教科書では、1185(イイハコ)作ろう、鎌倉幕府らしい。

エエェェΣヽ(*`・ω・)ノ゙ェェエエ工

源頼朝が征夷大将軍になったのが1192年だったんだって。

幕府そのものはもう少し前にさかのぼるんだとかなんとか。

おにいちゃんは1192で覚えてたぞ。w

テスト中は忘れてたけど。^^;

すごいよね。

もう千年くらい昔の話なのにね。

立派な人がいたもんだ。

春菜は、本当は梅雨の季節に訪れたかった。

そう。鎌倉は、あじさいの名所でもあるのだ。

色とりどりのあじさい。

さぞかし綺麗だろうねぇ。

これ読んでる学生の子。

デートは、今のうちにしておくこと。^^

「ねねね。縁結びの神様っていないのかな。」ジョナサン。

「いるいるー。でも。手近にないかな。はて。」春菜ちゃん。

「江の島は?」春菜ちゃん。

「うーん。w どうなんだろう。この場合。」かもめちゃん。

「カップルで行くんなら、江の島はやめといたほうがいい。」かもめちゃん。

「なんで?」ふたり。

「定説があるのだ。それ以上は言えない。」かもめちゃん。

「でもここ鎌倉。」春菜ちゃん。

「そーよね。八幡宮って書いてるぞ。」春菜ちゃん。

「いけー!」春菜ちゃん。

でーっかい立派な神社があるのだ。

鶴岡八幡宮。

狛犬になぜかお辞儀する3人。境内はど真ん中通っちゃいけないのだ。

神様の通り道だから。

「なにそれ。お賽銭?」ジョナサン。

「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん ちびっとでいいよ。」かもめちゃん。

がらんがらん。

お辞儀。

ぱんぱん。

「春菜の夢がかないますように。」春菜ちゃん。

ぱんぱん。

「日本にいつか住めますように。」ジョナサン。

ぱんぱん。

「パパが昇進しますように。」かもめちゃん。

深く一礼。

「失礼します。」

ちびっと緊張気味。w

「ねー春菜ぁ。」

「ついでにー。」おにいちゃん。(心の声。)

「(( ̄^ ̄ )ゞ了解。」

ぱんぱん。

「かもめが、たくさん売れますように。」3人。

episode12

おにいちゃんが学生の頃。

ソフトボールサークルで、冬の打ち上げのときにね。

「生姜焼き定食800円」ってのを見た子が。

「あのー、この、なましょうがやき定食ください。」って言っててね。

ばかうけ。^^

「ホントに大学受かったんかー!」みたいなね。^^

「なまじゃなくて。」

「生姜って書いてしょうがって読むの!」

それだけでビール2本はいけた。

気の置けない仲間って、必要だよね。^^

どこいくのも、バイクでね。坂が多かったからね。

みんなでバッティングセンター行って。

カキーン☆

みんなでパチンコ打ちに行って。

カキーン☆

「当たったら右打ちやぞー!」

楽しかった。^^

そんな仲間と横浜・鶴見のビール工場に行ったおはなし。

鶴見現地集合で迎えたその日。

おにいちゃんは、そのおしゃれさに圧倒されることになる。

「マサトー? 17:00まで予約でいっぱいやわ。見学しよかー?」

「行く行く。」

みんなで見学。^^

「発酵って、こんな感じでできるんだねー。」

「これなら。」

「家でもできるんじゃない?」

「無理やろ?」

「発酵なら、○○ん家がある。」

「ひえー。^^;」

ギャグの辛辣なおにいちゃん。w

17:00を待って、開園。

おおおおお。

テーブルの上には、琥珀色をしたビールがたくさん。

ソーセージに、カルパッチョに、たくさんのお皿。

ごくっ、ごくっ。ごくっ。

上向いて飲むとね。

ぐびぐび音がするって知ってた?^^

ぷはー。

「あ。いかん。俺、魂抜けた。」

「おるやん。」

「おかわりいくつー?」

「全部で、ごほーん!」

さんざんたらふく食べて飲んで。

お会計、ひとり2,500円強。

エエェェΣヽ(*`・ω・)ノ゙ェェエエ工

ホントなんだってば。

飲み会はたくさんやったけど。

あの飲み会がいちばん心に残ってるなぁ。^^

キミたちも、サークルやったら。

ビール園だけは外しちゃダメだよ☆

学祭ではクレープ焼いてた。

チョコバナナ売ってたよ。

鉄板を交換するときに、右腕に根性焼き作ってね。

めっちゃ熱かった。^^;

しばらく跡が残っちゃったよ。

そんなこんなで。

サークルらしいサークルに参加してない春菜ちゃん。

もったいないねぇ。

「おーい春菜。」みんな。

おにいちゃんとパパとママだった。

「元気かー?」おにいちゃん。

「あのねー、パパねぇ、今度部長に昇進するのー!」ママ。

「そして僕は一時帰国中。見ての通り。」おにいちゃん。

バーバリーのコートでモデル立ちをするおにいちゃん。

「春菜も揃って映りたかったねぇ。」パパ。

「そして。もう少ししたら。」おにいちゃん。

「本帰国するかも。」おにいちゃん。

「そーなのよー。」ママ。

「横浜でひとりで頑張ってる春菜へ。」ママ。

「夢もいいけど、遊びくらい知らないとダメよー。」ママ。

「えっ。」パパ。

「サークルでも始めるといいよ。」おにいちゃん。

「そして。くれぐれも。」パパ。

「酔っぱらって記憶飛ばしちゃダメだよー。^^」みんな。

「じゃー春菜ぁ。」パパ。

「しっかり励んで、立派なスッチーになるんだぞぉ。」パパ。

(うるうる。)

「困った時はいつでも電話してね。」おにいちゃん。

(はーい。)

「というわけで。」みんな。

「ビデオレターでしたー。」みんな。

ぷちっ。

春菜ちゃん、激感動。

「からくりビデオレターじゃないんだから。w」春菜ちゃん。

「Σ( ̄ω ̄ノ)ノハッ!! ビデオ?」春菜ちゃん。

「鎌倉にビデオ持ってけばよかったー!」春菜ちゃん。

「みんな、ありがとね☆」春菜ちゃん。

涙をぬぐう春菜ちゃん。

「うーん。サークルかぁ。サークルってと。」春菜ちゃん。

「飲み会とかやるやつだよね?」春菜ちゃん。

それはメインじゃないだろ。w

「学業は優秀だし。(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん」春菜ちゃん。

「何があるかなぁ。」春菜ちゃん。

テニスは向いてるのかどうかわからない。

バレーボール? それだ!

てくてく。

あのー。

「加入したいんですけどー。」春菜ちゃん。

「+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆ 大歓迎♪」部員。

馬鈴薯とある。

ばれー、しよっ、なのだ。

身長低いけど、なにげに垂直飛びが70cmを超える春菜ちゃん。

みんなで体育館で。

トスアップ。^^

レシーブ!

結構楽しい。てか、疲れを感じない。^^

お友達もすぐにできた。

「超かわいい☆」先輩。

「ひえー。」春菜ちゃん。(照れている。^^;)

サークル1日目の練習を終えて。

春菜ちゃんは、ほろ酔い気分でいた。

「肝トレしとかなくっちゃ。」春菜ちゃん。

「でもこれ、おいしー。(@@)/」春菜ちゃん。

「ねむーい。^^」春菜ちゃん。

「寝るー。」春菜ちゃん。

ビール1/2がやっとの春菜ちゃん。^^;

大丈夫なのか。

身体動かした後って。

酔いが回りやすいのね。

いつの間に感染ったのか。

おにいちゃんのように丸まって眠る春菜。

春が来るのは、まだすこし先の話だった。

そのときだった。

ぴんぽーん♪

「いませーん。」春菜ちゃん。

「はーい。」春菜ちゃん。

「あっあのオレ。きっキミのことが好きです!」

「えー。」春菜ちゃん。

ドアホンを片手にかたまりんぐの春菜ちゃん。

てか夜だよー。

なんでこの家しってるのー?

episode13

いきなり告白された春菜ちゃん。

「ねー誰だかわかんないけど。私これから寝るのー。」春菜ちゃん。

「そーですかぁー!」

「というわけで、プチっ。」春菜ちゃん。

がちゃん。

ドアの向こうで固まる男。

「し、失恋ですかぁー!」

「明日のチケットどうですかぁー?」

「オレンジ色のパンツはいてるのが僕です。花束投げてください!」

練習していた言葉をすべて言い切ってからその場を離れる。

ばちーん。

ばちーん。

「うおー!」

雄たけびが聞こえてくる。^^;

ぜんぶ聞こえてるし。w

「もー。誰ー?^^;」春菜ちゃん。

翌朝。

再び大学は休校だった。

学園祭シーズンである。

春菜は今回は、お祭りを楽しむという名目のもと、かもめと少し遊ぶ程度でとどめようと思っていた。

お店は不参加。

「ねー、あの彼、なんか飛ばしてない?」

ばちーん。ばちーん。

「そいえばゆうべ変な夢見た。」春菜ちゃん。

「どんな?」かもめちゃん。

「いきなり告られて、雄たけびしながら帰ってった人がいて。」春菜ちゃん。

「告られた? ちゃーんす!」かもめちゃん。

「((-ω-。)(。-ω-))フルフル」春菜ちゃん。

「なんかどもってたよ。」春菜ちゃん。

リングに目を遣った途端、目が合うふたり。

「はっ春菜ちゃん!」

エルボーを喰らう男。

Σ( ̄∇ ̄ グハッ!

そこですかさず腕を取る男。

高々と天を指さす。

「春菜ちゃん! ぼっ僕は。」その男。

「キミのためなら、トップロープから飛べる!」

えええええ。

敵をロープに飛ばして、ラリアット。^^;

もんどりうってリング外にエスケープしたところを、トップロープからプランチャー。

「ねね知ってる? あの青木くん。」かもめちゃん。

「南米帰りなんだって。」

「えー。w」春菜ちゃん。

「1年休学して、プロレス留学したの。」かもめちゃん。

「なんかおにいちゃんと気が合いそう。^^;」春菜ちゃん。

「うおーーーー!」青木くん。

リング上で渾身の力を込めてボストンクラブ。

たまらずタップする相手。

かんかんかんかん。

「えー只今の試合ー。」解説者。

「4分51秒で、青木選手の勝利でーす!」解説者。

+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆

いいぞー。

てか。

あれ? 春菜ちゃん?

まっかっかの春菜ちゃん。

てかー。

「場所選べよー。」春菜ちゃん。

「もしかして。」かもめちゃん。

「あの人?^^;」かもめちゃん。

真っ白な歯できょろきょろする青木くん。

春菜ちゃん、いなーい。w

( ノΩ`)シクシク…

しかし。

何にせよ、かもめ。は新たなキャラを得た。^^;

いいかい春菜ちゃん。

傷つけないでいることと、喜ばせてあげることはとっても難しいんだぞ。

男心をえぐるなかれ。

でも。

断るべきときはしっかりと距離を保つべし。

「かもめ、こっちこっち。」逃げる春菜ちゃん。

「なんでー。^^」かもめちゃん。

「なんかかもめ、喜んでない?^^;」春菜ちゃん。

テンパってる春菜ちゃん。

こういうアプローチは慣れてないのだ。

「どうしよー。」春菜ちゃん。

今後、ことあるごとに青木くんは登場することになる。

女運はないのだが、けっこうハンサムである。

春菜ちゃんは、かなりうらやましがられることもあるのだが。

破天荒というかなんというか。

「まぁ、そこら辺のちゃらちゃらしてる男よりはいいんじゃない?」ママ。

「でも対象外ー。」春菜ちゃん。

どうしようね。困ったね。^^;

青木くんは、南米帰りというよりも。

プエルト・リコの帰国子女だった。

幼い頃から憧れつづけたプロレス。

熱い魂が宿っていた。

空中殺法にあこがれて。

みずから、入門の扉を叩いた数少ない日本人のひとりだった。

青木くんは。

ミル・マスカラスのように。

蝶のように舞い、蜂のように刺す技が大好きだった。

本来は、この言葉はモハメッド・アリのためにある言葉であるのだが。

アントニオ猪木の大ファンでもあった。

声が大きいのでも有名だった。

とっても臥体がいい。^^;

「ん? キン肉マン?」おにいちゃん。

「そーなの。変なのにアプローチされてるの。」春菜ちゃん。

「プロレス同好会やってて。」春菜ちゃん。

「なんかね。南米帰りとかなんとか。」春菜ちゃん。

「他人とは思えない。」おにいちゃん。

「いいじゃん。守ってもらえば。」おにいちゃん。

「でも対象外ー。^^;」春菜ちゃん。

男はハートだぞ、春菜ちゃん。

「だってさぁ、いきなりおうちまで来たんだよー。」春菜ちゃん。

「情報なしでつきあえったって。」春菜ちゃん。

「無理だよー。」春菜ちゃん。

「はーるなちゃーん!」青木くん。

「ぴしっ。ちょっと待って。いきなりちゃんづけはないんじゃない?」春菜ちゃん。

「それになんかルパンみたいだし。」春菜ちゃん。

「はっ春菜さん!」青木くん。

「んで?」春菜ちゃん。

「元気ですかぁー!」青木くん。

「キミだけだ、キミだけ。そんなに元気なのは。」春菜ちゃん。

「しっ知り合えて、光栄です!」青木くん。

もー。

こら作者ぁ! なんだこのキャラはぁー!

だいじょうぶだいじょうぶ。

いつか守ってくれるって。^^

むー。

街が電光で明るくなってくる頃。

横浜駅の近くで宣伝している電化店があった。

はっぴを着ている。

「どーですかぁー?」

やはり青木くんだった。^^;

バイト先らしい。

「てかね。なーんにも情報ないのに。」春菜ちゃん。

「どんどんイベントが起こってくるんだよぅ。」春菜ちゃん。

「ひょっとして運命?^^;」かもめちゃん。

「((-ω-。)(。-ω-))ブンブン」春菜ちゃん。

「運命。信じたくなーい。」春菜ちゃん。

かもめは、ペスと彼女のごはんに、今日はごちそうを用意しようと思っていた。

「何がいいかなー。」かもめちゃん。

「魚かなぁ? 高タンパク低脂肪だし。健康にもいいし。DHAでおりこうさんにもなるかもだし。」かもめちゃん。

「筋肉にならないやつなら。」春菜ちゃん。

「そーね。^^;」かもめちゃん。

横浜の夜は更けていく。

春菜の理想の男性は。

そーねぇ。

優しくて、飾らなくて。夜景の見えるバーでおしゃれに静かに飲む紳士的な人だった。

「それってブラコンでないか?」かもめちゃん。

「うーん。それは違う。必要最低条件なの。」春菜ちゃん。

「なんかわかるぞ。」かもめちゃん。

「てか。」春菜ちゃん。

「あの人とだけは行きたくない。w」春菜ちゃん。

「なんで?」かもめちゃん。

「ハイアットから跳びそう。」春菜ちゃん。

episode14

どこで覚えたのか、おにいちゃんはインド民謡が大好きである。^^;

Najmaさんが大好きだった。

Najma?

ナジマって読むの。

阿部係長、理系ー♪ の人ね。

(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん

あれ聴きながらカレー食べるのが大好きなのだ。

カルチャーショックが起こったのは、18歳の夏期講習で行った小倉の予備校。

魚町銀天街に、インド屋さんがあって。

そこに、シナモンなのか何なのかわかんない木の枝の入ったカレーを。

ふよふよした音楽でトリップしながら食べたことがあったのだ。

ゾウさんが横向きのタペストリーを見ながら。^^;

以来、インドにぞっこんなのね。

「絶対トリップするよ。」おにいちゃん。

「えー。いい。^^;」春菜ちゃん。

「んじゃ、やめよっかなー。」おにいちゃん。

「なになにー?^^ 御馳走してくれるんならもちろん行く!」春菜ちゃん。

「かもめちゃん連れて、今度東京に集合しない?」おにいちゃん。

「もし時間があればだけど。」おにいちゃん。

「行くー☆」春菜ちゃん。

というわけで。

おにいちゃん、in 東京。

3人は、インド屋さんに到着した。

ふよふよー♪

いい色のおにいさんが真っ白な装束で現れた。

かっこいい。^^

亜細亜の人って、左右対称でなんか男前が多いのだ。

「メニューでーす。」おにいさん。

「何にしよっかなー。」春菜ちゃん。

「辛さってえらべますよね?」かもめちゃん。

「20辛までありますー。」おにいさん。

「それは無理。w 3くらいでいいかな?」かもめちゃん。

「ふえーん。2辛ー。」春菜ちゃん。

「こういうのはね、いっぱいカレーの種類を頼んで。」おにいちゃん。

「みんなでシェアして食べるのだ。一人前ずつじゃなくって。」おにいちゃん。

「そしたらいっぱいいろんなカレー食べれるでしょ?^^」おにいちゃん。

「+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆」ふたり。

「チキンティッカマサラ!」かもめちゃん。

「マドラス!」春菜ちゃん。

「+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆ 大きくなったねぇ。」おにいちゃん。

「うに?」春菜ちゃん。

「ヴィンダルーあります?」おにいちゃん。

「できますよ。」おにいさん。

「あと、ほうれん草のカレーと、茄子のカレーと、プローン(海老)カレー。」おにいちゃん。

「ライスにしますか? ナンにしますか?」おにいさん。

「ナンでー☆」みんな。

照明が暗い。

ペンダントライトが、やはり象さんを映していた。

「ねね、なんで象さんがいっぱいいるの?」春菜ちゃん。

「インドにね、象さんの神様もいるのだ。」おにいちゃん。

「象さんの神様?」春菜ちゃん。

「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん ガネーシャっていう、首から上が象さんの神様がいてね。」おにいちゃん。

「あっちの国では、神様のブロマイドもあるんだって。」おにいちゃん。

「ブロマイド。へぇー。」ふたり。

「みんな、ありがたがって持ってるんだって。大人気だね。^^」おにいちゃん。

「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん」ふたり。

「そいえばビーフカレーってないよね?」春菜ちゃん。

「しーっ。ダメなのだ。」おにいちゃん。

「え。ダメなんですか?」かもめちゃん。

「そうそう。インドではね、牛さんは神聖な動物で。車ですら、牛さんが歩くときは停まって待つくらいなんだよ。」おにいちゃん。

「なんでー?」春菜ちゃん。

「シヴァの神様がね。昔から、ナンディっていう牛の上にまたがって乗り物にしてたんだって。」おにいちゃん。

「神様の乗り物なのだ。」おにいちゃん。

「だからなんだー。」かもめちゃん。

そんなこんなで、お料理が運ばれてきた。

すごいすごい。

いっぱい頼んだだけあったね。^^

「あっちっち。」おにいちゃんが右手で無理してナンをちぎる。

「右手だけじゃダメー。」春菜ちゃん。

「ダメよん。」おにいちゃん。

「キミはとくにダメ。国際線に乗った時に恥かかせたくないから。」おにいちゃん。

「ふえーん。」春菜ちゃん。

「超おいしい。(^^♪」かもめちゃん。

「まてー。その顔文字よこせー。」春菜ちゃん。

「おいしー。(^^♪」春菜ちゃん。

「てか。」春菜ちゃん。

「あとからきたー! マドラスって、からーい。^^;」春菜ちゃん。

「ヴィンダルーもあるよ?」おにいちゃん。

バターナンの香りがたまらない。

ナンのおかわりもできるという。

「わすれてた。」おにいちゃん。

「タンドリーチキン食べる?」おにいちゃん。

「わーい。(^^♪」ふたり。

ヨーグルトに24時間以上漬けこんでいたと思われるタンドリーチキンは。

焦げ目がたまらなく美味しかった。^^

お会計。

思ったほどではない。^^

「おにいちゃん、ビール!」春菜ちゃん。

「待て。出てから言うな。」おにいちゃん。

「私もー♪ 今度はごちそうします!」かもめちゃん。

3人が向かったのは、ホテルのラウンジだった。

高いバーから、夜景が見える。

からんからん。

グラスを傾け、氷を転がして遊ぶおにいちゃん。

席の順は、かもめ、春菜、おにいちゃんだった。

おにいちゃん、ひとりで物思いに耽る。

「でねー。シアトルでね。超ー綺麗な夜景観たの。」春菜ちゃん。

「ジョナサンがね、ね。」春菜ちゃん。

すこし眠くなるおにいちゃん。

目がすわってる。w

「できあがり中ぞなもし。」おにいちゃん。

「かもめちゃーん? 元気?」おにいちゃん。

「元気ー♪」かもめちゃん。

「こちらのおにいさんからです。」おにいちゃん。

ピスタチオをバーの上に走らせるおにいちゃん。

「酔ってるでしょー。ふふーん。^^」春菜ちゃん。

Σ( ̄ω ̄ノ)ノハッ!!

いきなり我に返るおにいちゃん。

どうした? お財布忘れたか?

「春菜。これ何本?」後ろ手のおにいちゃん。

「んーと。5本。とね。悩んでる指が1本。w」春菜ちゃん。

「やはり。^^;」

酔ってるー。

どうしよう。

おんぶ必要かな。^^;

今日は泊ってくほどお金持ってないし。

それにしても。

3人とも、大人になったね。^^

パパが見たら、さぞかしうらやましがっただろう。

吸い込まれそうな夜景を見降ろしながら、かもめはまた上を見上げた。

「上を向-いて♪」

「歩こーおぅおぅおぅ♪」

天国の先輩、元気かな。^^

誰にも知られないように、春菜のビールをちびっと飲むかもめであった。

episode15

「え? 株ー?」春菜ちゃん。
「そうなのだ。」おにいちゃん。
「時給だけに頼るなかれ。」おにいちゃん。
「友達でね、バイト代全部株につぎこんで。」
「4年間で1,500万円も貯めた奴知ってるぞ。w」
「エエェェΣヽ(*`・ω・)ノ゙ェェエエ工」春菜ちゃん。
「銀行に預けといても殖えないでしょ?」おにいちゃん。
「それがね。株だと。」
「どかーん。」ふたり。
「そうそう。」おにいちゃん。
「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん」春菜ちゃん。

春菜も経済学部なんだからやるべし。

って。w

(ー’‘ー;) ウーン

どうしよう。冒険はあまり好きではないのだ。

おにいちゃんはね。

生活費の1/2以上は一度の盤面に並べられる人だけど。^^;

春菜はちがった。

というわけで、やるにしてもプチ株どまりにすることにした。

プチ株とは。

100単元、1000単元でしか買えない株が、1単元で買える株なのだ。
資金にゆとりがない場合にも有効である。
ミニ株(1/10)のさらに下ね。^^;

「どうやって銘柄選ぶのー?」春菜ちゃん。
「それはねー。①ここなら応援したい、って思うところで。②理由つきで伸びるのがわかってる株なんだな。」おにいちゃん。

ふむふむ。

どうやるのー。^^

ここで読者のみなさんに注意されたし。

まず、株式というのは。

売らなくちゃ儲けにならないということ。
儲かったら、税金がかかるということ。
そして。
倒産でもされると、全部なくなっちゃうんだということ。

これ重要ね。

さらに、損失補填なんてのは、絶対にない世界で。
すべて、at your own risk。
自己責任の世界なのだ。

「下がったじゃねーかよー。(涙)」なんて言われても。

誰にも文句言えないのよね。

「いいかい。今は日本経済が全体的に下がってるときだから。」おにいちゃん。
「何かのトリガーがあれば、ちびっと上向いてくると思うよ。」おにいちゃん。
「そこを狙って、底目のとこを狙うべし。」おにいちゃん。
「(( ̄^ ̄ )ゞ了解。」春菜ちゃん。

あとは。

アイスクリームの法則ってのがあってね。

「よぅ春菜ちゃん。」かもめちゃん。
「株式始めたんだってー?^^」かもめちゃん。
「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん」春菜ちゃん。
「会社四季報とか読んでるの? 日経とか。」かもめちゃん。
「ポートフォリオのこと?」春菜ちゃん。
「うん。」かもめちゃん。
「ネットで見てるだけなんだけど。」春菜ちゃん。

コツがあるらしい。^^

なぞなぞのように、おにいちゃんが教えてくれた。

「春菜ちゃん。アイスは、いつ売れなくて、いつ飛ぶように売れるんだろう?」おにいちゃん。
「売れないのが冬で、いちばん売れるのが夏!」春菜ちゃん。
「じゃ、いつの決算期がいちばん高値がつくでしょう?」おにいちゃん。
「+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆ わかった。^^」
「その法則で2~5年くらい見てごらん。」おにいちゃん。
「(( ̄^ ̄ )ゞラジャ」春菜ちゃん。

つまり。

安値で買って、高値で売れば、株はその差額の分だけ高く売れるのだ。
売らない限り、儲けは出ない。
ずっと持ってるまんまだと、また下がっちゃう。

「売り時は、一年間に1回のピークぞなもし。」おにいちゃん。

というわけで中~長期株をにらむことにする春菜ちゃん。

「デイトレーダーほど手数料に泣かされるお仕事はない。」おにいちゃん。
「とくにうちらの所得層では。」おにいちゃん。
「じっくり持つべし。じっくり待つべし。」おにいちゃん。

はーい。^^

というわけで、春菜は有り金の5割を株式投資に充てることにした。

生活費は圧迫しない。
遊び心は、ちびっと我慢。
遊びたくなったら、またバイトで稼ぐか、部分的に売っぱらっちゃえばよいのだ。

そして。

わずか半年で、春菜は原チャリ新車並みの利益を上げることになる。^^

「えー。それって、すごくないか?」先輩。
「分散投資がモノを言います。」春菜ちゃん。
「よかったら、俺に貸して・・・。」クラスの男子。

ばちーん。ばちーん。

「やらん。w トイチだ、トイチ。キミに貸せるとしても。w」青木くん。
「春菜さん、変な虫が。」青木くん。
「フマキラーでも撒いといて。」春菜ちゃん。
「虫物語でもいく?」春菜ちゃん。

だんだんたくましくなる春菜ちゃん。

バイトのボーナスは、まるまる残る。全部投資にまわしちゃえ。^^
どうせ倒産しない限り、ゼロになることはないもんね。

上がる理由のわかってるところは押さえておくべし。

これ、パパも知らない事実かも。

でもね。

手痛いこともあってね。

「会社、なくなっちゃった場合はどうなるの?」春菜ちゃん。
「そりゃアウトよねん。」パパ。
「全部なくなるってこと?」春菜ちゃん。
「ぴんぽーん♪」パパ。
「ひええええ。」春菜ちゃん。

これですったのがお父さん。w
そして、日本経済が大打撃を受けると。
軒並み下がっちゃうのも事実なのだ。

ま。

パチンコにハマるよりはずっといいのだ。

そして。

将来、どんな職業に就いても。
立派に稼げるようになるには、有価証券を持っておくのも悪くないからね。

今日は、あくまでヒント止まり。

いつの日か、そっちの収入のほうがでかくなるのよ。いつか。^^

会社経営を始めたい子には。
決して欠かせない要素なのでした。

というわけで。

春菜ちゃんは、今度は国内旅行に行くだけのお金を貯め込んだのでした。

episode16

春菜は、レシーブの特訓中だった。

「ダメー。もっかい。」先輩。

「ひえー。いたーい。^^;」春菜ちゃん。

「んとねー。レシーブで腕上げてるでしょ?」先輩。

「それは違うのよ。」先輩。

「え。」春菜ちゃん。

「相手のスパイクの勢いを消して、願わくばセッターの頭上に勢いを殺す。」先輩。

「これに尽きるかな。」先輩。

「だから私の頭の上にふんわりね。」先輩。

「はーい。」春菜ちゃん。

苦しくったってー♪

悲しくったってー♪

「こずえ先輩ー?」春菜ちゃん。

「もしかして。そのお名前。」春菜ちゃん。

「アタック25からですかー?」春菜ちゃん。

ずるっ。

「アタックNo.1でしょ! 右手に拳つくってどうすんの。」こずえ先輩。

サーブが厳しくなった。

「でー?^^;」春菜ちゃん。

「ビンゴよ、ビンゴ。」こずえ先輩。

「ママが大ファンだったの。」こずえ先輩。

「めげない強い子になりますように。」って。

「春菜も負けないこと!」こずえ先輩。

「はぁーい。^^;」春菜ちゃん。

運動神経は悪くないのだが、ルールに至ってはきわめて無頓着だった春菜。

3回目に相手コートに返すことしか知らなかった。

「次、トスアップ。」こずえ先輩。

「手首を返しながらトスするのだ。」こずえ先輩。

「ホールドしないようにね。そして、使う指はこの3本。」こずえ先輩。

「どうですかー?^^;」春菜ちゃん、

「うーん。」こずえ先輩。

「筋はいいんだけど、不向きかも。w」こずえ先輩。

「次、アタック行ってみようか?^^」こずえ先輩。

「はい♪」春菜ちゃん。

「んじゃ、これいってみ。」こずえ先輩。

トスアップする先輩。さすがの軌跡である。

頭の上ではなく、やや前方。ジャンプしてちょうど打ちやすい位置にボールが飛ぶ。

春菜、ジャーンプ♪

「えええええ。」こずえ先輩。

ずばーん!

垂直飛び70cmオーバーは伊達ではないのだ。

身長158cmそこらの身体が、しなるようにスパイクを決めた。

+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆

「すごいすごい! ライトからでも打てる?」こずえ先輩。

ずばーん!

「移動攻撃と、Cクイックの練習。^^」こずえ先輩。

「春菜、レシーブしたら私に返して。」こずえ先輩。

「そしてキミはダミー。」こずえ先輩。

「速攻でライト入って、クイックで打ってみて。^^」こずえ先輩。

「くいっく?」春菜ちゃん。

こんな感じ。んじゃ、まず見ててね。^^

サーブが入る。

「そーれっ。」

レシーブがセッターにボールを返す。

ダミーがレフトにスタンバイして空ジャンプ。

セッターは背中方面にトスアップして、ライトがずばーん。^^

+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆

見事に決まった。

「すごーい☆ そんけー。^^」春菜ちゃん。

「というわけで。春菜、ライトね。」こずえ先輩。

「うちのエースストライカーがブロックにはばまれるのを阻止するために。」こずえ先輩。

「キミにもボール送るよ。」こずえ先輩。

「はーい☆」春菜ちゃん。

サインは、そーね。

「Vで。^^」こずえ先輩。

かくして、セッターの腰のあたりにVサインが出ると。

春菜の移動攻撃&Cクイックが待っているのだった。

サークルは、めきめきと実力を上げていった。

「おつかれー☆」こずえ先輩。

「おつかれさまですー☆」みんな。

「んじゃ、今日はビールでも飲む? みんなで。^^」こずえ先輩。

「わーい。^^」みんな。

「そろそろ攻撃のパターンも増えてきたけど、相手の癖がまだ読めないのよねー。」こずえ先輩。

「どこから来るのかアンテナ張り巡らせてるんだけど。」こずえ先輩。

「反射神経だけじゃついてけなくなっちゃうしねー。」こずえ先輩。

「その点、春菜は見た目よりずっと反射神経いい。^^」こずえ先輩。

「ありがとうございます☆」春菜ちゃん。

「あーあ。相手のサインでも見えたらいいのになー。」こずえ先輩。

「(・・。)ん? 背中に隠してる指のこと?」春菜ちゃん。

「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん」こずえ先輩。

「全部わかりまーす。^^」春菜ちゃん。

「エエェェΣヽ(*`・ω・)ノ゙ェェエエ工」みんな。

episode17

「春菜、集合ー。」おにいちゃん。

「うに?」素直に寄ってくる春菜ちゃん。

「新しいの書いたよ。」おにいちゃん。

「なんだこれ。ヤドカリのひとりごと?」春菜ちゃん。

「しゃべるのか。」春菜ちゃん。

おにいちゃんの書いた「ヤドカリのひとりごと。」

ヒソカに絵本化をたくらんでいたのだが。w

「ぷはははは。ウニの幸せがわかった。^^」春菜ちゃん。

「ちくちくしてほしいのね。w」春菜ちゃん。

「対象はー?^^;」春菜ちゃん。

「あ。そっか。^^; これは子供向けじゃないねぇ。」おにいちゃん。

「サーバーくん1号。に入ってるのね。」春菜ちゃん。

「いっぱいお客さんが入りますように。」春菜ちゃん。

「よしよし。」春菜ちゃん。

「蚊くんの続きはー?」春菜ちゃん。

「Σ( ̄ω ̄ノ)ノハッ!! まだ考えてない。」おにいちゃん。

「そーね。そろそろね。」おにいちゃん。

「(ー’‘ー;) ウーン」おにいちゃん。

「悩みながら書いてるのね。」春菜ちゃん。

「| ̄_ ̄||―_―|| ̄_ ̄||―_―|ウンウン」おにいちゃん。

「大体、どーなるの? 蚊くんのつづき。」春菜ちゃん。

「それは言えない。w」おにいちゃん。

「てか。まだ考えてない。」おにいちゃん。

「売れるかな。」春菜ちゃん。

「海外ではね、超安く売られてるんだよ。版権手放してるから。」おにいちゃん。

「エエェェΣヽ(*`・ω・)ノ゙ェェエエ工 売ってるの?」春菜ちゃん。

「うん。売り上げが、学校の建設費とか、病院の建設費とか、ワクチン代とか、教会の修繕費に充てられるんだったら、って条件つきなんだけど。」おにいちゃん。

「なんでなんで。」春菜ちゃん。

「ちっこいのがお小遣いで買うでしょ?」おにいちゃん。

「うん。」春菜ちゃん。

「そしたら、そのお金がワクチンなんかになって、第三国の子供たちを救えるのだ。」おにいちゃん。

「つまり、その本を買うことによっていいカルマができるじゃない。^^」おにいちゃん。

「いつかね。病院に置いてもらいたいんだな。」おにいちゃん。

「死にそうな人たちがね。蚊くん読んだら。」おにいちゃん。

「ずいぶん気持ちが楽になると思うよ。」おにいちゃん。

「すごいぞなもし。」春菜ちゃん。

「泣きっ面にHarvestって言うもんね。」おにいちゃん。

「どういう意味?」春菜ちゃん。

「どんなに苦しい人生でも、ハチになればHarvestに行けることのたとえだよ。^^」おにいちゃん。

「ほー。w」春菜ちゃん。

「そうだ。そろそろ出版社行かなくちゃ。」おにいちゃん。

「そだね。^^ いいところ行って、いっぱい刷ってもらわなくちゃだね。^^」春菜ちゃん。

「そしたら、憧れの・・・。」おにいちゃん。

「印税生活ね。^^」春菜ちゃん。

おにいちゃんは夢に向かって頑張っていた。

春菜も、そろそろ動き始めなくてはいけない頃である。

自分で、箇条書きにして夢を書いてみることにした。

①スチュワーデスになりたい。
②できれば国際線。
③でも日本とどっかの海外都市を結ぶ路線で。
④できれば海外の現地採用。

+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆

やるじゃないか、春菜ちゃん。

そして、世界をまたにかけてお仕事するんだね。^^

夢を追いかけてるときは、瞳がきらきらするものである。

兄妹は瞳がきらきらしていた。

夢は高く、果てしなく♪

これからだね。^^

そんなとき。

かもめはひとりでバーで酔っていた。

バー?

(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん

ここは、亡くなった先輩におごってもらったことのある馬車道のお店なのだった。

馬車道ってね、地名。

関内の近くだよ。

「上を向いてー♪ 歩こうー♪」かもめちゃん。

「涙がー♪ こぼれないよぅおぅおぅにぃ♪」かもめちゃん。

「かんぱーい。」かもめちゃん。

「天国の先輩へ。そろそろ踏ん切りつけようと思います。」かもめちゃん。

「前見て歩かなくちゃ。私も。」かもめちゃん。

かもめは、マティーニのオリーブの実をつまんで、凝視していた。

お店の間接照明が、ぼんやりとオリーブの影をカウンターに映していた。

「くるくるくるくる。」かもめちゃん。

「なんで混ぜるんですか?」かもめちゃん。

「だってさ。だしが取れるじゃない。オリーブの。」先輩。

「取れないよー!^^」かもめちゃん。

「うちの地元に、大うず潮があるんだ。」先輩。

「だから。」先輩。

「くるくるくるくる。」かもめちゃん。

「オリーブ溺れてるし。」かもめちゃん。

以来、かもめは、オリーブが溺れないように、かならず取り皿に置いてから飲むようにしていた。

かりっ。

新鮮なオリーブのジュースが口いっぱいに広がる。

そこをすかさず、マティーニが洗い流す。

まるで澄みきった水のように、喉をうるおしてくれるお酒。

それが、ドライ・マティーニだった。

「ねね、彼女ー? ひとり?」声をかけられる。

「おあいにくさま。今日は命日だから。」かもめちゃん。

「ふたりー。」かもめちゃん。

「?」

「もう一杯飲んでから出よっと。」かもめちゃん。「マスター?」

なじみのマスターも、今日は口数が少ない。

あの交通事故さえなければ、今頃はどうなっていたのだろう。

かもめは、知らず、デートの相手を春菜に投影してきていたのだということに気付いた。

「おかわりだぁ。ひっく。」かもめちゃん。

春半ば。かもめは夜風に面影を求めていた。

episode18

「でね。この画像が春菜の。」かもめちゃん。

「えー。いつの間に。^^;」春菜ちゃん。

「この前、飲みに行ったときの写真。」かもめちゃん。

「うんうん。」春菜ちゃん。

「これが春菜のおにいちゃん。」かもめちゃん。

「突っ伏すの巻。^^;」かもめちゃん。

「あはははは。」春菜ちゃん。

「てかこれ。」春菜ちゃん。

「いい画像だね。」春菜ちゃん。

「メールしてー☆」春菜ちゃん。

「ちっこくなっちゃうよ?」かもめちゃん。

「メールだと最大サイズに制約がかかっちゃうのだ。」かもめちゃん。

「USBメモリにする?」かもめちゃん。

「うん。^^」春菜ちゃん。

「いいなー。カメラどこの?」春菜ちゃん。

「ライカ。^^ パパのおさがりなの。」かもめちゃん。

「私も欲しーい。」「あ。」春菜ちゃん。

「お金ならあったんだっけ。」春菜ちゃん。

株でかなり潤っている春菜ちゃん。

もはやバイトどころではない。^^;

「一眼レフがいいー☆」春菜ちゃん。

「でねでね。」春菜ちゃん。

「レンズ交換できるやつで、お料理がめっちゃ綺麗に撮れるやつ。」春菜ちゃん。

「そんなカメラ。」春菜ちゃん。

「こちらのコーナーへ。」おにいさん。

「メーカーにご希望がございましたら?」おにいさん。

「んー。どこのがいいですか?」春菜ちゃん。

「この価格帯ですと、これなんてよろしいかと。」おにいさん。

「予算はおいくらですか?」おにいさん。

「7万円です。」春菜ちゃん。

「新作ですよ、これ。」おにいさん。

キラーン☆

おにいちゃんは天体望遠鏡でこれをやった。

春菜にも同じ血が流れていた。

「レンズ、綺麗ー☆」春菜ちゃん。

「よっ。」春菜ちゃん。

キラキラを斜め横から見る春菜ちゃん。

目がうっとりしている。

「交換レンズって。」春菜ちゃん。

「どんなのがいいんですか。」春菜ちゃん。

「撮るモノにもよりますよ。」親切なおにいさん。

「野鳥と焼き鳥では撮り方が違いますから。」おにいさん。

「あはははは。^^」春菜ちゃん。

「どう違うんですか?」かもめちゃん。

「野鳥は近くに寄ると逃げちゃうでしょ? だから望遠で。」おにいさん。

「焼き鳥は逃げないから、限りなく寄って。」おにいさん。

「そして、ピントが合う位置が確定したら、パシャ☆」おにいさん。

「単焦点レンズをおすすめします。」おにいさん。

「ズームが標準でついて参りますので。」おにいさん。

「じゃ、ヤキトリのほうで。^^」春菜ちゃん。

「ヤキトリ価格は、今なら、セットで74,800円ですが。」おにいさん。

「そこをなんとか。」春菜ちゃん。

「71,000円。こんなもので?」おにいさん。

「帰れなくなっちゃうよー。」春菜ちゃん。

「手持ちが70,000円なの。で。銀行のそばにもカメラ屋さんがあるから。」春菜ちゃん。

焦るおにいさん。

かたかたかたかた。

「税込みで69,800円!」おにいさん。

「買った☆」春菜ちゃん。

ご成約ー☆

「わーい。^^」春菜ちゃん。

「いいの買ったね☆」かもめちゃん。

「いっぱい撮るぞー。」春菜ちゃん。

「ん。」春菜ちゃん。

「どした?」かもめちゃん。

「家まで200円で帰れたっけ?^^;」春菜ちゃん。

episode19

春菜ちゃんとかもめちゃんはセットで大学の構内にいた。

そう。

学園祭実行委員会の会場。

くじ引きだった。

「キタ━━━━〃ヽ(〃▽〃 )ノ━━━━!!!! 」かもめちゃん。

「ねね、私、いいとこ取れたよ!」かもめちゃん。

クラス代表の春菜ちゃん。

「えーと。これじゃなくて、これ☆」春菜ちゃん。

「大丈夫かな、春菜。」クラスの子。

「ふふーん。^^」春菜ちゃん。

「経営棟前です!」実行委員会。

「(ノ・ω・)ノオオオォォォ-」クラスの子。

春菜にとって、くじ引きというのは、相手側にハンディを背負わせる効果しかない。

「(だって見えるんだもん。^^)」春菜ちゃん。

「やったー!」みんな。

「いいとこ取れたね☆」みんな。

「それでは、行って参ります。」青木くん。

箱の中の指が見える春菜ちゃん。

「うちの数字が②だから。」

「⑯くらいになぁれ☆」

③をつかもうとする青木くん。

どんっ。

誰かがぶつかった。

⑯番をピックする青木くん。

「えー。プロレス部は。」実行委員長。

「図書館のすぐそばですね。」実行委員長。

「あ”あああああ。」青木くん。

離れ離れになる青木くんと春菜ちゃん。

「はっ春菜さん!」青木くん。

「ローストチキンは冷めないうちにお届けしますから。」青木くん。

「あい。」春菜ちゃん。

「じゃ。^^」春菜ちゃん。

男泣きに泣きそうな青木くん。

「チケットは。」青木くん。

「もう鞄の中に入ってますから。」青木くん。

「へ? 私のー!?」春菜ちゃん。

「あと、お友達のも。」青木くん。

「いつのまに。^^;」春菜ちゃん。

「てか中見ないでー!」春菜ちゃん。

青木くんは天才的なマジシャンでもあった。

プエルト・リコ時代。

プロの大道芸人をしていた。

ハト?

お手の物だった。

シルクハットを逆さにしたとき、彼に出せないものはなかった。

凶器?

ノンノン。

彼には熱い正義の血がたぎっていた。

かーん♪

日も暮れかけたときに、焼きそばの油の焼ける匂いが立ち込めた頃。

青木くんは、オレンジ色の照明に照らされて、リングの上にいた。

「よっしゃああ!」

学生プロレスである。

悪役はいない。

予定調和風に見えて、技とプライドを競い合うイベントでもあった。

「勇気だよ、勇気。あと根性。」青木くん。

「俺は小さいころ、プロレスからそれを学んだ。」青木くん。

「だから。」青木くん。

「観客のみんなに、それが伝わるような試合をしたい。」青木くん。

新人レスラーが青木くんの首を取る。

(ブレインバスター?)

げぼっ。

(くそー。痛ぇじゃねーかよ。)

観客が喝采を挙げる。

「おおっとー?」リングサイド実況席。

「青木選手、足が止まった!」実況席。

「張り手だぁ! 掟破りの下剋上!」実況席。

「今入りました情報によると。」実況席。

「この今中選手。同じバイト先、他大学の後輩であります!」実況席。

「先輩の頬を打ったぁー!^^;」実況席。

「いいんですかねこれは。解説の本田さん?」実況席。

「下剋上ですね。リングの上で手加減はなしということですね。」本田さん。

「あとが楽しみです!」実況席。

わー。

「青木選手、体を入れ替えて、今中選手をロープに振ったぁ!」実況席。

「返ってきたところを?」実況席。

「あれ? 消えた?」今中選手。

「空中殺法だぁー!」実況席。

ロープから跳ね返ったとき、今中選手の目に青木くんの姿はなかった。

気が付くと、青木くんの両足首が今中選手の首をとらえていた。

半ひねりで頭からリングにたたきつけられる。

「ぐえー!」今中選手。

湧き上がる観客。

「きたー。青木選手、フルネルソンから?」

「ドラゴンスープレックスか?」

「おっと今中選手、体を返した!」

「しかし青木選手、いち早く?」

「前に回って腕を取ったー!! サブミッションだー!」

「技巧派ですね。」本田さん。

「ギブアップ?」青木くん。

「ノーノーノー。」今中選手。

さらに腕をしめあげる青木くん。

すでにリングでは5分が経過しようとしていた。

苦悶の表情の今中選手。

「さてここでお知らせです。」実況席。

「OBの高野さんが応援に駆け付けるとの情報ですが、まだでしょうか。」実況席。

駆け付ける高野さん。

ネクタイにスーツ姿である。

「青木ー! 後輩に負けたら。」高野さん。

「あればらすぞー!^^」高野さん。

「あれってなんすかー?^^;」焦る青木くん。

思わず手がゆるむ。

すかさず逃れて、一瞬の虚を突いて。

「今中選手、ジャーマンスープレックスホールド!」実況席。

「美しいですね。」本田さん。「しかし先輩は応援になってませんね。」

「余計なお世話ともいう。」実況席。

「ワン、ツー?」

すんでのところで返す青木くん。

(あぶねぇ、あぶねぇ。しかし、いってー。)

(やーりやがったよ、こいつ。ちくしょー。)

「もう一回、ジャーマーン!」

一瞬意識を失いそうになる青木くん。

「ワン、ツー?」

もっかい返す青木くん。

(ノ・ω・)ノオオオォォォ- 湧き上がる観客。

「今中選手、青木選手を対角線に飛ばして?」

(しめた。)青木くん。

両足をセカンドロープにかけた青木くん。

そのまま後ろに高々とジャンプする。

背後に回った青木くん。

慌てる今中選手。

両手がしっかり腰のあたりをつかんでいる。

「青木選手はジャーマンが得意ですからね。」実況席。「麻雀は弱いくせに。」

「出るかー?」本田さん。

こらえる今中選手。

足が浮いた。しかし。

浮いたと同時にロープを蹴る今中選手。

「あー自爆ですねこれ。」本田さん。

二人分の体重が後頭部にかかる青木くん。

(てかまじ。いってー!)青木くん。

あーおーき! あーおーき!

思わぬライバルに焦りまくる青木くん。

「勇気だよ、勇気。あと根性。」青木くん。

「俺は小さいころ、プロレスからそれを学んだ。」青木くん。

「だから。」青木くん。

「観客のみんなに、それが伝わるような試合をしたい。」青木くん。

上から何が降ってくるかわからない。

ロープに逃げることもできる。しかし。

「プランチャー!」実況席。

「カウントは?」実況席。

「ワン、ツー、ス・・・」実況席。

返す青木くん。

ふらふらしている。

首と全身が痛い。

そんなとき、リングサイドに春菜ちゃんの目を思い浮かべてみる。

キラーン☆

「はっ春菜さん! 僕は君のためなら跳べる!」

思い出す青木くん。

「うおおおおお!」相手を逆さに抱え上げる青木くん。

渾身の力を込めて、リングに叩き付ける。

「出たー! 起死回生のパワーボム!」実況席。

今中選手は後頭部を強打して、白目をむいている。

(いけるか?)

「ワン!」

「ツー!」

かわされた?

トップロープによじ登る青木くん。

「きますね。」本田さん。

「なんでしょうか? ムーンサルト!」

青木くんの身体はしなやかに宙を舞い、フラッシュの閃光を浴びながら。

今中選手の身体に伸しかかった。

(ばん、ばん、ばーん!)

カンカンカンカン!

「えーただいまの試合。」

「9分55秒で。」

「青木選手の勝利でーす!」

(ノ・ω・)ノオオオォォォ-

(しかし強ぇな、あいつ。)青木くん。

首をひねって悔しがる今中選手。

賞金とローストチキン30個のチケットを受け取る青木くん。

もうふらふらである。

「勝ったねー。」かもめちゃん。

「負けるかと思った。危なかったねー。」春菜ちゃん。

てか。

いい試合でした。

熱狂的な声援の渦の中、そそくさと逃げるように観客席を離れる春菜ちゃんとかもめちゃん。

学園祭は始まったばかり。

夜はさらに更けていくのだった。

episode20

「春菜ー?」おにいちゃん。

「なーに。」春菜ちゃん。

「カメラ、オーダーしたよ。^^v」おにいちゃん。

「おおおっ。」春菜ちゃん。

「君のは何万画素だ?」おにいちゃん。

「んとね、1800万画素。」春菜ちゃん。

「いくらだった?」おにいちゃん。

「ろくきゅっぱ! ふふーん。^^」春菜ちゃん。

「おにいちゃんのもね、1800万画素。だけど。」おにいちゃん。

「2万円だぞ。2万円。」おにいちゃん。

「えー。」春菜ちゃん。

ずるいぞなもし。

「なんで!?」春菜ちゃん。

「中古だから。^^;」おにいちゃん。

「シャッターなんて、1回押したら中古だもんね。Aランクだったよ。^^」おにいちゃん。

「ずるーい。」春菜ちゃん。

「ずるくない、ずるくない。」おにいちゃん。

「そして、レンズだけ新品で買えばいいのだ。」おにいちゃん。

「そこで、ものは相談なんだけど。」おにいちゃん。

「レンズ交換しない? これあげる。」おにいちゃん。

50mm単焦点レンズだった。

なにげに、中古だと10,000円くらい。w

「わーい。できればフードとフィルターも!」春菜ちゃん。

「え。^^;」おにいちゃん。

甘えられるのが兄妹の特権である。

なにげにまだ初心者の春菜ちゃん。

「どうやるの? ねじる?」春菜ちゃん。

「ボタン押してからだよ。」おにいちゃん。

「ポチっとな。」春菜ちゃん。

「ね。^^」おにいちゃん。

おおー。

で、ホコリが入らないように気を付けながら、

新しいレンズをかしゃっ。

縦に置いちゃダメだよ。

「で。」春菜ちゃん。

「どう違うのだ?」春菜ちゃん。

ここで解説をするおにいちゃん。

ズームレンズというのは、構図は決めやすい。でも、全体的にピントが合っちゃう。

単焦点レンズだと、主役を決めやすくなるのだ。

主役にピントを合わせて、背景をぼかすのがテクニック。

「ボケたー!^^」春菜ちゃん。

「もっと寄ってごらん。」おにいちゃん。

「さらにボケたー!^^」春菜ちゃん。

「すごーい。プロみたいだぞ。」春菜ちゃん。

「あとはど真ん中をはずすテクニックが必要かな。」おにいちゃん。

「む?」春菜ちゃん。「おしえて。」

「縦3、横3で線引いたところに主役を置くのだ。^^」おにいちゃん。

「グリッド、ON☆」おにいちゃん。

「この十字に合うように撮ってごらん。」おにいちゃん。

「こうかな? えい。」春菜ちゃん。

パシャッ。

「見栄えが良くなった☆」春菜ちゃん。

「わーい。^^ ありがとう!」春菜ちゃん。

「というわけで、明日の朝飯当番よろしくね。」おにいちゃん。

「うん。わーい。^^」春菜ちゃん。

おにいちゃんは、写真が好きだった。

ジェットコースターの宙返り部分で撮って、みんなを驚かせたことがあった。w

そしていつか、天体写真を撮ろうと思ってたのだ。

目指すは反射望遠鏡。^^

望遠鏡とカメラをつなぐアダプターみたいなのがあるから。

そこで、カメラのバルブ機能を使って。

赤道儀撮影。^^

バルブって。要は。

シャッター押しっぱなしね。^^

口径12cmもあれば。

すごい銀河が撮れるのだ☆

兄妹は同じ趣味を共有していた。

これがなかよしこよしの秘訣である。

「そーだ。」春菜ちゃん。

「ん?」おにいちゃん。

「今度、バレーボールの試合なんだけど。」春菜ちゃん。

「撮りにきてー☆ 活躍するから。」春菜ちゃん。

「おっけー☆ 2階席で構えとく。」おにいちゃん。

「おーっ。」みんな。

それぞれの選手がコートの隅に散らばっていく。

春菜はライトにいた。

「そーれっ。」

先輩のジャンピングサーブ。

回転レシーブ。

ちゃんとセッターに返る。

と同時にAクイック。

ずばーん。

「え。」春菜ちゃん。

「たらーん。」春菜ちゃん。

強いんですけど。^^;

episode21

春菜は、結構頑張った。

エースストライカーがブロックに阻まれる前に、セッターからバックハンドトスがくる。

春菜はライトに走り込み、そのままアタックした。

羽根がついたような高さから。

ずばーん!

きゅっきゅっ。

「おーすごいすごい。^^ ぱちぱち。」おにいちゃん。

「シャッター切ったぞー☆」

春菜は、セッターからのボールを少し前に置いて。

テーピングを巻いた指でジャンプ最高点に到達しようとして固まっていた。

「で。これがその写真。^^」

「わーありがとう☆」

「瞳が活き活きしてるぞなもし。かわいく撮れてる。^^」おにいちゃん。

「で、あとのは?」春菜ちゃん。

「さささっ。」おにいちゃん。

「ちょっとなんで隠すのよー?」春菜ちゃん。

「いやいろいろあって。^^;」おにいちゃん。

「なにこれー?」春菜ちゃん。

本マグロの大トロの写真だった。w

「私食べてないよ? どこだこれ。」春菜ちゃん。

「いやだからいろいろあって。^^;」おにいちゃん。

「誰と行ったのー? ずるーい。」春菜ちゃん。

「ん? てかこれ。」おにいちゃん。

「祝勝会気味じゃない?」春菜ちゃん。

「サークルの。あはは。」おにいちゃん。

「あんた社会人だろーが。」春菜ちゃん。

「これね、22mmで撮ったんだ。」おにいちゃん。

「そんなこと聞いてなーい。ちっちっ。」春菜ちゃん。

「連れてけ。w」春菜ちゃん。

「えー。」おにいちゃん。

というわけで連れてかされるおにいちゃん。

お寿司である。

「回らないとこないかな。」バイクの後ろの春菜ちゃん。

「あいにくそういうお店は知りません。」おにいちゃん。

「はいカーブ。左に寄ってー。」おにいちゃん。

「きゃー。」春菜ちゃん。

バイクで2ケツで走る兄妹は。

傍目には、誰がどう見ても仲のいいカップルだった。

横断歩道の前で停車するおにいちゃん。

きっ。

「ん?」春菜ちゃん。

「なんかよくしってるでっかいのがいない?」おにいちゃん。

「どこだ?」春菜ちゃん。

「あ。」春菜ちゃん。

青木くんだった。

「パスパス。次行ってみよー☆」春菜ちゃん。

「徒歩だね、彼ね。」おにいちゃん。

次の信号で止まる兄妹。

回るお店だった。

「はいいらっしゃーい。2名様? カウンター席になりますが。」おばちゃん。

「はーい。」ふたり。

「いいな春菜。金皿は禁止だぞ。」おにいちゃん。

「えー。」春菜。

「オレンジは何枚食べてもよろしい。」おにいちゃん。

オレンジは100円。金は500円だった。w

「カメラ持った?」春菜ちゃん。

「もちろん。」おにいちゃん。

第4コーナーの手前あたりを過ぎて。

そこに海老が流れてきた。

「一着は海老の模様です。海老、直線に入った。」おにいちゃん。

「解説しないでよもう。^^;」春菜ちゃん。

「そのまま。」おにいちゃん。

パシャっ。

「てか順番は入れ替わんないだろー。」春菜ちゃん。

「いいの。w」おにいちゃん。

金皿に手を伸ばそうとしてためらう。

「赤で。」おにいちゃん。

あと。

「あ。茶碗蒸しくださーい。」おにいちゃん。

「流れてきますよー。」おばちゃん。

「え。そうなんですか。はーい。」おにいちゃん。

うぃーん。

うぃーん。

「あいらっしゃいませ。1名様?」

すとん。

「おそーい。かもめ。」春菜ちゃん。

電話で待ち合わせていたかもめだった。

「もう1皿いったよ?」春菜ちゃん。

え。もしかして。

「いや、呼んでない、呼んでない。」おにいちゃん。

「あのでっかいのだろ?」おにいちゃん。

「かもめちゃん、いらっしゃーい。」おにいちゃん。

軍艦が流れてきた。

「ねぎとろー♪」春菜ちゃん。

「ちっこい頃から好きだねそれ。」おにいちゃん。

「自分ものくせに。」春菜ちゃん。

「もーらい。」春菜ちゃん。

春菜の皿が次々と盛られてゆく。

おにいちゃんはそわそわしてきた。

「け、煙が・・・。かもめちゃん、ちょっと席代わって。」おにいちゃん。

「また煙草ー?」春菜ちゃん。

「しょうがない兄だなもう。」春菜ちゃん。

入口に走るおにいちゃん。

店員のおばちゃんに、たばこのポーズを見せる。

うぃーん。

どすん。

「あ。すみませーん!」青木くん。

あいたた。

「あ。君は・・・。」おにいちゃん。

「さっきバイク見たんで。」青木くん。

「よくわかったねー!」おにいちゃん。

「追跡してきたらここに。」青木くん。

おにいちゃんの後方をきょろきょろしている青木くん。

その光景は、まるでバスケ選手のようだった。

フェイントに走るおにいちゃん。

それを阻もうとする青木くん。

「だから煙草吸いに外に出るんだって。」おにいちゃん。

「あ、すいません。」青木くん。

一服して帰ってきたおにいちゃん。

「はじめてうざいと思った。^^;」おにいちゃん。

「でしょ。」ぼそっと言う春菜ちゃん。

ひとり離れたところで急速に高く皿を積み上げる青木くん。

「てかね。春菜。」おにいちゃん。

「社会人になったら。」おにいちゃん。

「あんまりゆとりがあると貧乏だし。w」おにいちゃん。

「お金があると超忙しいぞ。」おにいちゃん。

「どっちがいかった?」春菜ちゃん。

「前者。」おにいちゃん。

「めっちゃ頑張ってお仕事して、身体壊したら意味ないもんね。」おにいちゃん。

「それに、出世街道のラビットレースってなんか寂しさを感じる。」おにいちゃん。

なんかあったな。w

「うん。」春菜ちゃん。

「私も同感です。」かもめちゃん。

「一所懸命さと真面目さは必要だけど。」かもめちゃん。

「ゆとりがないと、人間らしさをなくしちゃうっていうか。」かもめちゃん。

「らしさをなくしちゃったらおしまいですよね。」かもめちゃん。

ずずーん。

現在、休職中のおにいちゃん。

人生長いもんね。^^

ゆっくり、マイペースでじっくり考えればいいのだ。

海老みたいに単独でゴールすることもできるけど。

いろんな世界を見て。

自分らしさを失くさずに、前を向いて走ること。

たまに足を止めてもいいんだよ。

無理せず、ゆっくりと。

「あ。」春菜ちゃん。

「もういない。」春菜ちゃん。

高々と積み上げられたお皿を数えるおばちゃん。

目を丸くしている。

「2400円になります。^^」おばちゃん。

「いやしかしあんたすごいなぁ。」おばちゃん。

「ものの10分でこんなに食いよる。」おばちゃん。

やたらとおばちゃん受けのいい青木くん。

「またおいで。これサービス券。」おばちゃん。

「いや気持ちいい食いっぷりやった。^^」おばちゃん。

ため息とも軽いげっぷともとれる吐息を漏らす青木くん。

春菜は、ひとり、もの思いにふけっていた。

episode22

「富士山っていいよね。」絵葉書を見ながら、かもめちゃん。

「富士山かぁ。まだ見たことなーい。」春菜ちゃん。

前回の帰省で、反対側に座ってた春菜ちゃん。

まだ富士山は未体験ゾーンだった。

「5合目でいいから行きたい。」春菜ちゃん。

「てっぺんはちょっと。^^;」春菜ちゃん。

「てか。すごーい!」かもめちゃん。

「なんだなんだ?」春菜ちゃん。

「これ、消印、富士山だよ、ほら!」かもめちゃん。

「ホントだ!頂上って書いてる!」春菜ちゃん。

てことは?

「ポストがあるのかなぁ?」ふたり。

「どうする? 行く?」かもめちゃん。

「行くしかないでしょ。」春菜ちゃん。

というわけで。

春菜とかもめとおにいちゃんは、富士山の五合目にいた。

来る途中に西湘バイパスで富士の姿は焼き付けていたが。

かもめちゃんが箱根のカーブを、タイヤきゅるきゅる言わせながら走って。

おにいちゃんがシートベルトを慌てて締めたのが忘れられない。

「おーい。行くぞー。」おにいちゃん。

「うん。行こっ☆」春菜&かもめ。

杖が貸し出してあった。

よいしょ、よいしょ。

「おにいちゃん、富士登山、あったよね、昔?」春菜ちゃん。

「うんうん。大学の後輩と登った。」おにいちゃん。

「プロは2時間半で登るって言ってたぞ。」おにいちゃん。

「それは無理。あははは。はーはー。」春菜ちゃん。

「てかこれー?」かもめちゃん。

「和田町の坂でいうと何段?」かもめちゃん。

「それは言わないほうがいいと思う。」おにいちゃん。

「ヒルトップに着くまで何時間かかるかなぁ?」

間もなく六合目が見えようとしていた。

「つかれたー。ひー。」おにいちゃん。

「だらしないなぁ、もう。」春菜ちゃん。「ちびっとは妹の顔立ててくれてもいいのに。」

「煙草のせいだよー。あのときはノンスモーカーだったから。」おにいちゃん。

眼下に広がる景色。

今日はてっぺん付近に雲がかかっていた。

山っていいね。

「いつかね、春菜。」ちっこい頃のおにいちゃん。

「富士山に登るんだ。」おにいちゃん。

「これ、見て。葛飾北斎の『赤富士』。」

「ご来光を拝みたいよー。」おにいちゃん。

「春菜も行くー♪」春菜ちゃん。

「よしよし。登ろうね☆」おにいちゃん。

葛飾北斎といえば。

「富嶽百景」で有名な絵師・版画師である。

おにいちゃんのお部屋には、この絵葉書と、The New Yorkerのポスターが飾られていた。

でっかい世界を見てきたいという日本人として、将来を夢見ていたのだった。

The New Yorkerというポスターには、手描きで街路と通りの名前が書かれてあった。

「富士山でおみすび食べる歌ってなかったっけ?」おにいちゃん。

「ひゃーくにーんで食べたいな♪ 日本一のおむすびを♪」かもめちゃん。

「ぱっくんぱっくんぱっくんと♪」春菜ちゃん。

「ん?」春菜ちゃん。

「これって、『一年生になったーら♪』じゃなかった?」春菜ちゃん。

「そかも。」かもめちゃん。

「おかしい。う”ー。」おにいちゃん。

山頂手前で。

おにいちゃんの膝がおかしくなった。

「待った。ちょっと待て。」おにいちゃん。

「笑ってるよ。w」おにいちゃん。

「もー。」ふたり。

「ここまで来て帰るわけにはいかないでしょ?」ふたり。

「ヘリ呼んでいい?^^;」おにいちゃん。

「だめ。^^;」春菜ちゃん。

「もう年齢なのかなー。^^;」おにいちゃん。

「あ。山頂見えてますよー!」かもめちゃん。

「おお。行くか。よいしょ。」おにいちゃん。

「がんばれ、がんばれ。よいしょ、よいしょ。」後ろから押してあげる春菜ちゃん。

「負うた子に頭を垂るる稲穂かな。」おにいちゃん。

「それ違う。^^;」

「なんて意味?」

「むかしおんぶしてあげた子に頭を下げるおにいちゃん、ってとこ。」おにいちゃん。

「『混ぜるな危険』ですよ。」かもめちゃん。

「受験生も読んでますから。」かもめちゃん。

というわけで。

「負うた子に教えられ浅瀬を渡る」と「実るほど頭を垂れる稲穂かな」のセットね。^^

「ひー。着いたぁ。」おにいちゃん。

「わーい。てっぺんだぁ♪」ふたり。

「記念撮影いきまーす。」かもめちゃん。

「じー・・・。」

パシャ。

富士頂上の郵便局を見つけた三人。

絵葉書だね☆

田舎の両親にお便りする。

かもめちゃんは、横浜のおうちと。

天国の先輩にお便りをした。

「かもめ、これどこ宛?」春菜ちゃん。

「のー! 見るなー!」かもめ。

「天国って書いてなかった?」春菜ちゃん。

「だって。」かもめ。

「ここがいちばん天国に近いんだもん。」かもめちゃん。

episode23

戦隊モノで育ったふたり。

「いいか。君たちが大きくなったら。いつか。」パパ。「地球を救う子に育つんだぞ。」

「はーい。^^」ふたり。

春菜のおうちにも変身ベルトがちゃんとあった。

仮面ライダーのやつである。

しかし、そのベルトをつけさせられるのは、決まってパパだった。

「ちゃんと跳んでー。」幼き日の春菜ちゃん。

「跳んでー。」おにいちゃん。

「え。」パパ。

「スカーフはこっち向きなの。」おにいちゃん。

これはコスプレショーではないのか。

「はいいくよ。チーズ。^^」春菜ちゃん。

「とおっ。」若かりし日のパパ。

その変身ベルトがパパの部屋から出てきた。

「おーい。これ覚えてるか?」パパ。

「わー懐かしい!^^」春菜ちゃん。

「ママー? 電池ある?」パパ。

「あるある!」ママ。

「明日忘年会でしたっけ?」ママ。

「もちょっと先。」パパ。

「スカーフもあるぞ。ほら。」パパ。

「んー。^^;」スカーフはいいや。

慌ててカーテンを閉める春菜。

近所の人に見られたらただごとではすまない。

「なんか、ちっこい頃に。」春菜ちゃん。

「いろいろ要求してごめんね。」春菜ちゃん。

「いいこと言うね。」パパ。

「あ。電池きた。」パパ。

「そうだ。ちょっと待ってて。」春菜ちゃん。

カメラを持ってくる春菜ちゃん。

「ポートレートだよね? これ。」春菜ちゃん。

「はいそこピースしない。」春菜ちゃん。

「止まって。」カシャ。

「跳んで。」カシャ。

「へーん?」カシャ。

「しん!」パパ。

「とおっ。」パパ。

パパが突然崩れ落ちた。

「パパ!」春菜ちゃん。

「いってー! きた。腰と足。ダブル。^^;」

「激写したんだけど。」春菜ちゃん。

「ライダー? 大丈夫?」春菜ちゃん。

「ぎっくり腰と、これは。」パパ。

「あー痛風ね、これね。」春菜ちゃん。

「丸いのがぽこっ。^^;」春菜ちゃん。

「有名な歌があるよね。」春菜ちゃん。

「あれか。」パパ。

出-たー出-たー♪ 痛風♪

まぁるいまぁるいまんまるい♪

痛風結石いーたーい♪

合唱する春菜ちゃんとパパ。

「さわっていい?」春菜ちゃん。

「のー!」パパ。

てか。

「まだ変身してないから。」パパ。

「?」「変身するとどうなるの?」春菜ちゃん。

「もしかして、素顔で写ってない?」パパ。

「あ。」春菜ちゃん。

「ということは。^^」春菜ちゃん。

ダッシュして逃げる春菜ちゃん。

「ん? あ。ネガ! じゃなくてメモリカード!」パパ。

「くー。」パパ。

痛いのよね。痛風はね。酒飲みは50歳までには来るからね。

だから君も気をつけなさい。

くれぐれも、春菜の送ってくる画像は開封しないように。

以上。

パパ。

一風変わったメールがおにいちゃんに届いた。

かなりウケている。

これは。

おやじ的には見てほしいんだろうか。それとも?^^;

息子の気持ちをわかってないのだろうか。

おにいちゃんは、いやがらせではなく、それを定期入れに入れるつもりでいた。

友達は大喜びした。

いつか、いつの日か。

自分にも息子か娘ができるだろう。

そのときに。

やっぱり、自分は息子の前で、同じことをやってあげたい。

ありがとう、パパ。

僕のヒーローは、パパだよ。

なんてね。

これは春菜に宛てたメールだった。

「ヒーローかぁ。」春菜ちゃん。

「ひとりいるじゃん。」かもめ。

「ん?」春菜ちゃん。

「変身はもうしないぞ。さすがに。」春菜ちゃん。

「じゃなくて。あれ。」かもめ。

「ばかー!」春菜ちゃん。

遠くで目が輝く青木くん。

「あれはヒールだっつの。」春菜ちゃん。

「いや、でも悪役じゃないですし。」駆け寄ってくる青木くん。

「なんで聞こえてるのよー!」春菜ちゃんとかもめちゃん。

「てか。あんた声でかすぎ。」春菜ちゃんとかもめちゃん。

最近、息がぴったりと合う。

「そうだ。時間なんだった。」くるりと向きを変える青木くん。

ずるっ。

「ちょっとヤボ用ありますんでこれで。」青木くん。

「え?」春菜ちゃん。

プロレス同好会のビラに、地方遠征という文字が見えた。

「遠征するんだ。」かもめちゃん。

「え。九州?」春菜ちゃん。

「わざわざそんなとこまで行かんでも。」春菜ちゃん。

「てかそれ地元ー!」春菜ちゃん。

「来るでない。」春菜ちゃん。

で。

読者のみなさんはいつぞやに消えた回を思い出してもらいたい。

そそ。

パパ、ママがカラオケ帰りにばったり出会ったのが青木くんなのだ。

それは冬休みのこと。

からんからんからん。

「あれ。」青木くん。

「お帰りな・・・ってか、えーっ!?」

「春菜ただいま。いま偶然会ったもんだから。」パパ。

「偶然って、ここ福岡。^^;」春菜ちゃん。

「あんたなんでこんなところに。」春菜ちゃん。

「八春菜さん。」青木くん。

「↑なんだこれは作者。」春菜ちゃん。

「えーん。おにいちゃーん。」春菜ちゃん。

「変なのがついてきたー!」春菜ちゃん。

「むむっ。」おにいちゃん。

「臥体、前よりでかくなってない?」おにいちゃん。

「そかも。逃げるー。」春菜ちゃん。

わいわい賑やかに、カニ鍋を食べる一家。

「そうそう。あのときのあのPC、ばっちり治ってねー。」ご機嫌のパパ。

「こうきたらどうくるの?」おにいちゃん。

「そこは腕を取ってこう。」青木くん。

「どうしよー。」春菜ちゃん。

わいわい。和やかムード。

そこへずかずかと上がり込んでくる足音が。

「ん? なんかこわい。」春菜ちゃん。

「誰だろう?」パパ。

ママの叫び声。

「んーっ、んーっ。」口を手で押さえられて動けない。

「どうしたの?」おにいちゃん。

がちゃ。

「なんだキミたちは!」パパ。

「るっせーんだよ。とっとと金目のものよこせ!」

「え。」春菜ちゃん。

これはもしかして。

「もしかして、リアル?^^;」おにいちゃん。

強盗だった。

キャー。

「どうする? いく?」おにいちゃん。

敵の数は3人だった。

ビールを振ってかけるパパ。

なぜか一緒に振ってる春菜ちゃん。

足をさかさまにねじるおにいちゃん。

めっちゃ嬉しそうな青木くん。

勝負は、第1R、TKOで青木くんの勝利だった。

レスラーに凶器攻撃はあまり怖くなかった。

あばら骨の音が強烈に耳に残っている。

簡単にのしてしまった。^^;

「警察に通報したよ。もう大丈夫?」春菜ちゃん。

「超怖かったわよ!」ママ。

「あーびっくりした。」おにいちゃん。

「てか僕はこれで。」青木くん。

「ちょっと暴れすぎちゃったんで。」青木くん。

実名出すからあんまり関係ないのだが。w

翌朝の新聞の三面記事に出た青木くん。

地方遠征の恰好の宣伝になった。

「明日。僕がリングに上がったら。」

「いつもと違う自分を見せられると思います。」

しかし、それにしても。

青木くんがいてくれてよかったね。

でも。

青木くんが来なかったら。

玄関の鍵は忘れてなかったかもしれない。^^;

episode24

春菜のパパは、忘年会の二次会場にいた。
社内ボーリング大会である。

部長に昇格してからというもの、胃袋はボロボロに近かった。
できれば気を遣わずに、飲みもほどほどにしておきたかった。
だから、部下が忘年会の二次会会場を伝えたときは、おしりが小躍りしていた。

かぱーん。
カランカランカラン。

「あー。いーぴん残しちゃった。」パパ。
「①番ピンって呼んでくださいよ。」部下。
「てか。」部下。
「①番ピンはずしてるのに、なんで他のが倒れてるんですか。」部下。
「いい? ここね。回転かけるとね。」パパ。
「ピンがはじける。」パパ。

ボーリング用の、指を痛めないやつを持ってるパパ。
’60年代を生きた証である。

「部長、第2投ですよ!」部下。
「ここから、こう立って。」パパ。

美しいフォームから音もなくレーンにボールが載る。
するするするする。

かぱーん。

「ナイススぺ・・・あ?」パパ。
「あれ? ⑤番ピンあったの?」パパ。
「それはないだろー。」パパ。
「まーまー部長。」部下。
「僕が挽回しときますから。」部下。

チーム対抗戦だった。

「いけー! 石黒ー!」応援。
「緊張しますね。汗拭いて。ぶおーん。」部下。

何かにつまづく石黒さん。

「あっと。おっ。」石黒さん。
「気を取り直して。いきます。」石黒さん。
「第、一投を。」石黒さん。

ごとん。
しゅるしゅるしゅるしゅる・・・・。

かぱーん。

「おおっ!?  残るか?」応援。

最後の1ピンが、いやがらせのようにレーンに残る。

「惜しーい。でもすごいね。」パパ。
「まかしといてくださいよ。」部下。
「スペアには、秘訣があるんです。」部下。

スコアは、8ピン差で敵チームがリードしていた。

「ここで僕がスペア取ったら、10点プラスじゃないですか。」部下。
「で。次の一投を部長が決める。今、敵さんはスペア失敗しましたから、これで逆転も可能ですよ!」部下。

「優勝は、有給7日とハワイ旅行である!」社長。
「ええー!」
「わー。」

歓声で聞こえない営業部。

「社命である。スペアを取るように。」パパ。
「取ったら、1件分の契約と同じ扱いにしてくれますか。」抜け目ない部下。
「うむ。てか待って。」パパ。

芝の目を読むように座り込む部下。

キラーン☆

「腕がここだから、こう。」部下。
「あれ? 回転かけないの?」パパ。

ごとん。しゅるしゅるしゅるしゅる・・・。

ぱかっ☆

「おおっ。ナイススペア!^^」パパ。
「ぱちぱちぱちぱち。」新卒の晴美ちゃん。
「てかあれだね。石黒さんって。」晴美ちゃん。
「社外では活き活きしてるよね。」晴美ちゃん。

八の字まゆ毛で有名なその部下は。
スコアの計算に余念がなかった。

現在、158点。(確定分。):営業部。vs 166点。:人事部だった。

ぱちぱちぱちぱち。(そろばんの音。)

「緊張するなぁ。」パパ。
「えっと。全部ストライク取ったらどうなるの?」パパ。
「まず間違いなく逆転ですね。」部下。
「てか部長、プレッシャーに強いタイプですか?」部下。
「なんでんなこと訊くの?」パパ。
「応援の仕方が変わりますから。」部下。

「んじゃ、強い版で。」パパ。

おおっ。

解説をはじめる部下。

「苦節20年。会社ひとすじに生きてまいりました。家族のために、この一投。部長が魂を込めます。」部下。
「ちょっと待ってよ。w」振り返るパパ。
「いろいろ思い出しちゃうじゃない。」パパ。
「てかなんか演歌くさい。」晴美ちゃん。
「いけー。」晴美ちゃん。

「待っててね、ママね。」パパ。「あー胃が痛い。」

あまり状況は変わらなかった。

かぱーん。

おおおー!

起死回生のストライク。

ボールが、まるで生きているようにカーブの孤を描いた。

二投目。

どきどきどきどき。

「娘さんが見てますよー。」部下。
「えっ。」またしても振り返るパパ。
「春菜、どこ?」パパ。
「はっ。」パパ。

ごろごろごろごろ。かぱーん。

「あー惜しい。」観客。

左端が1ピン残っちゃった。

「はー終了。」パパ。
「何言ってるんですか。これ10フレだから。あと1回チャンスありますよ!」部下。
「ほんと?」パパ。
「最後、決めちゃってください。」部下。
「あれ苦手なんだよー!」パパ。
「ガーター近いじゃない。」パパ。
「キミが行ってきて。ちなみに。」パパ。

「プレッシャーには弱いよね?」パパ。

いいことを教えてあげよう。
こんなとき、左端から投げてはならない。
1/2の確率でガーターにするよりは。
・と↑を結んだ線上にそのピンを合わせればよいのだ。
ガーター防止にも、スペア狙いにも有効である。

「適当でいいよー。」パパ。
「優勝かかってるんですよ、部長!」晴美ちゃん。
「いやこれも仕事のうち。」パパ。
「?」晴美ちゃん。

どうしよう。やばい。
緊張してきた部下。

「どうしたの? 汗拭いた?」パパ。
「えっと。その。」部下。
「滝のように汗が。」部下。

野球部だった部下のことを知る部長。

「えっと僕。体育会で。甲子園目指してました!」若かりし頃の部下。
「そうか、じゃあ大舞台には慣れてるな。」若き日のパパ。

「精一杯頑張ります!」

「かっとばせー! 石黒。」応援団。「⑦番倒せーよ!」

ざわざわざわざわ。

みんなの観てる前で、勝手にピンがクリアされてゆく。

「え。これ。押しちゃいけなかった?」パパ。
「さっき押しちゃったんだけど。」パパ。
「そんなー。」部下。

リセットボタンを押しちゃったパパ。

「ねーねー、取り直し。」

場内アナウンスが終了を告げていた。

優勝は人事部になった。
営業部敗退。^^;

「優勝したら何だったんですか?」部下。
「ハワイとかなんとか言ってる。」晴美ちゃん。
「ええーっ。」パパ。

そして反省会が開かれるのだった。

episode25

「ねー春菜ぁ?」かもめちゃん。
「んー?」春菜ちゃん。
「あたしね。イタリアに飛ぼうと思う。」かもめちゃん。
「はーっ? イタリア!?」春菜ちゃん。
「でね。2年くらい修行を積んで。」かもめちゃん。
「うん。」春菜ちゃん。
「パスタ屋さんになるのだ☆」かもめちゃん。

味と勘のいいかもめちゃん。

「資金なんてあるの?」春菜ちゃん。
「ふっふっふ。これを見たまえ。」かもめちゃん。
「なんだこれ。」春菜ちゃん。

預金通帳をこっそり見せるかもめちゃん。

「なんか0がいっぱい並んでない?」春菜ちゃん。
「いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、・・・。。。」春菜ちゃん。
「えええええ。」春菜ちゃん。
「なんで3,000万円も持ってるの!?」春菜ちゃん。
「ビールが化けた。」かもめちゃん。
「化けたってあんた。」春菜ちゃん。
「時給いくらー?」春菜ちゃん。

ここで読者のみなさんは思い出してもらいたし。
プチ株で、「どうせ預けてても殖えないし。」の遊び金が。
かもめの効果的な投資で、とんでもない額に膨れ上がっていたのだ。

「分散投資ね。はいね。」春菜ちゃん。
「あまり詳しくは言えないんだけど。」かもめちゃん。
「とらたぬシート的には、予想以上の収益なのだ。」かもめちゃん。
「えと、春菜?」かもめちゃん。
「ん?」春菜ちゃん。
「返しなさい。」かもめちゃん。
「あっち。」春菜ちゃん。
「こらー!^^;」かもめちゃん。
「春菜も行く。」春菜ちゃん。
「あんたはスチュワーデス目指してるんでしょーが。」かもめちゃん。

我に返る春菜。

「あ。じゃ、乗せたげるから。」春菜ちゃん。
「そういう意味じゃなくて。」かもめちゃん。
「夢はしっかり見とるのかね。」かもめちゃん。

夢ねー。

夢だよ夢。

夢は現実にしなくちゃ意味がない。
そいえば。受験のときも。受験指導で。

「夢はでっかいほうがいい。」先生。
「でもな。」先生。
「現実的に考えて。算数の問題だよ。」先生。
「?」春菜ちゃん。
「センター、英語で400点取らなくちゃ無理だよ。」先生。
「やだー!」春菜ちゃん。

C判定を喰らっていた春菜ちゃん。

「行くんだもん。」春菜ちゃん。
「500点取ってやる。」春菜ちゃん。
「おにーちゃーん。」春菜ちゃん。
「英語で500点、どうやったら取れる?」春菜ちゃん。

「それは無理。w」おにいちゃん。
「なんでー。」春菜ちゃん。
「だって、センター、英語は200点満点だから。」おにいちゃん。
「そんなぁ。」春菜ちゃん。

あれからよく頑張った。

「夢は夢のまんまじゃいけないんだぞ。」春菜ちゃん。
「だからそれは君のためにある言葉であって。^^;」先生。
「行くんだもん。第一志望は譲らない!」春菜ちゃん。
「よーし。」春菜ちゃん。
「まて。」先生。
「数学は小学生であることを忘れずに。」春菜ちゃん。
「あさってまでに卒業します!」春菜ちゃん。

おにーちゃーん。

「3次関数ってなに?」春菜ちゃん。

こけるおにいちゃん。

「受験生のセリフじゃなーい!」おにいちゃん。
「それ高1で習ったろ?」おにいちゃん。
「寝てた。」春菜ちゃん。
「起きろー。」おにいちゃん。
「予備校に行きたいの?」おにいちゃん。
「やだもん。」春菜ちゃん。
「で?」おにいちゃん。
「教えて。^^」春菜ちゃん。
「う”ー。」おにいちゃん。

Lesson 1:

「いいか春菜。関数っていうのは。」おにいちゃん。
「グラフに描けば全部わかる。」おにいちゃん。
「それがわかんないんだって。」春菜ちゃん。
「(x+5)(x+3)(x-2)=0のとき、f(x)軸とxの交点を求めよ。」おにいちゃん。
「?」春菜ちゃん。
「ん?」おにいちゃん。
「あたしが?」春菜ちゃん。
「当たり前だろー!^^;」おにいちゃん。
「よーく考えよう。」おにいちゃん。
「ふむ。」春菜ちゃん。
「0に何かけても0になるのはわかる?」おにいちゃん。
「わかる。」春菜ちゃん。
「ということは。カッコの中が0になったら、左辺と右辺が等しくなるわけだ。」おにいちゃん。
「うにゅ。」春菜ちゃん。
「x+5が0になります。xはなーんだ?」おにいちゃん。
「マイナス5ー!」春菜ちゃん。
「ということは残り二つのxの解は?」おにいちゃん。
「解?」春菜ちゃん。
「そこからかよ。^^; あと2つ答が出るでしょ?」おにいちゃん。
「マイナス3と、2ー!」春菜ちゃん。
「よくできました。」おにいちゃん。

レッスンは続く。

「ママ上。お夜食は11:45までで結構ですから。」春菜ちゃん。
「待ちなさい。」ママ。
「それはお願いになってない。」ママ。
「ください、でしょ。ください。」ママ。
「えー。11:45までにお願いいたします。」春菜ちゃん。
「よろしい。脂肪分カットね。」ママ。
「わーい。ありがとう。」春菜ちゃん。

カレンダーがあと2日になったとき。

「奇跡だよ。おにいちゃん。」春菜ちゃん。
「過去問解いたら、数学、8割取れた。」春菜ちゃん。
「おおおおお。」おにいちゃん。
「やればできるじゃないか。」おにいちゃん。
「計算あってるのか?^^;」おにいちゃん。
「あとは。」おにいちゃん。
「本番までのコンディション次第だ。」おにいちゃん。

「ぶるっ。」春菜ちゃん。
「なんでー。」春菜ちゃん。
「だれもいないよー。」春菜ちゃん。

時計は朝の8時。試験時間は10時からだった。
思った以上に早く到着してしまった。

「ま。遅刻するよりはいいだろ。」春菜ちゃん。
「にしても。」春菜ちゃん。
「さむーい。」春菜ちゃん。

大学の構内に案内されたのは1時間も後だった。
かたまりんぐの春菜ちゃん。

そして。

試験会場の席は。

ストーブの隣。^^;

「わーい。」暖を取る春菜。
「試験を始めます。スタート!」試験官。
「ぽやーん。あったかーい。」春菜ちゃん。

ちくたくちくたく。

「あれ? 英語が。」春菜ちゃん。
「わかんないぞ。あせるな。」春菜ちゃん。

「英数は、毎日やってないと確実に勘が鈍るからな。」先生。
「しっかり毎日手を休めることのないように。」先生。
「とくにキミの武器はなんだ?」先生。
「英語ー。」春菜ちゃん。
「ぬかるべからず。」先生。

「しかく1、わかんない。」春菜ちゃん。
「2も。^^;」春菜ちゃん。
「ぬくーい。」春菜ちゃん。

脳くんが起きてくれない春菜ちゃん。
思えば数学漬けの毎日だった。
英語をやらずに来たことが裏目に出ていた。

どうした春菜。伝家の宝刀は抜けるのか。

「3番は簡単だぞ。ふむ。」春菜ちゃん。
「あれ? 2も。」春菜ちゃん。
「残り30分です。」試験官。
「1は。ん?」春菜ちゃん。
「なんで読めなかったんだろ。」春菜ちゃん。

すらすらすらすら。
時間は余ってしまった。

「ただいまー。春菜、受験に一切の悔いなし。」春菜ちゃん。
「えー。」ママ。
「これで落ちたら納得いくもん。」春菜ちゃん。
「そう。よかったわね。」ママ。
「あとは。」春菜ちゃん。
「合格発表だよね。」春菜ちゃん。

その合格発表から3年後。
春菜は大学の正門に立っていた。

「わー受験生だ。」春菜ちゃん。
「もう少しだね。しっかり頑張れ☆」春菜ちゃん。
「思えば遠くへきたもんだ、か。」春菜ちゃん。

そのとき、おにいちゃんは仕事先でひーひー言っていた。

「こらー。ここの校正甘いだろうが。」上司。
「あれ? できてませんでしたか。」おにいちゃん。
「もっかい0から。まったく、何を見ていたの?」上司。
「ごめんなさい。ひええええ。」おにいちゃん。
「明日また見るから。忙しいと思うけど、しっかり。」上司。
「はい。」おにいちゃん。
「頑張れ。」上司。

社会に出ると、80点ではすまされないのだ。
お客様に対しては、満点で当たり前。
落ち度がそのマイナス20点分なのだ。
だから、気を抜いてはならない。
おにいちゃんは、ようやくそのことがわかりかけている頃だった。

「春菜ー。」おにいちゃん。
「遊べるのは今だけだぞ。」おにいちゃん。
「やだ。」春菜ちゃん。
「しっかり遊んでおきなさい。」おにいちゃん。

あー。

そういう意味だったのね。

episode26

かもめはミラノにいた。

「行っちゃやだよぅ。」春菜ちゃん。

「寂しいよー。」かもめちゃん。

空港で抱きあって涙したのが嘘のような、晴れ晴れとした表情だった。

父と、ミラノへ。

目指すは、友達のおうちの近くのお店だった。

「さてこれから2年か。」かもめちゃん。

「2年で上がるかな?」かもめちゃん。

慣れない、横に広いリラの桁数がわからないかもめちゃん。

大丈夫なのか。w

一万リラで、えーと。

ん? 1936.27リラが1ユーロ?

ユーロって、ヨーロッパの通貨単位で、ポンドでいうと・・・?

「???」かもめちゃん。

「そういうときはね。」かもめちゃんパパ。

「珈琲かワインのお値段で判断すればいいんだよ。」かもめちゃんパパ。

「珈琲が何杯分で、ワインだと何本分、って。」かもめちゃんパパ。

ここで作者は書き足さなくてはならないことがある。

—– —– —– —– —–

リラ=1/14円だと思え。^^;

そう。そこのイタめしが好きな、おしゃれにお金かける女の子とくにだ。w

「140,000リラ使ったんだけど、君のためなら全然平気。」

「えーっ。^^ うれしい。そんなに!?」

お父ちゃん発動。

バカちんが。w

桁がわかってない桁が。^^;

まだピンときてないだろう?

14万=1万だと思え。

まー15を掛けなくちゃ元が取れないと思え。w

147,000リラってことは。

すなわち。

1万円に等しいのだ。^^;

147,000リラ、君のために払ってくれた紳士には申し訳ないが。

それは1万円に等しいのだ。

お父さんにして、一本。w

ゆーしー?

横に桁数がいっぱいなイタリア。

リラには十分に気を付けて。

珈琲一杯がそんなに高くないことに気づくまでは。

まだ国内にいなさい。^^;

—– —– —– —– —–

なるほど。

そうしたら、身近なところの通貨単位がわかってくるのね。

「そしてこれはプレゼント。」かもめちゃんパパ。

「なんだこれ。時計? 文字盤二つあるよ?」かもめちゃん。

「うんうん。」かもめちゃんパパ。

「二国時計。横浜がいま何時かわかるようにね。」かもめちゃんパパ。

「わかった。^^ わーん。帰っちゃやだよー。」かもめちゃん。

「まだ帰らないよ。」かもめちゃんパパ。

「来たばっかりじゃないか。さ。いろんなとこ巡るぞ。美味しいもの修行だ。」かもめちゃんパパ。

「うん。^^」かもめちゃん。

家族旅行ではなく、かもめちゃんは本場のパスタ修行に来たのだった。

片道は、パパと一緒。

ペスと弟くんとママはおうちでお留守番だった。

「いっぱい並んでるところは、美味しいのかな。」かもめちゃんパパ。

「よしここにしよう。本場のパスタだよ!」かもめちゃんパパ。

少し離れたところにあるパスタ屋さん。

海鮮が新鮮なことで有名である。

屋根のひさしが青いお店だった。

「なんだろ? あれ。しゃかしゃかしてる。」かもめちゃん。

「レモンと、バジルと、オリーブオイルかな。」かもめちゃんパパ。

「それを・・・?」

「マリネにかけるのかぁ。」ふたり。

タコのマリネがやってきた。

「ひええええ。」かもめちゃん。

「すごい! 超美味しい! 絶対インポートしよっ!」かもめちゃん。

「海鮮に勢いがあるね。」かもめちゃんパパ。

「すごーい!」かもめちゃん。

「そしてパスタは・・・。」かもめちゃんパパ。

「どかーん。」かもめちゃん。

「あああ来てよかったよぅ。」かもめちゃん。

「ペスカトーレ頼んだの?」かもめちゃんパパ。

「イカスミもあるよ。」かもめちゃん。

「これは、シェアで。」かもめちゃんパパ。

「うんうん。」かもめちゃん。

イタリア語で、マスターのことをmaestroであることを初めて知ったかもめちゃん。

「ん?」かもめちゃんパパ。

「かもめ、お前。」かもめちゃんパパ。

「イタリア語わかんないのか。」かもめちゃんパパ。

「え? えーっ!?」かもめちゃん。

「どうすんだ2年も。w」かもめちゃんパパ。

「だって、スペイン語のカタコトならなんとか通じるって。」かもめちゃん。

「誰か言ってたよー!」かもめちゃん。

「1~10まで言える?」かもめちゃんパパ。

「unoしかわかんない。(涙)でもこれってイタリア語?」かもめちゃん。

「自信なーい。^^;」かもめちゃん。

どよーん。^^;

「耳を鍛えるところから始めないとね。」かもめちゃんパパ。

「ひええええ。」かもめちゃん。

「ねーねーねー。」かもめちゃん。

「ここの味覚えて帰ることにするの、あり?」かもめちゃん。

「帰るか。」かもめちゃんパパ。

「じゃ、この旅行は。」かもめちゃんパパ。

「いっぱいいろんなところめぐらないとね。^^; あはは。」かもめちゃん。

無理をさせない作者。^^;

「あ。でも。」かもめちゃんパパ。

「帰りのチケットが。」かもめちゃんパパ。

「ないよね。(汗)」かもめちゃん。

「そんなときは、いっぱい食べるのだ!」かもめちゃん。

お店のあちこちを目でチェックするかもめちゃん。

色も大切だねー。

テーブルクロスとか、テーブルの形状とか。

絵まですごい。^^;

これ全部でいくらくらいするんだ。

うーん。

ぱちぱちぱちぱち。(そろばんの音。)

お店構える頃には。

株価は伸びてるかな。

お味の結論は、こうだった。

「活きのよさ、その新鮮さ、そして素材の味を損なわない熱加減。」

これに尽きる。

この味に近づくには。

相当年数が必要だろう。

しかし、やるといったらきかないかもめちゃん。

「パパー。」かもめちゃん。

「んー?」かもめちゃんパパ。

「次、ピザ行こう、ピザ。」かもめちゃん。

「ここでオーダーしようよ。」かもめちゃんパパ。

「え? そっか。あるのかな。」かもめちゃん。

「パリパリだぁ。」かもめちゃん。

「これって。グリルとか窯とかあるのかな。」かもめちゃん。

「すごいすごい。^^」かもめちゃん。

かなり満喫しているかもめちゃん。

そーね。

日本に帰ったら。

いろんな高いお店でバイトもできるしね。^^

わかった。

ちゃんと帰ってくるんだぞ、かもめちゃん。

episode27

春菜のパパはピンチに陥っていた。

会社のお取引ですったもんだがあって営業代表として謝罪に行ったのだが。

「どうしてくれるんですか!」お取引先。

「いやまことにすみません。」パパ。

「こんな初歩的なミスを連発するなんて、まったくひどいことじゃないですか。」お取引先。

「大変申し訳ございません。以降、気を付けますので。」パパ。

「なにとぞお許しくださいませ。」パパ。

くー。

お仕事は辛いのだ。

はっきり言ってパパのせいじゃない。

でも。

部長だから、責任を取らなくちゃいけない。

「どうしよう春菜。」パパ。

「もしかしたらクビになるかも。」パパ。

「えーっ。」春菜ちゃん。

「辞表かなぁ。」パパ。

「明日もっかい謝ってこなくちゃ。」パパ。

「てかそれ。パパのせいなの?」春菜ちゃん。

「それは言えない。」パパ。

「うーん。」春菜ちゃん。

「じゃ、練習。^^」春菜ちゃん。

「ええーっ。」パパ。

ケース①

「困るんですよ全く。きっちりしていただかないと。」お取引先。

「まことに申し訳ございません。」パパ。

「謝罪はいいから。」お取引先。

「誠意を見せてください。」お取引先。

「誠意?」パパ。

ここから。

「誠意っていうと、もしかして。」パパ。

「えーっ。」パパ。

「うちお金ないでしょ? 娘売るわけにもいかないでしょ?」春菜ちゃん。

「どうするのよそんとき。」春菜ちゃん。

「困ったなぁ。」パパ。

しくしく。

「泣くなパパ。」「いい策があるから。」春菜ちゃん。

Take 1。

「誠意を見せてください。」お取引先。

「あのよかったらこれ。」胸元から何か差し出すパパ。

「なにこれ。」春菜ちゃん。

王様と私?

「なんで回数券入ってるのよ。^^;」春菜ちゃん。

「あーダメ。裏見ちゃダメ!」パパ。

さささっ。

「ママには内緒で。」パパ。

Take 2。

「それスナックかなんかじゃない?」春菜ちゃん。

「一瞬見えたよ。またきてね♡とかって書いてなかった?」春菜ちゃん。

「誠意を見せてくれたまえ。」春菜ちゃん。

「えーっ。」パパ。

「じゃー、寿司。」パパ。

「寿司? んー。^^」春菜ちゃん。

「もう一声。」春菜ちゃん。

「じゃぁ。」パパ。

「ふぐ!」パパ。

「わーい。^^ コースじゃなくていいよ。」春菜ちゃん。

「ここだけの秘密だからね。」パパ。

「ん?」春菜ちゃん。

「これでいかない?」春菜ちゃん。

「おお。それはいい!」パパ。

というわけで。

春菜ちゃんパパを救うの巻。

「誠意ってものが見えないんですよおたくには!」お取引先。

「まことに申し訳ございません。」パパ。

「あのよかったらこれ。」パパ。

はっ。

これは回数券だからダメで。

「そういうことをされてもね、うちはねー。」お取引先。

そこで定期入れがぽとり。

「ん?」

春菜とママとおにいちゃんの写った家族写真だった。

「あ。ご家族の方ですね。」お取引先。

「昨日練習したんだけどなぁ。ダメだよパパ。」パパ。

「春菜ごめんっ!」パパ。

「私の馘(クビ)と引き換えに・・・。」パパ。

土下座して謝るパパ。

今度は、胸のポケットから財布が落ちた。

ばらけるお財布。

「あ。」

「まだこれ試してなかったっけ。」パパ。

「あのこれよかったら。」パパ。

「なんですかいったい?」お取引先。

「うちの系列に、美味しい河豚のお店があって。」お取引先。

「えっ。」お取引先。

「もしよかったら、ご馳走しますんで。」パパ。

「河豚に免じてお許しください。」パパ。

「河豚ですか。」お取引先。

「河豚で有名なお店?」お取引先の奥さんが出てきた。

「えっ。」パパ。

「あらやだわ。」スナックのママ。

「えーっ。」パパ。

「なんでこんなところに。」パパ。

「そこ、主人の経営しているお店なんですのよ。」スナックのママ。

もしかして。

パパの行きつけのお店のママだった。

スナック「王様と私」。

「私からもお願いします。ま、よくあっちゃ困るけど。」ママ。

「悪い人じゃないんですのよ。」ママ。

「そうですか。じゃ、河豚に免じて。」お取引先。

「てかなんで知って・・・。」お取引先。

はっとするママ。

夜のバイトは禁じられていた。もちろん。^^;

「ありがとうございます。」パパ。

というわけでね、春菜。

なんとかなった。^^

河豚っていいね。

帰りは遅くなるから。

パパ。

「よかったよかった。」なにもしらない春菜ちゃん。

「家が傾くとこだったよ。」春菜ちゃん。

てか。

こんなことにならないように。

お仕事は気を引き締めてやらないと困るのだ。

パパ、なんとか助かるの巻。

大人って、辛いのね。

episode28

「春菜ぁー。」おにいちゃん。
「はーい。」春菜ちゃん。
「川見たくない?」おにいちゃん。

ふたりはリバーピープルだった。
幼い頃、川の近くで育ったのだった。

遠足は決まって河川敷。
サイクリングするのも川沿いの土手。

「春菜、あの段ボール取ってきてー。」おにいちゃん。
「はーい。^^」春菜ちゃん。
「なにするの?」春菜ちゃん。
「スキー。」おにいちゃん。
「土手の上でこれ敷いて、ここ持つでしょ。」おにいちゃん。
「うしろから押すのだ。」おにいちゃん。

それはそりだよ、おにいちゃん。

「とんっ。」春菜ちゃん。
「いえーい。」おにいちゃん。

だんだん加速して、おにいちゃんは土手の下でこけた。

「大丈夫ー?」春菜ちゃん。
「いえーい。あいたた。^^;」おにいちゃん。
「春菜もやるー。」春菜ちゃん。
「押して―。」春菜ちゃん。

「えいっ。」おにいちゃん。
「きゃー。」春菜ちゃん。

タンポポが加速度的に近づいては遠ざかる。
わずか5メートルが、幼いふたりにはかなりの距離に思えた。

段ボールが摩擦係数を抑えてくれるから。
土手の草の上で、するする滑ってくれるのだ。
途中で手を離してはならない。
顔面からぼてっといっちゃうからだ。
最後に後ろ向きにひっくり返るくらいでちょうどいい。^^

「川見ながら、ぼーっとしたい。」おにいちゃん。
「いいね。^^ でも。」春菜ちゃん。
「この辺、ないよね。」ふたり。

リバーピープルには、流れが必要である。
なーんにも考えないで、川の流れを見ていたくなる。

「ねー何考えてるんですかー?」かもめちゃん。
「ん? んーん。」おにいちゃん。
「春菜はねー。」春菜ちゃん。
「ん?」おにいちゃんとかもめちゃん。
「焼鳥。」春菜ちゃん。
「んーんってなんだ。」春菜ちゃん。
「なんにもってことだよ。」おにいちゃん。
「てか何にもないとこにくると。」おにいちゃん。
「うん。」ふたり。
「いーよね。」おにいちゃん。
「?」ふたり。
「ぼーっとできて。」おにいちゃん。
「そうねぇ。」春菜ちゃん。

あれ。
かもめちゃんはいつ日本に帰ってきたんだっけ?^^;
焦る作者。w

「パパとミラノに行って。」かもめちゃん。
「2年いるはずがそのまま海外旅行で終わりました。」かもめちゃん。
「覚えといてくださいよ。」かもめちゃん。

「でね、イタリアのパスタと日本のパスタの違いは。」かもめちゃん。
「うんうん。」ふたり。
「海鮮とトマトの勢い!」かもめちゃん。
「あと、熱加減。」かもめちゃん。
「これをいかに再現するかですよ。ふふふ。」かもめちゃん。
「ふふふ?」ふたり。
「ちびっと自信あるんです。」かもめちゃん。

かもめちゃんは、弟を実験材料にして、おうちでパスタの研究にいそしんでいた。
スーパーには行かない。
魚屋と八百屋。

「どうせ切っちゃうんだから。」かもめちゃん。

見映えのいい、数日経ったお野菜よりも、形は悪かろうが新鮮なものを使うことにしていた。
そして、朝、港から来たばかりの魚介類。

「じゃーん。」かもめちゃん。

こんなことをさっきから考えていた。^^

「よかったら、これからうちに来ませんか。」かもめちゃん。

誘いたいんだけど、何かにとまどう。
どうしたかもめ。w

「えとさー。」春菜ちゃん。
「何?」おにいちゃん。
「なんだっけ。」春菜ちゃん。
「忘れた。」春菜ちゃん。
「ぼー。」三人。

軽い陶酔感を得た三人が向かったのは、駅前のバーだった。
五時過ぎだから、まだ明るい。

「いらっしゃい。」マスター。
「3人です。」かもめちゃん。
「カウンターでよろしいでしょうか。」マスター。
「はい。^^」三人。

からんからん。

「昔、私、好きな人がいて。」かもめちゃん。
「そして、交通事故でなくして。」かもめちゃん。
「ようやくふっきれたところなんです。」かもめちゃん。

どうしたかもめ。

「で。今日からドライマティーニ飲むのやめようって。」かもめちゃん。
「そう決めました。」かもめちゃん。

「じゃ、何にする?」いつものマスター。

「うーん。」かもめちゃん。
「あれと同じで。」かもめちゃん。

「おにいちゃん?」春菜ちゃん。
「ん?」おにいちゃん。
「何飲んでるの?」春菜ちゃん。
「これはー。」おにいちゃん。
「スクリュードライバー。」おにいちゃん。

言い伝えによれば。

スクリュードライバーとは。
ブルーカラーの整備工とか工場で働いてるおじさんとかが。
帰りに一杯やってくときによく飲まれてたお酒なのだ。

グレープフルーツの香りがする、ウォッカベースのお酒である。
しゅわーっとしてて。

おじさんちっくな味はしない。^^

ドライバーでくるくるって。
スクリューさせて飲むイメージね。

男の子にも女の子にも人気である。

ピスタチオをかじる春菜ちゃんとおにいちゃん。

ぽりっ。ぽりっ。ぽりっ。

「ちょっとー。」春菜ちゃん。
「ん?」おにいちゃん。
「かじる音。ハモんないでよ。」春菜ちゃん。
「だって高速じゃ噛めないし。」おにいちゃん。
「ぶー。」春菜ちゃん。
「裏拍子取る?」おにいちゃん。

街並みが夕景に変わる頃。
商店街の上には、いちばん星が輝いていた。

かもめ。第2章。

完。

episode x-1

「あれー。動かないよ。」春菜ちゃん。
「どした? 春菜。」かもめちゃん。
「カメラが動かなーい。」春菜ちゃん。
「ね。レンズが出てこないの。」春菜ちゃん。

というわけで。
横浜駅の相鉄線の出口で待ち合わせる。
夕方。
二人は横浜駅西口のカメラ屋さんの前にいた。

「ぷるるるる。」おにいちゃん。
「春菜ー? カメラ壊れてない?」おにいちゃん。
「ぎくうぅぅ。なんでわかるのだ。^^;」春菜ちゃん。
「新しいの買うなら、最低3件は回ること。」おにいちゃん。
「3件? お店のこと?」春菜ちゃん。
「うんうん。」おにいちゃん。
「交渉上手になるのだ。」春菜ちゃん。
「売値っていうのはね。」おにいちゃん。
「まだまだサービスできますよ。要相談ね!ってことなのよ。」おにいちゃん。
「間違っても、店頭表示価格で買ってはならない。^^」おにいちゃん。
「はーい。わかった。」春菜ちゃん。

電卓のおにいさんがやってきた。

「あのー。これのいいとこ教えてください。」春菜ちゃん。
「こちらの商品は、光学ズームになっております。」おにいさん。
「光学ズームだと何がいいんですか。」かもめちゃん。
「ピクセルが大きくなって画像が粗くなったりしないんです。」おにいさん。
「ほほぅ。」春菜ちゃん。
「シャッタースピードが速いやつってありますか。」春菜ちゃん。
「こちらへ。」おにいさん。

デジタル一眼レフコーナーに案内された。

「こちらに、ずらり。1/4000秒のシャッタースピードのものもございます。」
「すごーい。」春菜ちゃん。
「ニコンのDなんちゃらだー。」春菜ちゃん。
「しってるの?」かもめちゃん。
「だって、天文マニアなんだもん。」春菜ちゃん。
「?」かもめちゃん。
「天文ガイドって本に、かならず広告が載ってるの。」春菜ちゃん。
「てかそれ、レンズついてなくない?」かもめちゃん。
「レンズは別売りになっております。」おにいさん。
「えええええ。だってこれ5万くらいするよ?」春菜ちゃん。
「こちらは、ボディーのみの販売となっておりまして。レンズはこちらです。」おにいさん。

どん。

そのとき、おにいさんは背中に嫌な感じを受けた。

「はっ。」でかい男。
「はーるなさーん。」青木くん。
「ぎくうぅぅ。」春菜ちゃん。
「カメラですかー?」青木くん。
「なんでいるのー? てか、あー! はっぴ着てる!」春菜ちゃん。
「これがいいんだけど。」春菜ちゃん。
「レンズ抜きで5万って。」春菜ちゃん。
「暴利だー!」春菜ちゃん。
「しーっ。とんでもないこと言わないの!」かもめちゃん。
「レンズ込みで7万弱のやつってないですか。」春菜ちゃん。

電卓を操るおにいさん。

「えー。これとこれで。」おにいさん。

かたかたかたかた。

「69800。」

「わーい!」春菜ちゃん。
「ディキシ!」青木くん。
「いててて。お前、バイトだろうが!」おにいさん。
「交渉になってないですよ、春菜さん。」青木くん。
「お前、店の者だろーが!」おにいさん。
「これと、これとこれで。あとレンズフィルターに三脚。」青木くん。

かたかたかたかた。

「64500。」
「わーい!」春菜ちゃん。
「これでいかがでしょう。」青木くん。
「じゃ、それにす・・・。」春菜ちゃん。
「待って。」経営学部のかもめちゃん。
「これって、消費税抜き? 込み?」かもめちゃん。
「抜きですが。」青木くん。
「8%はでかいよね。」かもめちゃん。
「えー。」おにいさん。
「それでは、63000。」おにいさん。
「消費税8%込みで。」おにいさん。
「68040。」おにいさん。
「どうする?」かもめちゃん。

早く欲しくてたまらない春菜ちゃん。

「これー!」春菜ちゃん。
「うんうん。これはいいの。お値段のほう。」かもめちゃん。
「買うー。」春菜ちゃん。
「はっ。」青木くん。
「こちらにも似たような商品があるんですが。」青木くん。
「こちらだと、いくらでしたっけ?」青木くん。

かたかたかたかた。

「62170。」おにいさん。
「もう一声!」かもめちゃん。
「端数切りましょうよ。」青木くん。
「じゃ、59980。」おにいさん。
「おー!」青木くん。
「あたしこれ買う。」かもめちゃん。

ということで。

ご成約? のはずが。

「青木くん? カメラ持ってる?」かもめちゃん。
「僕はまだですが。」青木くん。
「買っちゃおうよ。この際。」かもめちゃん。

ぽやーん。

「余計なこと言わないでー!」春菜ちゃん。
「被写体にされたら大変だよ。」春菜ちゃん。
「んじゃ、僕はこれとこれとこれで。」青木くん。

かたかたかたかた。

「62500。」青木くん。
「ディキシ!」おにいさん。「自分でやるなっつの。」
「だいたいお前はバイトなんだから、販売しちゃいけないの!」
「じゃこれで。62500。」青木くん。
「67500。」おにいさん。
「63000。」青木くん。
「64000。」おにいさん。
「間取って、63500で。」青木くん。

ご成約。^^

レジの前で、販売責任者のおじさんを探すかもめちゃん。

「あのー。」かもめちゃん。
「はい? 何でございますか。」おじさん。
「3台セットだったら。」かもめちゃん。
「これいくらまけてもらえますか?」かもめちゃん。

かたかたかたかた。

「180000。」これでいかがでしょう。
「わーい。^^」3人。

ビブレ前で構図を決める春菜ちゃん。

いい絵が撮れるかな?

カメラをGETした春菜ちゃんは。
天体写真を撮るのを楽しみにしていた。

episode x-2

それはとある日曜日のこと。
パパがお部屋をお掃除していると。

ぱたん。

「なんだこれ。カラオケ読本?」パパ。
「上手くなるのか。w」パパ。

熟読するパパ。

①情景と雰囲気を思い描きながら。
②些細な感情を歌にのせること。

って書いてある。

③そのためには、歌詞の意味を知ることが大切です。
④とくに、街の雰囲気を知っているだけで。
⑤歌は格段に上手になります。

「σ◎◎¬ ホホゥ!!」パパ。

☆コツ☆
①鼻と口から同時に息を吐きながら歌うこと。
②そうすれば、のどに必要以上に無理な力がかかりません。
③腹式呼吸を忘れずに。
④ファルセットを活用しましょう。

「おおおおお。知らなかった。」パパ。
「ところで、なんでこれ冊子なの?」パパ。

おにいちゃんが作っておいたリーフレットだった。

春菜ちゃんも歌が上手である。
パパも、昔はフォークでならした。
ママはといえば。

「おーい、ママ。」パパ。
「はーい。」ママ。
「カラオケ行かない? というわけで。運転手はキミだ!」
「まだ何も言ってなーい。^^」ママ。
「でも行く行く!」ママ。
「なんでパパが運転しないの?」ママ。
「だって飲むもん。」パパ。
「ボーナスあるし。」パパ。
「そーね。^^ 行くぞー☆」ママ。
「ねぇー?」ママ。
「しーっ。」パパ。
「(・・。)ん?」ママ。
「今日はデートということで。」パパ。
「わーい。^^」ママ。

着いてみた。

「ずいぶん洒落たとこ知ってるんだね。」パパ。
「ぎくっ。女子会で使ってるのだ。」ママ。
「冊子がないよ?」パパ。
「もしかして、カラオケの本? (・ω・。)キョロキョロ(。・ω・)」ママ。
「こちらになります。」店員のおにいさん。
「+.(ノ。・ω・)ノ*.オオォォ☆゚・:*☆ 最近は全部digitalなんだね。」パパ。

ぴぴぴぴー☆

♪泣かしたこともある 冷たくしてもなお♪
♪寄り添う気持ちがあればいいのさ♪

眉間に皺を寄せるパパ。

めっちゃ上手い。^^;

♪俺にしてみりゃこれで最後のLady♪
♪絵理ー♪ ♪My Love, so sweet♪

絵里はママの名前だった。プロポーズの日にママを泣かせた歌だった。

「でもね。プロポーズなんだよ。」昔のパパ。
「いいんじゃない? ここで聴かせてやるんだってところで力込めるんだよ。」パパのお友達。
「『結婚しようよ』か。」
「(ー’‘ー;) ウーン」パパ。
「なんか照れくさいよな。それに、これは昔ギャグで使ったんだよ。絵里ちゃんに。」パパ。
「ギャグで?」お友達。
「うん。『結婚しようよ。』って、吉田拓郎の歌だろう?」パパ。
「あのジャケットに。」パパ。
「うん?」お友達。
「結婚しようよ よしだたくろう」って書いてる。
「うん?」お友達。
「これは呼びかけなのか、って。w」パパ。
「よしだたくろうって独身だよな?」パパ。

いつの時代だ。^^;

「『結婚しようよ、よしだたくろう!』って?^^」絵里子ちゃん。
「あはははは。」絵里子ちゃん。

そんなとき、サザンオールスターズのいとしのエリーが流れていた。

「Σ( ̄ω ̄ノ)ノハッ!! これだよ、これ!」昔のパパ。
「ギター弾けるのか、お前。」お友達。
「アルペジオはまだ。」パパ。
「これアルペジオだよ。持ってるんだ。」お友達。
「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)うんうん ちびっとかじった程度だけど。」パパ。
「そこでものは相談なんだけど。」パパ。
「高いギター貸して。」パパ。

当時はカラオケなんてなかったのだ。
好きな女の子に告白するときは、生ギターを一本用意するほかはない。
ハーモニカとか。
シンガーソングライターが一世を風靡している時代だった。

「懐かしいなぁ。」パパ。

歌いながら目頭を熱くするパパ。
歌い終わった。

しーん。

ぱちぱちぱちぱち。^^(ママ。)
涙目になっている。

「パパ、パフェおごる。今の曲、ありがとう♪」ママ。
「ビー・・・。あ。パフェ。うん。ありがとう。^^」パパ。

パパの優しさだった。

「遅くなったけど。」パパ。
「(・・。)ん?」ママ。
「今日は、結婚記念日だから。」パパ。
「レストラン、予約してあるんだ。」パパ。

わー☆

おうちでひとりでカップ麺をすするおにいちゃん。
今日は少し遅くなるだろう。
「ちゃんと読んだかなー、あの冊子。」

なんたって今日は。

「結婚記念日だもんね。」

episode x-3

「おかしい。」おにいちゃん。

「どしたの?」春菜ちゃん。

「書いたはずのepisodeが4つもない。^^;」おにいちゃん。

「また飛んだのー!?^^;春菜ちゃん。

「また書けばよいのだ。」おにいちゃん。

「たしか青木くんが入院したような気がする。」おにいちゃん。

「僕もそんな気がします。」青木くん。

「前世のこと、覚えてるかな?」

青木くんの頭をぐりぐりしてみるおにいちゃん。

「いたたた、痛いですよ!」青木くん。

うずくまる青木くん。

「思い出して、ほら。^^」おにいちゃん。

「新しいの書いてくださいよー!」青木くん。

「そーねぇ。」おにいちゃん。

「それから、セーブもね。」春菜ちゃん。

ポチっ。^^

というわけで、ボーリング場に行ったあと、かもめちゃんを含めた4人は。

学食でランチを楽しんだのだった。

その帰り。

「春菜ー?」おにいちゃん。

「ん。」春菜ちゃん。

「ビリヤード行こうか。」おにいちゃん。

「わーい。行くー♪」春菜ちゃんとかもめちゃん。

「伝授するぞなもし。」おにいちゃん。

当時、移動はすべてバイクだったおにいちゃん。

アメリカンで、袖を肩までたくし上げて乗っていた。

湘南で失くしたサングラスをかけて。

友達を迎えに、最寄り駅まで走ったときのこと。

「あのさ。なんで肩まで袖上げてるわけ?」お友達。

「敵を威嚇するため。」おにいちゃん。

「嘘だけど。^^;」おにいちゃん。

こんな会話をしていたのを思い出したよ。

今回は、市営低下鉄に乗って、三ツ沢上町(かみちょう)から新横浜に着いた。

「私、はじめてなんです。」かもめちゃん。

「ラッキービリヤードもありなのだ。^^」おにいちゃん。

「どうしてあっちでやらなかったんですか?」青木くん。

「ビリヤードやってたじゃないですか。うちら。」青木くん。

「こっちのがラシャが綺麗なんだよ。書き直しなの。いーの。」おにいちゃん。

「そっか。てか。えー! いたの?」春菜ちゃん。

「お兄さんの後ろにいました。」青木くん。

「気が付くよ、普通。」おにいちゃん。

「ダメ。その人はおにいちゃん担当で。」春菜ちゃん。

「そっか。んじゃ、いくぞー☆」おにいちゃん。

ぱちーん☆

白い手玉めがけて、水平に構えたキューが流れた。

チョークをつけたキュー先は、青くなっている。

その向こうに、煙が吹き出す。

煙?^^;

おにいちゃんは煙草を吸っていた。

ぽこーん。

ぽこーん。

ぽこーん。

「あの。ひょっとして、上手じゃないですか?^^;」青木くん。

「1マッチ、500円だから。」おにいちゃん。

「よしこーい。^^;」青木くん。

「ありゃ?」おにいちゃん。

あさっての方角に飛ぶ手玉。

「4番、こんなとこにいたんだ。^^;」おにいちゃん。

「ダメじゃないですか。紫ですよ、紫。」青木くん。

手玉をリプレースする青木くん。

「よっ。」④番in。

「よっ。」⑤番in。

「よっ。」⑥番in。

「むむっ。やるなおぬし。^^;」おにいちゃん。

ぴきっ。

「あー。^^;」春菜ちゃんとかもめちゃん。

ファールだった。

「しかし難しいとこ持ってくるよね、キミ。」おにいちゃん。

「いけー。」春菜ちゃん。

「ダメだ。当たっちゃうよ。狙っていい?」

⑦番を見ながら言うおにいちゃん。

手玉の右下を衝く。

手玉はわずかにカーブを描きながら、⑦番の右端に当たる。

⑦番は、サイドポケットを大きくはずれる。

「あちゃー。^^; ダメだった。」おにいちゃん。

「あれ? あれあれあれ!?」青木くん。

右上のポケットのそばに⑨番がある。

するすると吸い込まれてゆく手玉。

⑨番をほんのわずかにかすめて。

手玉がポケットインした。

「もしやこれは。」おにいちゃん。

「絶好のピンチ。^^;」おにいちゃん。

すぽっ。⑦番in。

すぽっ。⑧番in。

左手で、器用にキューをさばく青木くん。

「ラストいただきまーす。^^」青木くん。

すぽっ。⑨番in。

「やるじゃん。すごいすごい。^^」ほめちぎるおにいちゃん。

「てかー。」春菜ちゃん。

「ちゃんとやれー!」春菜ちゃん。

「今負けたから代わる?」おにいちゃん。

「うん。500円だよね?」春菜ちゃん。

どきどきどきどき。

青木くんの手がせわしない。w

冷静な春菜ちゃん。

「おーい。そろそろ寝るんだぞー。」パパ。

「やだー! 勝つまでやるんだもん。」幼き日の春菜ちゃん。

「ここは、ここ狙ったら、こう行くの。」おにいちゃん。

「ここ?」春菜ちゃん。

「そうそう。」おにいちゃん。

「でね。半分かぶせてバックスピンかけると。」おにいちゃん。

「手玉がほぼ90°の角度で跳ね返るのだ。」おにいちゃん。

「えいっ☆」春菜ちゃん。

きゅるきゅるきゅるきゅる・・・。かこん。すぽっ。

「わーい。^^ 入ったー! 私の勝ちー☆」春菜ちゃん。

そんなことを思い出しながら、春菜はむくれていた。

「こんなのに手加減するなよな!(心の声)」春菜ちゃん。

ブレイクショットで⑥番を沈める春菜ちゃん。

すぽっ。すぽっ。すぽっ。すぽっ。すぽっ。すぽっ。すぽっ。

「え。」青木くん。

「これ、ここ。」キューで近いポケットを指さす春菜ちゃん。

キューが前後に揺れている。

(集中、集中。)

こん。

するするするする。

えええええ。

すぽっ。^^

見事なスキルショットだった。

「すごーい!^^」かもめちゃん。

「そんけー!」かもめちゃん。

「はい500円。」要求する春菜ちゃん。

「なんかいいもん見たような気がする。」隣のテーブルのふたり。

「すっげー。」お隣さん。

「ふふん。^^」春菜ちゃん。

「なんか。」おにいちゃん。

「レクチャー、いらなそうだね。^^ ビール買って来る。」おにいちゃん。

「何がいい?」おにいちゃん。

「バドワイザー!」春菜ちゃん。

「一緒でー。^^」甘えるかもめちゃん。

固まってる青木くん。w

ゲームは、春菜の全勝だった。^^;

青木くんはぎこちなく微笑っていた。

ペンダントライトがラシャに光を落としていた。

ふたつのチョークが、煙の向こうで嬉しそうに並んでいた。

新横浜の夜が更けてゆく。

おにいちゃんはとても満足気だった。

つづく。

episode x-4

春菜がプロのスチュワーデスになる前に。

もうひとつのアルバイト経験があった。

ひとつめが学生時代の中華。

もうひとつめはホテルのクラークだった。

「袖はね。ボタン留めないで、そろえてからカフスなんだよ。」:おにいちゃん。

「好きなの選んでオリジナルか、ホテル指定のやつにしなさい。」:おにいちゃん。

「わーい。^^」:春菜ちゃん。

「いいの?」:春菜ちゃん。

「は?」:おにいちゃん。

「『いいの?』ってなんだいいのって?」:おにいちゃん。

「プレゼントしてくれるんでしょ?^^」:春菜ちゃん。

「いやそれはウルトラ5つの誓いに反するから。」:おにいちゃん。

「勝負はすべて自力でいくべし。」:おにいちゃん。

「ふえーん。」:春菜ちゃん。

素敵なラピス&ゴールドがあった。

「これ。」:春菜ちゃん。

クリックが成立した。

かくして、春菜。

某一流ホテルのクラーク(受付係)になるの巻。

初日終了。

思ったよりもかなり優秀な春菜。

立居振舞はパーフェクト。

いいぞいつかは憧れのスッチーだもんね。

で。

早速危険な先輩襲来。w

よくある話。

新人に目がないタイプ。

「ねー、春菜ちゃん?」:先輩。

(ちゃん?):春菜。

(プチッ。):春菜。

「今日はとてもよくできたね。お疲れ様。」:先輩。

「よかったらこれからお酒でも飲みに行かない?」「おごるよ。」:先輩。

オトナな先輩の前でちびっと緊張する春菜。

「えー。」:春菜。

「でも、私。」:春菜。

「酔っぱらっちゃったら、高圧的になるから。」:春菜。

血筋らしい。

「いきなり先輩にそそうはなしの方向で行きたいので、せっかくですけど遠慮させてください。」:春菜。

「そうなの?」:先輩。

「高圧的になっちゃうんだ。あはははは。」:先輩。

「叱り飛ばすとか?」:先輩。

「あまり覚えてないんです。」:春菜。

酔うと記憶を飛ばす春菜の回を思い出してくれたまえ。

「うにゅ。トイレー!」:春菜。

「超嬉しいんだよ。春菜はね、春菜はねー!」:春菜。

お酒の席でそそうだけはあってはならない。

んですが。

6月の新人研修の打ち上げのとき。

春菜は、その先輩に結構、好意を抱いていた。

スマートでちびっとだけダンディーで。

ハンサムで男らしい。

2ヶ月に及ぶ、大人のジャブ攻撃をまともに受けていたに等しい。

洗礼ともいう。

で。

春菜は、その新人研修の打ち上げの酒の席で。

おにいちゃんから指示された2杯を越えてしまうことになる。

今日は。

納得のいかないオトナの世界の理不尽に対する怒りだった。

「はっ春菜ちゃん。俺。」:同輩。

壁ドンを狙ってくるのがわかる。

「実は、入社したときから。」:同輩。

どんっ。

春菜の第三の眼がすでに開いている。

「うっ!?」:同輩。

左の肋骨に激しい痛みを感じる男。

「い、いつの間に!?」:同輩。

シャツに血が浮き出ている。

「あははははは。」:先輩。

つとめて冷静な春菜。

「こんな壁ドンじゃ。」:春菜。

「クラークは殺せないわよ!?」:春菜。

何を観て育ったかがとてもよくわかる。

「はい次。」:春菜。

「おおおおお。」:同輩。

苦悶の表情を浮かべる同輩。

「ねー春菜ちゃん。戻ってきて。」:先輩。

男連中の怒涛のラッシュが始まったといっていい。

「おーい春菜くん。座りたまえ。ね。これ美味しいんだよ?」:上司。

へろへろ。

になるのはヒヨコ。

春菜には、すでに努力に伴う根性が備わっていた。

これも血筋。

「わーい。美味しーい。^^」:春菜。

太もも辺りに何か違和感を覚えた春菜。

部長のタッチだった。

「うっ!?」:部長。

最終兵器彼女をインストールしている春菜。

部長の聴覚野に超音波が走る。

読者のみなさんには、やはり思い出してもらいたい。

「あたし酔うと、エスパーになるのら。」:いつぞやの春菜。

—–ピキーン—–

あんた、もうすぐ死ぬ気?(異次元春菜。)

—–ピキーン—–

すぐに楽にしたげるからね?(異次元春菜。)

—–ピキーン—–

いつでもいいよ。一瞬だから。(異次元春菜。)

マンガやん。^^;:おにいちゃん。

手足に痺れと震えを感じる部長。

がくがくぶるぶる。

(こっ、これは!?):部長。

(動けぬ。):部長。

「ねー。怖い人が来てる。」:指差してる春菜。

「きゃははははは。」:春菜。

どこにも何も見えない。

「わーい。^^ いいんですか?」:春菜。

戦慄を覚える上司。

「ねーせんぱーい?」:春菜。

「昔の奥さんがあそこに。」:春菜。

「えええええ。」:先輩。

先輩の唐揚げをこっそりGetする春菜。

新人研修の宴(うたげ)は、まだ始まったばかりだった。

つづく。

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